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第13話:ライオネル・アクスター①

「母さん。俺、陛下に謁見を申し出ようと思います」


 母さんに秘密を伝えてから一〇日が経ち、俺はそう口にした。


「……七英雄様の悲願達成のため、動くのね?」


 今は朝食の時間、食堂には俺たち以外に誰もいない。

 だからこそ俺は自分の考えを口にしていた。


「はい。一〇日が経ち、メレノラ様からも特に襲撃はありませんので、しばらくは安全かと思いまして」

「そうなのね……」


 とはいえ、俺が離れてから何かを仕掛けてくる可能性もゼロではない。

 念には念を入れるつもりだが、それをあの人が受け入れてくれるかは、聞いてみなければ分からない。


「……ねえ、レイン? あなたのことを、陛下にお伝えすることはできないかしら?」

「ダメです。そうなれば陛下は、俺を王位に着けようと画策するでしょう」


 継承権放棄を狙っている俺からすれば、それだけは避けなければならない。

 それに、陛下の動きが他の妃に知られれば、それこそ俺がいない間に母さんが狙われるかもしれないのだ。


「陛下に知られることだけは、絶対にダメです。いいですね、母さん?」

「……はぁ。分かったわ」


 ため息交じりの答えに、俺は心配になってしまう。

 とはいえ、母さんが俺の意に添わないことをするとも思えず、この話は終わらせることにした。


「謁見の申し出は私からでもよろしいでしょうか?」

「そうね。その方が陛下もお喜びになると思うわ」


 母さんはそう言うが……お喜びになるとは思えない。

 何せ陛下は俺が目を覚ましたと聞いても、今日に至るまで顔を合わせようとすらしていないのだから。


「……そうだといいですね」


 俺はそう返すだけで、それ以上は何も言わなかった。


 朝食を終えた俺は、部屋に戻りながら執事に陛下への謁見申請をお願いした。

 すぐには無理だろうけど、数日中に決まればありがたい。

 それまでは今まで通り、気を運用した訓練を続けるとしよう。


 ――そう思っていたのだが。


「……え? これから、ですか?」


 執事に謁見申請を依頼したのは一時間ほど前だ。

 それにもかかわらず、今から謁見できると返ってきたので、正直驚いている。


「は、はい。陛下から、そのように仰せつかりました」

「……えぇっ!? へ、陛下から直接ですか!!」

「はい。連絡の不備があってはならないと、私のような者に直接……」


 これは間違いなく、異常事態だ。


「すぐに準備します。あの、手伝っていただけますか?」

「すぐに侍女をお呼びいたします!」


 それからはバタバタでの準備が始まった。

 普段着でいいはずもなく、正装に着替え、髪型なども清潔に見えるよう整えていく。

 母さんに言われた強者の雰囲気を隠す方法は……すぐに思いつくわけもなく、なんとかバレないことを祈るのみだ。

 そんなことを考えていると、母さんの後宮の侍女はとても優秀で、あっという間に準備が整った。


「皆さん、ありがとうございます」


 俺が微笑みながらお礼を口にすると、侍女たちは笑顔でお辞儀を返してくれた。


「さて、行くか」


 そして、すぐに表情を引き締め直すと、その足で後宮をあとにする。

 向かう先は王城である。

 ありがたいことに、王城へ向かう道中でメレノラや子供たちと遭遇するような場所はなく、無駄に騒ぎ立てられることもない。

 もしかすると、陛下もメレノラの後宮での出来事を把握しており、後々で謁見の予定が露見しないよう、急ぎでの謁見を用意してくれたのかもしれない。

 ……まあ、実際のところは分からないので、俺のプラスになるよう考えておくとするか。

 とはいえ、人の目がないわけではない。

 王城に勤める者や、たまたま来ていた貴族たちが、俺の姿を見てひそひそと何かを話している姿が視界の端に映り込む。

 さて、こいつらは俺のことを五年も寝たきりだった役立たずだと思っているのか、それとも別の感情で見ているのか。

 どちらにしても、今後関わることのない人たちだ。どうとでも思わせておけばいい。

 王城の前に到着すると、先触れが来ていたのだろう、門番はすぐに門を開いてくれた。


「お待ちしておりました、レイン殿下」


 案内役が待ってくれており、俺は彼に続いて王城へ入っていく。

 真っ赤な絨毯が敷かれており、その上を歩くのはどうにも慣れない。

 母さんの後宮には必要のない絨毯や装飾品はないからな。

 まあ、王族は多少見栄を張るくらいがちょうどいいのだろうと、思うことにしよう。

 ……メレノラの後宮はやりすぎな気もしたけどな。


「こちらでございます」

「ありがとうございます」


 案内役の男性へお礼を口にすると、彼は笑顔で会釈をし、その場を離れていった。


「……さて、ここからが本番だ」


 末の子供とは言え、俺も一応は王族だ。

 そう簡単に城を出るということが許されるかどうかは分からない。

 とはいえ、七英雄の悲願を達成させるには、そうしなければいけないのだ。

 時間が惜しい、今にも暗黒竜の封印は解かれようとしているかもしれない。

 だからといって、俺の秘密を伝えれば、それがむしろ足かせになる可能性もある。

 俺の秘密を秘密のままにしつつ、陛下から城を出る許可を得る。それが俺にとって最良の結果だ。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ。


 そう考えていると、目の前にある高さ五メートルはあろうかという荘厳な扉が開き始めた。


「さあ、勝負の時だ」


 自分を奮い立たせるため言葉にし、俺は完全に開かれた扉の中へ足を踏み入れた。

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