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第10話:メレノラ・アクスター⑥

 進んだ先には、先ほどと似たようなやや広い場所があった。

 メレノラの後宮はどうやら、このような場所が複数あるのかもしれない。

 そんなどうでもよいことを考えていると、奥へと続く廊下の前に先ほどのボスが立っていた。


「ここで何をするつもりなんだ?」


 わざわざ相手のテリトリーに入ってきてやったんだから、楽しませてもらいたいところだ。


「自分の実力に自身があるのか、それとも単なるバカなのか。まあ、どちらでもいいか」


 ボスはそう口にすると、何もない目の前の空間に手を伸ばし、その先で指を弾いた。


 ――キイイイイイイイイィィィィン。


 突如、広い空間に甲高い音が響き渡り、鼓膜を激しく揺さぶってきた。


「こ、こいつは!?」

「どうだ、立っているのもやっとだろう? 俺にこいつを出させたんだから、地獄で誇っていいぞ?」


 ……何を言っているんだ、こいつは? ただ単にうるさいだけで、特にダメージはないんだが?


「三半規管って知っているか? こいつで鼓膜をやられた奴らはな、誰もが歪む視界の中でふらふら動いて、最終的には無残に殺されるんだ。この俺様にな」


 ……それはまあ、そいつらが弱かったんだろうな。


「言いたいことはそれだけか?」


 ランカー級かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。おそらくだけど、ダイヤ級の中の上、といった程度か。

 それにこいつ、俺のことをダイヤ級だと勘違いしているようだから、そこも訂正してやるか。

 そんなことを考えながら、俺はピアノ線らしきものが張り巡らされた広場へ足を踏み入れる。


「強がれるのも今の内だけだ!」


 ボスはそう叫ぶと、再びピアノ線を弾いて音を響かせる。

 だが、俺にとっては単にうるさい音が響いているだけだ。


「……どうして、真っすぐ歩ける? どうして、何も感じない!」

「そんなもの、俺には意味がないからだよ」

「貴様、ダイヤ級じゃなかったのか!」

「誰がそんなことを言った? お前が勝手に勘違いしただけだろう?」


 そう、俺の実力はダイヤ級で収まるものではない。

 今はまだランカー級に収まっているかもしれないが、七英雄唯一の弟子がランカー級で収まるのもあってはならないことだ。


「本気にするかどうかはお前が決めろ。俺の本当の実力は――マスター級だ」


 そう事実を突きつけた俺は、ピアノ線を暗殺者から拝借したナイフで切り裂きながら、ボスを間合いに捉える。


「……マスター級だと? そんなこと、あり得るわけが――」

「なら、黙って気絶していろ」

「がっ!?」


 俺はボスの顔面を右手で鷲掴みにすると、そのまま壁に後頭部を叩きつけた。

 流気術を使い強化した筋力で叩きつけたせいもあり、ボスは一撃で白目をむいて気絶してしまった。


「おいおい、一撃かよ」


 さすがに一回は耐えるだろうと思っていたが、まさか一撃で気絶するとは。

 自分優位な立場でしか戦ってこなかったツケが、打たれ弱さとして返ってきたってことか。


「呆気なかったな」


 そう呟いた俺は、他に潜んでいる暗殺者がいないか、気配を探っていく。

 しかし、ここより先にある気配は一つしかなく、それも暗殺者のような殺気がこもっているものではない。

 むしろ、恐怖に怯えているような雰囲気を感じ取ってしまう。


「……どうやらあとは、メレノラだけみたいだな」


 そう判断した俺は、ボスの首根っこを鷲掴みにすると、そのまま引きずりながら奥の方へと歩き出した。


 ◇◆◇◆


「……音が、止んだわね?」


 襲撃を受けたと聞いた時は、いったい誰がと内心で思っていたメレノラ。

 しかし、このタイミングでの襲撃となれば、すぐに答えが浮かんできた。


「どうやら死んだようね、レイン・アクスター! あはははは!」


 不安げな表情は不敵な笑みへと変わり、次には高笑いを始めた。

 暗殺者たちのボスが出ていく前には逐一報告を受けていたメレノラは、被害は大きかったがレインさえ死んでくれれば些事だと思っている。

 あとは襲撃者がレインだったことを陛下に報告すれば、その母親であるレリシアをも失脚させられると考えていた。


 ――コンコン。


 そこへ自室の扉がノックされた。

 メレノラはボスがレインを殺し、その死体を運んできたとばかり思っていた。


「入りなさい」


 自身に満ち溢れた声でそうメレノラが口にすると、扉がゆっくりと開かれていく。

 しかし、ボスはなかなか姿を見せようとはしない。それどころか、扉の前に人影すら見当たらなかった。


「……? 何をしているの、入りなさい」


 疑問に思ったものの、妃である自分が慌てるなどあってはならないと思っているのか、平静を装いながら再び声を掛けた。


 ――どさっ。


 すると今度は何かが廊下から部屋の中へ投げ入れられた。

 その姿を見たメレノラは両手で口を押え、悲鳴を上げる。


「き、きゃああああぁぁああぁぁっ!?」

「何をそんなに驚いているのですか、メレノラ様?」


 部屋に投げ入れられたのは、顔面が腫れあがり、気絶したボス。

 そして廊下から掛けられた声を聴き、メレノラは表情を青ざめた。


「……ど、どうしてあなたが、生きているのよ!」


 恐怖の表情を浮かべながら、メレノラは廊下に姿を現したレインを見据えた。

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