表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Vol.8(見つけた)

作者: たまいはる

ふと気がつくと辺りは真っ白だった。

見渡してわかることはここは田圃道であるということ。田んぼの中には少し育った苗が綺麗に整列している。

ということは白いのは霧か?

足元しか見えないが俺は冷静だった。


なぜか前へ進まなければそう思い足を動かした。


しばらく歩くと目の端に色が見えた。

夕方を思わせる橙色だ。

それに目を取られる。


ふよふよとこちらを招くような動きをするそれに俺は手を伸ばす。


でも、とどかない。

届かないなら近づこう。


それに向かって俺は走った。


近づいては遠のき、遠のいては近づき。

それは俺を嘲笑うかのように舞っている。


「待て。待って。」

俺はそれに手を伸ばす。


届かない。

かわされる。


届いた。

と思ってもそれは手をすり抜ける。


「なんで。なんで。待って。」

すり抜けても諦められなかった。


手を伸ばす。

届く。

すり抜ける。


すり抜ける。


すり抜ける。


「なんで。届かない。」

目が熱くなる。


涙が溢れ出す。


「やっと、見つけたのに。」

口からそんな言葉がこぼれ落ちた。


橙色のそれは立ち止まっていた。


橙色は形を変える。

さっきまでとは違う。


だんだんと大きくなって、

だんだんと人間の大きさになって、


だんだんと少女の姿になって、

こちらをじっと眺める目ができて、


口ができて、それの形が変わって。


「     」


「ありがとう?」

そう動いた気がして、俺は、地べたに座り込む。

足の力が抜けたんだ。


「やっぱり、君は〇〇なんだね。」

橙色がコクリと頷く。


「やっと見つけた。」

俺はそれに一層の笑顔を向けた。


溢れた涙が宙を舞う。

でも、それよりももっと“良かった”そんな感情が俺の中で溢れ出た。


ーーーーー

ふと気がつくとそこは普通の田圃道だった。

なんの変哲もない普通の田圃道。

少し成長した苗が綺麗に並んでいる。


俺はその道に座り込んでおり、なぜが鼻と目頭が熱くほてってている。

まるで今まで泣いていたかのようだ。


あたりを見渡すと、少し先にキラリと光る何かを見つけた。

それに手を伸ばす。


「やっと見つけた。」

それは、彼女が大切にしていたイヤリングだった。

俺が彼女に送った。最初で最後のプレゼント。

オレンジ色の石が嵌め込まれた小さなイヤリング。


あぁ、そうか。

これを教えてくれたのか。


そこは、彼女が事故に遭った近くの道路だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ