第20話:冒険者ギルド④
ギルマスの部屋を出て一階に下りると、すぐに多くの冒険者から視線を集めてしまう。
まあ、それも仕方がない。あれだけの騒動を起こしてしまったんだからな。
これからは少しだけ、おとなしくさせてもらいたいところだ。
「あの、ちょっといいですか?」
「あ、はい! なんでしょうか、レイン様!」
俺は登録を担当してくれた受付嬢に声を掛けた。
「Fランクに見合う依頼ってなると、どういうものがあるのか伺いたいんですが」
「かしこまりました! 少々お待ちください!」
冒険者登録窓口担当に聞くのはダメかと思ったが、受付嬢は嫌な顔一つせずに対応してくれた。
「そうですねぇ……レイン様の実力を加味すると、討伐系のこちらがいいかと思います」
受付嬢が提示してくれた依頼は、東にある森の魔獣狩りだった。
「魔獣の討伐を証明する討伐部位を五匹以上お持ちいただければ、依頼完了となります」
「生息している魔獣の種類とかも聞けたりしますか?」
「はい! 森の手前にはゴブリン、フォレストウルフ、ホーンラビットなどが生息しておりまして、時折それらの上位種が現れることもあります。もしも上位種を発見した場合、通常であれば退くことをオススメしております」
「討伐ではなく、退くんですか?」
予想外のアドバイスに、俺は首を傾げてしまう。
「上位種は往々にして強い個体となっておりまして、新人冒険者には荷が重いというのが、冒険者ギルドの総意になっています。ですが……」
そこで一度言葉を切った受付嬢は、俺の顔を見ながらニコリと笑う。
「レイン様であれば、問題はないかなと思っております」
あぁ、だから「通常であれば」という言葉を使っていたのか。
「とはいえ、無理は禁物です。実力者こそ、危険に足を踏み入れ過ぎて、早く命を落とすことも多いですから」
「そうですね。肝に銘じておきます」
受付嬢の言う通り、無理は禁物だ。何が起きるか分からないからな。
「それじゃあ、この依頼を受けようと思います。ありがとうございました。えぇっと……」
「あ! すみません、名乗っていませんでしたね! 私はシャーリーと申します!」
「ありがとうございました、シャーリーさん」
「仕事ですから! それでは、受付処理をいたしますので少々お待ちください!」
それからシャーリーさんはすぐに受付をしてくれ、俺は依頼書を受け取ると、その足で東の森へと向かった。
東の森は比較的穏やかな森だと、昔に母さんから聞いたことがある。
貴族の子弟が腕試しに足を運ぶこともあるらしく、俺も一度だけ母さんと一緒に訪れたことがあったっけ。
あの時ははぐれゴブリンを一匹倒すのがやっとだったけど、今回はどれだけ倒すことができるか、楽しみでならない。
「依頼は五匹以上だ。ってことは、どれだけ狩っても問題はないってことだよな?」
目を覚ましてから初めての魔獣との戦闘だ。
こいつの試し斬りもしてみたいし、早いところ魔獣を見つけることにしますか。
「近場にはいなさそうだな。となると、少し森の中に入る必要があるか」
俺の気配察知にも引っ掛からないということで、俺は一つの魔法を使うことにした。
「捜索」
自らの魔力を薄く広げていき、そこに引っ掛かった魔獣を見つけることができる魔法、捜索。
今回は魔獣を見つけるために使ったが、魔獣だけではなく人間を見つけることも可能となる。
遭難者や行方不明者の捜索にも役立つ、結構便利な魔法だ。
俺はこれをフェルミナ様に教えてもらい、自分の気配察知が届く以上の距離まで使えるようになっていた。
「……いた。だけど、教えてもらった魔獣よりも、大きい気がするぞ?」
教えてもらった魔獣の中ではフォレストウルフが一番大きいはずだが、それよりも一回り……いや、二回り以上大きい気がする。
「もしかして、これがシャーリーさんの言っていた上位種か?」
これは少し……いや、かなり楽しみかもしれない!
今まではそこまで強い相手に恵まれなかったからな。魔獣の上位種、どれだけ強いのだろうか!
「……いや、過度な期待はしないでおこう。どっちにしろ、ゴブリンかフォレストウルフかホーンラビットの上位種だ。よくてギルドで絡んできた奴らくらいに思っておこう」
さすがに失礼か? 魔獣に。
「どっちにしろ、討伐部位を五匹以上持っていかないといけないし、行ってみるか!」
俺は少しだけウキウキした気持ちで、森の奥へと進んで行く。
もしかすると、この上位種の影響で森の手前から魔獣が消えてしまっていたのかもしれない。
このままでは森の奥の魔獣が縄張りを広げようとするかもしれないし、気合いを入れて魔獣討伐に励むとするか。
そんなことを考えながら進んでいると、俺の気配察知にも引っ掛かる距離までやってきた。
「……おかしい。こいつ、全く動かないぞ?」
ある程度近づけば、魔獣も俺の存在に気づくと思っていた。
しかし魔獣が動く気配はなく、さらに言えば敵意すら感じない。
自然と俺の足取りは慎重なものとなり、先ほどまでの浮かれた気分は完全に消えてしまっていた。
「……なんだ、あいつは?」
そこで目にしたもの、それは――純白の美しい毛並みを持った白狼だった。
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