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第9話:メレノラ・アクスター⑤

 後宮内に入ってからも、襲撃が途切れることはなかった。

 しかし俺は気配察知で暗殺者たちの居場所を把握しており、奇襲のつもりなんだろうがあっさりと返り討ちにしてしまう。

 廊下には暗殺者たちがずらりと倒れており、傍から見ると地獄のような光景だろう。

 とはいえ、これだけ暴れても執事や侍女が出てこないのを見ると、薬か何かで眠らされているのかもしれない。

 そしてこれもまた、俺にとっては好都合ってわけだ。


「メレノラの不都合が、俺にとっての好都合か。言い得て妙だな」


 そんなことを考えながら、俺はメレノラの後宮を奥へと進んで行く。

 俺が認識阻害を解除してから一部の気配が向かった方向だ。おそらくだが、そこにメレノラがいるに違いない。

 そして、護衛にも奥へ向かった奴らが精鋭であり、暗殺者をまとめている奴がいるはずだ。


「……ん? なんだ、お前たちがその精鋭ってことか?」


 廊下を抜けた先、やや広くなっている場所に出ると、そこには四人の暗殺者が待ち構えていた。

 先ほどから襲い掛かってきていたザコとは違い、なかなかに強そうな雰囲気を放っている。


「とはいえ、実力的にはゴールド級に近いダイヤ級って感じか?」


 騎士や魔導師の世界において、その強さを表す階級が存在している。

 下からブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤ、ランカー、ハイランカーと続き、最も高い階級がマスターとなっている。

 最初に暗殺を仕掛けてきた奴らがシルバーからゴールドくらいだとして、こいつらはそれよりかは強い部類に入るだろう。


「……とはいえ、ザコだな」


 俺が思わず本音を口にすると、四人の精鋭たちは足音もなく移動を開始し、俺の死角から攻撃を仕掛けてきた。

 そのどれもが急所を狙う一撃であり、鼻孔を刺激する臭いが武器から漂ってくる。

 毒でも塗られているんだろう。掠るだけでも致命傷になりかねない。

 しかし、毒を使わなければならないくらいの実力しか持ち合わせていないという証拠でもあり、俺は心底がっかりしてしまう。


「精鋭とはいえ、やはりこの程度か」


 死角からの攻撃も意に介さず、俺は回避しながら精鋭四人の動きを観察する。

 足音を消し、気配も最小限まで抑えることには成功しているが、如何せん漏れ出ている殺気が強烈過ぎる。

 冷静そうに見えて、実のところ俺の言葉に苛立ち、殺気を隠しきれていないようだ。

 その時点で暗殺者失格であり、精鋭という言葉を撤回せざるを得ない。


「もう終わらせるとしようか」


 俺は精鋭四人よりもさらに速く動き、手刀を首筋に打ち込んで気絶させていく。

 四人でも敵わなかったのだから、一人が欠ければあとはあっという間だ。

 ものの数秒で全員が気絶し、床に転がっていた。


「さて、残すは――」


 最後に俺は転がっていた毒が塗られたナイフを拾うと、奥の廊下を挟むようにして立っている柱めがけて投げつける。

 切っ先が柱に突き刺さると、その後ろから一人の大柄な男性が姿を現した。


「お前がこいつらのボスだな?」

「やってくれたではないか、この青二才が」


 明らかに先ほどまでの奴らとは、漂っている雰囲気が違う。

 何人もの人間を殺してきただろう、狂気のオーラを纏っている。


「お前も大変だな。こいつら程度の奴らを精鋭にするしかなかったんだからな」


 肩を竦めながら挑発してみたが……反応はない。

 おそらくだが、自分以外は全員が駒のような扱いなんだろう。

 そういう奴ほど面倒くさい相手なんだと、アルフォンス様が言っていたっけ。


「こいつらを倒したからと、調子に乗られては困るな。何せここには、俺がいるのだからな!」


 柱に突き刺さったナイフを抜くと、ノーモーションで投擲してきた。

 あの一瞬で瞬きをしていたなら、間違いなくこめかみに突き刺さっていただろう。


「へえ! あんた、なかなかやるじゃないか!」


 俺は流気術を用いて紙一重で回避すると、思わず笑みを浮かべてしまう。

 どうやらこいつ、ダイヤ級を超えた実力者、ランカー級かもしれない!


「その余裕、今に後悔することになるぞ!」


 すると今度は懐から大量のナイフを取り出して指に挟み、それを一斉に投擲する。

 軌道が変わり、四方八方からナイフが襲い掛かってくる。


「はあっ!」


 しかしあくまで投擲されたナイフだ。重さもなく、吹き飛ばすのは容易でしかない。

 俺は流気術で強化した脚力で床を蹴りつけると、その衝撃波で全てのナイフを吹き飛ばす。


「なかなかやるな。実力はランカーよりのダイヤか?」


 ……ん? こいつ、なんて言った? ランカーよりのダイヤだって?


「まあ、そんなことはどうでもいい。どうせ貴様は俺に殺されるのだからな!」


 なんだか勘違いしているみたいだが、この際どうでもいいか。

 ボスはそう叫んだあと、煙玉を使い視界を奪いに来た。

 とはいえ、この程度の視界不良は俺にとって意味を成さない。

 そしてボスもそのことを理解しているはず。

 いったい何を仕掛けてくる?


「……何も、ない?」


 いやいや、まさかの何もないわけないだろ? そんなことを考えながら待っていると、段々と視界が晴れていく。


「……嘘だろ? 本当に何もないのかよ!」


 少々拍子抜けだったが、ボスは追って来いと言わんばかりに気配を消さず、奥の方へ移動している。

 そして、ある程度進んだ先で立ち止まり、俺のことを待ち構えているようだ。


「……なるほど。そこがお前のテリトリーってわけだな?」


 そもそもここはメレノラの後宮であり、敵の本拠地でもある。

 俺が有利に立ち回れる場所の方が少なく、こうして相手のテリトリーに誘い込まれなければならない場面の方が多いだろう。

 ランカー級の相手であり、さらにはそのテリトリーでの戦いか。


「……いいね。勘違いされたままってのも嫌だし、ボスにも分からせてやらないとな」


 少しだけ本気を出してやってもいいかもしれない。

 分からせてやるには、それくらいしてやらないとな。

 そんなことを考えながら、俺は奥へと歩き出した。

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