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第二話「悟りという文字を小五ロリと覚える奴は絶対ロリコンである」

 ななこは浅門学園初等部に通うごく普通の少女であった。

 ある日、ひもろぎの神の声に導かれ本荘総本山にて神秘の儀式を受けた。

 平和を守るひもろぎの巫女の使命と、力の源となるひもろぎの勾玉を受け継ぐ。

 こうして、ななこの戦いが今始まった!

 土浦このは。浅門学園に通う少女である。

このはは学園の図書室に来ていた。普段は友人のななこと一緒に帰るのであるが、今日はななこの所属する家庭科クラブの活動日なので別行動を取っているのだ。

 このはが図書室の扉を開けると……。

「わぁ、いらっしゃーい!おでこちゃん、また来てくれたんだー♪」

「ひぇっ……。」

 やけにテンションの高い司書に出迎えられる。元々読書の好きなこのは、無人の図書室の静けさも好きで度々足を運んでいた。しかし今年度から赴任してきたこの新人司書のハイテンションさに若干引いてしまい、図書室から足が遠のいていたのだ。

 そんなこのはが今図書室に足を踏み入れた理由とは。

「色々面白い本入って来てるよ!えっと、今日のオススメはコレ!」

「『幻獣図鑑』……?」

「そう!『幻獣図鑑』!世界中の伝説の獣が載っている本なんだけど面白いの!おでこちゃんってこういうファンタジーっぽいの好きそうだったから、どう?」

「わぁ……すごい本」

 このははオススメされたこの本を借りる事にした。


 ななこのクラブ活動が長引くようなので、このはは先に下校することにした。

(クラブ終わるまで待っていても良かったけれど、却って気を使わせちゃうよね)

 そんな事を考えつつこのはは畑の中のあぜ道を歩く。

 と。傍らの草むらが揺れた気がした。

(何かいるのかな……?猫ちゃんだったら嬉しいな)

 このはは草むらの中を覗き込む。するとそこには……。

「ひぇっ……!」

 何とそこにいたのは猫でも犬でもなく、一本角の生えた馬とも人とも知れない獣人のような奇妙な生き物であった。

(あれ……?この角って、確か……。)

 このはは図鑑を取り出すとページをぱらぱらとめくる。そしてあるページを開いた。

 一角獣ユニコーン。額に一本の角が生えた馬に似た幻獣である。その角の成分は毒を中和する万能薬となるといわれる。獰猛だが清らかな乙女に懐く性質がある。

「この子はユニコーンなの……?」

 と、獣人が目を覚まし辺りを見回す。

『ここは……。そうか、我は気を失っていたのか』

「お馬さん、大丈夫?」

『早く安全な所へ逃げなければ……うっ』

 獣人は立ち上がろうとするも膝から崩れ落ちる。膝からは血がにじんでいた。

「もしかして、膝……怪我してるの?ちょっと待ってて」

 このはは道端に生えている円形の葉っぱをいっぱい摘んで両手で揉みこんで汁を出す。そしてその葉の汁を獣人の膝の傷口に塗り込む。

「ちょっとしみるかもしれないけど……。これチドメグサっていってね、止血に使える薬草なんだって。どこにでも生えてて雑草扱いされてるけど……役に立つんだよ」

『ありがとう。少し楽になった』

「どういたしまして。……お馬さんは、ユニコーンなの?」

 このはが一本角を見ながらそう聞くと、獣人は頷いて答えた。

「うむ。我こそは……ロリータ嗜好のユニコーンである」

「え……?」

 この奇妙にして必然のような出会いこそが今回の事件の始まりだったのである……。


 翌日の放課後。

 このはは例の獣人のもとに向かっていた。

「ユニコーンさん、学校の菜園で育てたにんじん持ってきたよ」

『すまない、このは嬢。助かる』

 ユニコーンはこのはからにんじんを受け取るとかじり始める。

「お味はどう……?」

『素晴らしく瑞々しくて美味しいな』

「収穫してすぐに持ってきたからねっ♪……ところで、膝の具合はどう?まだ痛い?」

『このは嬢のおかげで血は止まったが、まだ痛みがあるな。本当はもっと遠くへ逃げるべきなのだが……。』

「逃げるって何から?怖い人?膝の怪我はその人に?」

 矢継ぎ早に質問するこのはにユニコーンは言葉を選びながらゆっくりと答える。

『いや、この怪我は逃げる途中に我の天敵ア●ネス族に遭遇して、流れ矢に当たった時のもの。奴らの襲来にも備え、もっと安全な場所を探すべきなのだが……。』

「本当は私の家に連れてってあげられたらよかったんだけど。お母さん、獣毛アレルギーなんだよね……。ごめんね」

 このははそう言ってユニコーンのたてがみをなでる。少女特有の甘い香りがふわっとユニコーンの鼻腔をくすぐる。

『ふぉぉぉぉぉぉっ……!!!』

「ど、どうしたの!?膝が痛いの?」

 突如、奇声を上げるユニコーンに驚くこのは。

『そ、その、うむ、実はそうなのだ。膝が、膝が痛い……。このは嬢、一つ頼みがあるのだが、聞いてもらえるだろうか』

「頼むたいこと?私に出来ることなら何でもするよ」

『ん?今何でもするって……。』


浅門学園。

 ななこは下校のため、校舎の昇降口で上履きから靴に履き替えていた。

「あら長嶺さん、一人?珍しいわね。いつも一緒の土浦さんは?」

 通りがかったひいらぎ先生が話しかけて来る。

「あ、ひいらぎ先生だー。今日、このはちゃん、用事があるって急いで帰っちゃったんだ」

「用事……?」

「何の用事かまでは聞いてないけど。昨日は私の方がクラブ活動だったし、二日連続で一緒に帰れなくてちょっと寂しいなぁ」

「………。」

「ひいらぎ先生?」

「あぁ、ケンカとかしてなければいいの。お友達とケンカするのって悲しいことだからね」

「うゆゆ。あきちゃんは平田君とサッカーしてるし、つまんないの。浅門の森公園に行ってまっさんとでも遊ぼうっと」

「まっさん?って誰?他の学校のお友達?」

「友達じゃないよ。まっさんは最近公園うろついてるアラサーのフリーター」

「うわ!何かめちゃくちゃ社会不適合な不審者っぽい!?大丈夫なのその人!?」

「まっさんって割とノリが良くて面白いんだよー。先生また明日ねー」

 そう言ってななこは外へと出て行った。

「公園に不審者出るって通報しとくべきかしら。……いえ、それよりも気になるのは」

 この時、ひいらぎの脳裏に一抹の不安がよぎっていた。

 そしてそれを確かめるために杖をついて学校の外へ向かって歩き出した。


 ………。

「こ、これでいいの?」

「い、いいっ……!」

「それならいいんだけど……。」

 ユニコーンはこのはの膝の上に頭をのせて恍惚とした表情を浮かべている。

 そう、ひざまくらである。ユニコーンは乙女のひざまくらが大好きなのだ。

「ふぉぉぉぉぉ……楽園はここにあったのか……。柔らかな膝の感触、乙女のいい匂い、最高だぁ……。我、一生ここに住みたい……。それにしても」

 ユニコーンは自らの額の角を複雑な表情で見やる。

「この角さえなければ!今すぐにでもこの膝にうつ伏せに顔を埋めて深呼吸してやるものの!ふぉぉぉぉぉぉ……!この角さえなければ……」

 このユニコーン、実はこの後もユニコーンの生態の秘密に迫るような興味深いことを延々と呟き続けているのだが、その内容が何だかとても気持ち悪いので今回は割愛する。

「ユニコーンさん、この角嫌いなの?格好いいと思うけど……。」

 このはは何の気なしにユニコーンの角を撫でた。

「お゛ほぉっ!」

 ユニコーンは汚らしい啼き声をあげる。

「わぁ、この角、すべすべだぁ。手触り気持ちいいー」

 感触が気に入ったのかこのはは角を撫で続ける。

「お゛っ、あまり触り続けるとと先っちょから角汁出るぞ」

 ……などと、このはとユニコーンが戯れていると。

 こつ、こつ、と杖で歩く音が聞こえて来た。

「あれ……?この音はもしかして」

 このはは草むらから顔を出して様子を伺う。すると。

「土浦さん、まっすぐ帰らずに寄り道かしら?」

 ひいらぎ先生がいた。まるで最初からこのはがそこにいる事に気づいているかのように。

「ひ、ひいらぎ先生……。」

「何かそこにいいものでもあるのかしら?……珍しい生き物とか」

「あ、いえ、な、何にも……。」

「このは嬢、どうかしたのか?」

「出てきちゃだめーっ」

 草むらから顔を出した獣人を見て先生は表情を引き締めた。

「……ユニコーン!まさかこんな所で遭遇するとは!」

「おぬしは……!見つかってしまったなら仕方がない」

 ユニコーンは草むらから完全にその姿を現した。

 身長約178cmほどで中肉中背の雄の獣人であった。

 一般的な成人男性ほどの身の丈ではあったが、彼よりも20cm程低いひいらぎ先生からると威圧的に映った。

「ユニコーンはユニコーンでも、我こそはロリータ嗜好のユニコーンである!」

「ロリータ嗜好のユニコーン!?つまり略してロリコーン!?」

「よくぞ我の通称を見抜いたな」

「やかましいわまったく。で、そのロリコーンがこんな人里に降りて来て何の用?私の生徒に手を出すつもりだったら問答無用で成敗するけど?」

「い、いや違う!イエスロリータノータッチこそ我が指針!怪我をしているところをこのは嬢に助けられたのだ!その恩人におかしな真似など出来るわけなかろう!そうとも決して手は出しておらんぞ!手はな!」

ものすごい早口でまくしたてるユニコーンに疑惑の目を解かないひいらぎ先生。

「……って言ってるけど本当?土浦さん」

「はい。ユニコーンさんは逃げて来たそうです」

「逃げて来た、ねぇ。そりゃまぁ敵は無駄に多そうだけど。色んな方面に」

 呆れるようにユニコーンを見るひいらぎ。

 ユニコーンの方もひいらぎの方をじっと見据えている。

(この女……まるで我がここに居る事を最初から分かっているかのようだったが……。)

「な、何よ?人の顔をじろじろと」

「我の予想が正しければ、おぬしはまさか……!」

「えっ……?」

 次の瞬間、ユニコーンはひいらぎのスカートの中に顔を突っ込んだ!

「ふぉぉぉぉぉぉぉ……!」

「なっ、なっ、何すんのよこの淫獣ーっ!やっぱり成敗してやるっ!」

 ひいらぎは杖でユニコーンをびしびしとしばき倒す。

「ぬふぅ!こ、これはこれでいいぞ……っ!」

 しばかれながらも恍惚とした表情を浮かべるユニコーンを見て、流石のひいらぎ先生も若干引いた。

「あ、あんた、どーいう了見で人の股間に顔突っ込んでるのよっ!?」

「我はロリには手は出さんが、それ以外には遠慮なく手を出すということだ」

 何を当然の事を、と言わんばかりに答えるユニコーン。

「大体、あんたはロリコーンでしょ。私、そんな年齢じゃないわよ」

「おぬしは好物しか口にしないのか?栄養バランスを考えて色々な物を食べるだろう?」

「えっ……?そりゃそうだけど」

「我も特にロリータ嗜好なだけで、普通に好き嫌いせずに乙女の成分を摂取しているぞ!」

「乙女の成分って何なのよ……まったく」

「おぬしも我の見立て通り十分に素晴らしい。この匂い、処女ではないもののげふぁっ!」

 ユニコーンの言葉を遮るようにひいらぎの杖が飛ぶ。

「よ、余計な事言うんじゃないっ!この淫獣はまったくっ!」


 日は傾き、空が赤く染まり始めた頃。

「さてと。そろそろ私は戻ろうかしらね」

 傍らの石に腰かけていたひいらぎは杖を掴んで立ち上がる。

「見逃してくれるのか……?」

 ユニコーンが聞くとひいらぎはこう答える。

「私は一介の教師よ。とりあえず生徒に危険が無いことが分かったからそれでいいわ。土浦さんも暗くなる前にお家に帰るのよ」

「は、はい、先生さよなら」

「はい、また明日ね」

 ひいらぎは後ろ手に手を振ると杖をついて歩き始める。

「どうしてひいらぎ先生、こんな所に来たんだろ……。」

「このは嬢もそう思うか。我もそこが解せぬ。まるで我らがここにいると初めから分かっていたような……。そのような所作が出来るとしたら、まさかあの白衣女史……。」

 ユニコーンはひいらぎの消えた方の道を見やる。その目には夕陽が映っていた。

「ユニコーンさん……?」

 難しい顔をして何事か考え込んでいたが、やがて目を伏せてこう呟くのであった。

「いや、そんははずはない……か」


 翌日。浅門学園。

「うゆ~、やっと休み時間だぁ。ひいらぎ先生は授業内容詰め込みすぎだと思うなぁ。そう思わない?このはちゃん」

「……。」

 ぼーっと窓の外を眺めているこのは。

「……このはちゃん?」

「え?あ、ななちゃん……?」

「このはちゃん、もしかして今日の放課後も、用事?」

「うん……。」

 流石のななこもここまで来たら、何らかの異常事態が起きていることに気づかないわけがない。

「このはちゃん、その用事って、私にも言えないことなの……?」

「……。」

 このはは少し思考をめぐらせる。

(ななちゃんになら、ユニコーンさんの事を話しても大丈夫かな?ななちゃんならきっと大丈夫。……でも盗み聞きとかされてて他の誰かに知られたら?ひいらぎ先生みたいに見ないふりしてくれる人だけじゃないよね。ユニコーンさんは誰かから逃げて来たって言ってたし、せめてユニコーンさんの怪我がよくなるまでは、誰にも言わない方がいいよね)

「このはちゃん?」

「ごめんね、まだ言えない……。」

「そっかぁ。じゃあ言えるようになったら説明してほしいなぁ。」

「うん。ごめんね」

 表校舎3階の教室での二人のやり取りを裏校舎の屋上でひまわりの種をかじりながら眺めているけだものが居た。そう、妖怪変化ももんがである。

 こいつは前回の敗北からも勾玉の奪取を諦めずにずっと、ななこ達の隙を伺って見張っているのだった。

「流石は僕のラットヘブンを破った奴だ、なかなかに隙が無い……。だが、こうして見張りを続けていけばいつかは勾玉を奪い取る機会が訪れる!そして僕は神になるんだ!」

 そんなことを考えていると、ももんがの身体に影が差した。

 ももんがが雲一つない青空を見上げると何やら翼のある何かが飛んでいる。鳥にしては大きすぎるし、飛行機には小さすぎる。その何かはももんがのいる辺りを中心に螺旋状に回転しながら降下してくる。そして、その何かはももんがの目の前に降り立った。

 それは馬の頭、人の身体、そして鳥の翼をもった獣人であった。

「な、何なんだお前……!ひょっとして巷で話題のウマ息子か!?」

「俺の名はペガサスグレイト。逃亡した同胞を探してる。俺のような獣人を見なかったか?」

「いや、見てないな」

「本当か?ちらっとでも見てないか?」

「君のような強烈な獣人、一目見たら忘れるはずがないが。だから絶対見てない」

「それもそうか。すまなかった」

 ペガサスは翼を広げ飛び立とうとしたが、ふと動きを止める。

「おい、どぶねずみ」

「ももんがだが。」

「あいつを探すため、手を貸してくれ。今はねずみの手も借りたい」

「報酬次第で」

「あいつを見つけたらひまわりの種半年分でどうだ」

「乗った!」

「交渉成立だな」

 言うが早くペガサスはももんがを掴むと空高く飛び上がった。

「うわぁぁ!高すぎ―――――ぃ!」

 ペガサスの翼の飛行能力はももんがのグライダー式の飛行能力の比ではなかった。

 二匹のけだものが大空に飛び立ったその数分後。

 屋上の扉が開き、現れたのはひいらぎ先生だった。

「この辺りから妖気を感じた気がするんだけど……気のせいだったかしらね」

 ひいらぎは屋上の端から端まで注意深く杖をついて歩き回る。通常、屋上に通じる扉は鍵がかかっている。鍵は職員室で管理されており、生徒には決して入ることは出来ない。

 つまり、屋上に自由に入れるのは鳥くらいなものである。

 ひいらぎは端の方にひまわりの種の殻を見つける。

「……ふむ。どぶねずみの経立でも住み着いてるのかしらね」

 杖で排水口をこつこつとつついたりしてみたひいらぎであるが明確な答えは出なかった。


 ペガサスとももんがは畑の中のあぜ道にいた。

「なんとなく馬臭いのはこの辺りだけれど……。」

「どぶねずみの嗅覚すごいな!あとはどうやって見つければいいんだ?」

「だから、ももんがだが。とりあえず罠でも仕掛けておびき寄せてみるかな」

 そう言うと、ももんがは罠を仕掛け始めた。まずは縄で輪っかを作り道に仕掛け、その真ん中ににんじんを置いた。

「罠、よし!」

 ももんがは指差し確認をした。

「よしじゃないが。流石にあいつもここまで単純じゃないと思うんだが」

「シンプルイズベスト。まぁ見てなって」

 そしてももんが達が草むらで隠れて見ていると。

「むほっ!にんじんだ!ありがたくいただくか……おおっと!」

 秒でユニコーンが罠に捕らえられた。

「なっ?馬畜生なんて所詮こんなもんさ」

「ぬぅぅ、何か納得いかんっ」


 こうしてユニコーンとペガサスが出会ってしまった。

「探したぞロリータ嗜好のユニコーン」

「ペガサスグレイト!」

「何故逃げた?秩父ダービーを前に臆したか!今度のレースは俺達の宿敵・イキスギセンセンシャルとの決戦でもあるのだぞ!」

 掴みかかるペガサスにユニコーンは目を逸らす。

 ももんがは、きったない名前の宿敵だなぁ、などと思いつつ傍らでひまわりの種をかじる。

「我の膝はもう限界なのだ。次のレースに出ればもう二度と走れなくなるだろう。その前にロリを乗せて走りたいのだ!一度くらい望んでもいいだろう!?」

「いいわけねーだろ!このロリコーン、頼むからそのロリ嗜好だけは止めてくれ!」

「ロリ嗜好を止めろか……。それならペガサス!そなたは熟女趣味を止められるのか?」

「ぬぅ、俺の熟女趣味は関係ないだろ」

「いや、そなたのいう事はそういう事だからな?人の趣味嗜好は溢れ出るもの、止めようと思って止められるものではない……そうだろ?」

「それはそうだが……。」

「単純に趣味嗜好の問題なのに何故熟女趣味は容認されてロリ嗜好は存在しているだけで迫害されなければならないのだ!どう考えてもおかしいだろう!」

「純粋にきっしょいからだろロリ嗜好なんざ」

「それを言ったら年増好きもベクトル違うだけで相当きっしょいぞ」

 醜い言い争いを続ける二頭に、ももんがはこう訊いてみる。

「あのー、興味深く拝聴させていただいてますが、一つ質問いいですか?」

「どうぞ」

「ロリコーンさん?が出場する大事なレースが近日あるんですよね。だけどロリコーンさん?は膝に怪我をしている。素人質問で恐縮ですが、代わりにペガサスさんが出場することは出来ないんですか?そうすれば丸く収まる気がするんですけど」

 ももんがの言葉にペガサスはこう答える。

「それが出来たら苦労はしない。俺は前回のレースで出禁になっているのだ……。少し飛んだだけなのに……。」

「いやまぁ走るレースで飛んだら出禁になるだろーね、納得」

「しかしこのままでは埒が明かぬな。勝者こそ正義ということでどうだろうか」

「望むところだ!ロリコーン!お前を必ず連れて帰る!」

 両者、それぞれが戦闘態勢を取る。

 こうして馬対馬の決戦が始まった!


 道を歩いているななこ。

「うゆ……!」

『気づいたかななこよ』

 頭の中に響く声。

「ひもろぎ様!今のは?」

『二つの妖気のぶつかり合いじゃ。尋常ではない。急げななこ!』

「うん!」

 頷くとななこは走り出す。

「それにしても、その妖気?って何かなぁ?」

『妖しげな気、妖怪変化や幻獣などの発する気のことじゃ』

「気……って?」

『最近の若者はそんな事も分からぬのか。学校では何を教えているのか』

「学校では習わなかったなぁ」

『これは教育委員会の大いなる手落ちなるぞ。……いいか、ななこ。気というものは生物が生物たるエネルギーのことを指すのじゃ。生命力、魂、オーラ、マナ、チャクラなど国や時代ごとに様々な呼ばれ方をするが、基本的には同じものを指しているわけじゃ』

「気は、エネルギー?」

『うむ。妖しげな気は妖気、邪悪な気は邪気、勇ましい気は勇気……とか、そんな感じじゃ』

「なんとなくわかったよーな」

『気が無くなると肉体が何ともなくとも生物は生きてはいけん。逆もまた然りじゃ』

 そんな事を話しながら進んでいると。


「うゆぁぁぁぁぁぁーーー!?中肉中背の雄の獣人二頭がくんずほぐれつのレスリングやってるよー!?何この地獄絵図!」

 この辺り詳細に実況しようと思っていたが、マジで苦情が来そうであるので割愛する。

『仲たがいしているとはいえ相手は二頭……ななこ、どう立ち向かう?』

 ひもろぎ神の声にななこは右手に気を集中させてドレンチェリーを形成する。そして。

「えいっ、爆裂ドレンチェリー」

 ぽいっと獣人二頭に向かって投げつける。

するとものすごい大爆発を引き起こした!

『うわぁ……。』

 最短時間で獣人共を駆除したななこのあまりの手際の良さにひもろぎ神は少し引いた。

「さて。一仕事終わったし帰ろーっと。まだ公園にまっさんいるかなー♪」

 ななこはもうもうと上がる爆煙を背に去っていくのであった。

 それから数十分。ようやく煙が晴れた頃。

 二頭の獣人が倒れているのみであった。

 と。そのうち一頭がゆっくりと立ち上がった。ペガサスの方であった。

「さぁ、トレーニングセンターに帰るぞ……。」

 ペガサスはずるずるとユニコーンを引きずって山の方へと歩いていった。

 そして、誰もいなくなった。

 それから数十分後、このはがやってきて爆発後の辺りの惨状に頭の中いっぱいに疑問符を浮かべることとなったのは言うまでもない。

 ちなみにももんがは爆発に巻き込まれてミディアムレアになった上、報酬のひまわりの種は踏み倒されて貰えなかったとさ。

おうまさんの擬人化が流行っていると聞いて書きました!

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