流れ星の君
日々は晴れ晴れ。わたしたちはただ、あなたの笑顔が見たい。
ーーどうか笑って。
今日は宝石龍達が天の川を見上げながら神様に歌を捧げる日だ。
色とりどりの宝石龍達は歌を歌ったり、楽器を奏でていた。
宝石龍達の髪が風に吹かれて靡く。
ここに夜空の星を眺めていた宝石龍がいた。
パールの意思の宝石龍、パールメリーだ。
左隣にはサファイアの意思の宝石龍、ファイサファイアがいた。
パールメリーの桃色の髪が風に吹かれて靡いていた。その瞳には星空が映っていた。
「七月七日」
パールメリーは天の川を指差しながら呟いた。
「運命の日」
またぽつりと呟いた。
瞳に星空を映しながら、パールメリーは回想した。
場所はウィル大聖堂。それはそこで聞いた話だった。
ーー七月七日、運命の日。その日は流星が降る。そして世界を救う本を見れる場所に行く扉が現れるだろう。
クリスタルの意思の宝石龍、クリスタルフォルテ教皇は言った。
ーー占いによるとそれは今年の可能性が高い。扉が現れたら誰がその場所に行くのか。そう、誰が世界を救うのか決めておこう。
クリスタルフォルテはカードを取り出した。
ーーここにみなを表したカードがある。誰が世界を救うのか今から占おう。
宝石龍、一体一体を表したカードが空中に浮かび上がる。
ーーうわ〜、ドキドキするなー!
ーー世界を救うのは一体誰かしら?
宝石龍達はざわめきはじめた。
ーー静粛に。
ブラックダイヤの意思の宝石龍、ダイヤエレジアが話すと、あたりは静かになった。
ーー誰かな?誰かな?
ーーしーっ、静かに。
だがまた話し声が聞こえはじめた。みんな、世界を救うのは誰なのか気になっているようだ。
ーー導きの手の神、リーヴル様。世界を救うのが誰なのかお教えください。
クリスタルフォルテは言った。
空中に浮かんだカードが混ざりはじめる。
様々な色に光り輝きながらカード達は動きを止めた。
ーー一体誰なんだ………?
誰かが呟いた。
その時、一枚の光り輝くカードがクリスタルフォルテの手に舞い落ちる。
ーー神様のカードだ。
「神様が世界を救ってくれるんだよな」
ファイサファイアはパールメリーを見ながら言った。パールメリーはハッとしながらファイサファイアを見た。
「もしかしたら今日神様が見れるかも!」
パールメリーは興奮しながら言った。
「うわぁ〜!ワクワクする!」
ファイサファイアは笑顔になった。
宝石龍達の暮らしている世界、ウィルワールド。
この世界を創ったのが導きの手の神、リーヴルだ。
この世界の誰もが一度はその目で見たいと思っている存在である。
「占いが当たるかなんてまだわからないりま〜」
いつの間にかパールメリーの足元にいたラリマーシレーナはパールメリー達に向かってそう言った。
「フォルテの占いは最近ハズレばっかりりま」
「でも今回は当たるかもしれないじゃないか」
パールメリーの後ろにいたスカーレットロアーはそう呟いた。
「みんな神様に逢いたがっている。私も例外ではない。一目でもそのお姿を見たいものだ」
スカーレットロアー、ガーネットの意思の宝石龍だ。
「どうしたラリマー、お前さては神様に怒られると思っているな?」
「そうりまよ。いつまで子供でいるんだって怒られそうで逢いたくないりま」
ラリマーシレーナは身震いした。
「ちょっと怖いりまね」
「いいじゃないか。お前は子供のままで。大人になりたい時になれば良い」
「大人になりたくないりま」
ラリマーシレーナは俯きながら言った。
「ずっと子供のままでいたいりま」
「いればいいだろう」
「あ、流れ星だよ!」
パールは嬉しそうに声を上げた。
「本当だ……願い事しないとな」
スカーレットロアーは呟いた。
「「神様、どうか世界を救ってください」」
いろんな宝石龍の声が重なった。
その時、複数の流れ星が一つの流れ星に向かって行き、ぶつかった。
「うわぁ、何?何?すごい………。ねえ、ファイ達見た?」
パールメリーは目をきらめかせて言った。
「複数の流れ星が集まったよな」
ファイサファイアは空を見つめながら言った。
「なんだ?やっぱり今日なのか?」
スカーレットロアーは手で顎を触りながら呟いた。
「緊張するりま………」
ラリマーシレーナは身震いした。
「流れ星………落ちる!?きゃあ!」
パールメリーは叫んだ。
流れ星がパールメリー達のいる方に向かって落ちてきたのだ。
光の筋が夜空に浮かんだ。
流れ星の跡が、天から架かった橋のように見えた。
やがて、その光の橋に人影が見えた。
「誰か歩いてくるぞ!」
誰かが叫んだ。
「神様ですか?!」
宝石龍達は一斉に話し始めた。
人影は光の橋を歩きながらパールメリー達の方へ向かって行った。
宝石龍達は声を上げながら、人影が歩いてくるのを見守った。
やがて人影は姿を現した。
ーー流れ星の降る七月七日、七夕の日。その日、宝石龍達の暮らす世界ウィルワールドに流れ星のように僕はやってきた。
それから僕は摩訶不思議な世界で暮らすことになる。その日から宝石龍達との日々が始まってしまったのだ。
ーー逢いたいよ、みんな。
誰にも聞こえることのなき声が星空に響いた。