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第6話:メレノラ・アクスター②

 ◇◆◇◆


「……来たか」


 メレノラの命を受けて潜んでいた暗殺者は、レインの部屋の窓を見ることができる木の上から様子を窺っていた。

 部屋にレインが戻ってくるとニヤリと笑いながら呟き、魔法を放つ準備に入る。

 レインが窓際に来たら最後、一撃で殺すつもりでいた。


(……来る!)


 そう思った暗殺者だったが、レインは微かに姿を見せただけで、踵を返して窓から離れてしまう。


(くそっ! ……いや、落ち着け。まだまだチャンスはあるんだ。焦る必要はどこにもない)


 自分を落ち着かせるように心の中で呟くと、小さく息を吐きながら再び窓の方に意識を集中させる。

 次こそは仕留めてみせると意気込み、その時を待つ。


(……来た!)


 レインは右手に椅子を窓際に運んでくると、本を片手にその椅子に腰掛けた。

 暗殺者からすれば絶好のチャンスであり、狙いを定める余裕すら生まれていた。


(これならば容易く仕留めることができる!)


 思わず笑みがこぼれてしまう暗殺者。

 狙いを定め、窓際でのんきに読書を楽しんでいるレイン目掛けて魔法を放とうとした――


 ◆◇◆◇


「――お前、何をしているんだ?」


 魔法で作り上げた偽物の俺を狙って攻撃しようとしていた暗殺者に、俺は背後から声を掛けてみた。


「なっ!?」

「なんだよ。たったそれだけの反応しかできないのか?」


 つまらない反応だっただけに、俺は苦笑しながら肩をすくめる。


「き、貴様! いつの間に!?」

「お前が偽物の俺をニヤニヤしながら見ている間にだよ」

「に、偽物だと?」


 暗殺者は悔しそうに歯噛みしているが、俺からすればそんなことはどうでもいい。

 何せこいつらは、今の俺の実力を見極めるためだけの相手なんだからな。


「来いよ、三流共。俺が相手をしてやる」

「ふざけやがって! 隠れるのは必要ない! 正面から叩き潰すぞ!」


 暗殺者がそう声を上げると、さらに奥の方から三人の暗殺者が姿を現した。


「四人か……はぁ。俺も舐められたものだな」

「やれ!」

「「「御意!」」」


 リーダー格の暗殺者が声を上げると、三人の暗殺者が左右と正面から突っ込んできた。

 だが、それだけだ。こいつらからは脅威というものを感じない。


「それじゃあ、訓練の成果でも確認しますか!」


 俺は体内に気の流れを作り出し、一時的に身体能力を向上させていく。

 まずはバカ正直に突っ込んできた、正面の暗殺者だ。


「流気術――流気拳(りゅうきけん)


 気の流れは俺の中にあるだけではない。

 これは相手が気を使えているというわけではなく、自然の中にも気の流れが存在しており、その流れがものの動きによって対流する。

 その気の流れを感じ取ることができれば、相手がどのように動くのか、どうしようとしているのか、それを先読みすることができる。

 俺は正面の暗殺者の動きを先読みし、あとは突っ込んでくる場所に拳を振り抜くだけだ。


「ごばっ!?」


 俺の拳が顔面にめり込み、突っ込んできた暗殺者は一撃で気絶してしまう。

 それでもなお数の優位を活かそうと飛び掛かってくるのが、本物の暗殺者だろう。

 しかし左右から迫っていた暗殺者は、一人がやられたことで足踏みし、せっかくのチャンスを棒に振ってしまった。

 その隙を見逃すほど、俺はお人よしではない。


「二人目」

「ぐえっ!?」


 左足で地面を蹴り、一足飛びで右の暗殺者の懐へ潜り込むと、みぞおちに右拳を深々と突き刺した。

 変な声が聞こえてきたが、そんなことはどうでもいい。

 今度はくの字に体が折れ曲がった暗殺者を蹴りつけて、左の暗殺者めがけて飛び掛かる。


「う、うおおおおっ!」


 声を上げている時点で、実力が窺い知れるな。それでも暗殺者なのか?

 そんなことを考えながら、俺は短剣を振り抜いたその右手を簡単に掴み、腕を捻り上げる。


 ――ゴキッ!


「ぐがああああ――」

「うるさい」


 骨を折られた痛みに悲鳴を上げた暗殺者の意識を刈り取り、そのまま地面に放り投げる。


「……き、貴様、何者だ? 本当に、目覚めたばかりの、人間なのか?」

「誰がどう見てもそうだろう。お前には俺が、どう映っているんだ?」


 おかしなことを言う暗殺者がいたものだ。

 俺が殺気を迸らせながら一歩近づくと、リーダー格の暗殺者が一歩後退する。


「なんだ、逃げるのか?」

「くっ!」

「言っておくが、俺はお前たちの依頼人が誰だか知っているぞ?」


 こいつらがやってきた方向の気の流れを感じ取り、それがメレノラが暮らす後宮から流れていたことは把握済みだ。

 証拠を出せと言われればどうしようもないが、今のこいつは俺という存在に疑心暗鬼になっているだろう。

 となれば、冷静な判断など下せるはずがない。


「逃げたところで、依頼を達成できなかったお前のことを許すと思っているのか? それとも、依頼人からも逃げてみるか? いいや、無理だな。別のお前より強い暗殺者を差し向けられるだろうな」

「……くそったれがああああああああっ!」


 予想通りだ。冷静な判断が下せなかったリーダー格の暗殺者は、一か八かで炎の魔法を顕現させた。

 これが最も愚かで、最悪な選択だとも知らずにな。


「流気術――気爆掌(きばくしょう)


 相手の体内で最も気が留まっているところへ掌底を放つ技、気爆掌。

 気の流れを狂わせ、爆発的に動かすことで、体内を破壊することができる流気術の一つだ。

 俺は魔法が放たれる前に加速し、リーダー格の暗殺者めがけて気爆掌を放った。


「…………がはっ!?」


 気爆掌を受けたリーダー格の暗殺者は、大量に吐血すると、そのまま絶命してしまった。


「なんだ、意外と呆気ないものだな」


 そんなことを呟きながら、俺は今後のためにと使えそうなものを物色し、それを懐へ入れていく。


「あとは、最後の仕上げか」


 そう口にしたレインは、静かに残りの暗殺者たちの命も奪うと、何事もなかったかのように部屋へと戻っていった。

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