if白雪姫
柔らかい果物は喉を通りますからね
喉を通った。
食べごろで甘く熟れた桃は彼女の舌の上でとろけた。
この瞬間、世界で1番美しい白雪姫は死んだ。
「なんということ…」
森の小人は悲しさに明け暮れ、棺の周りで大好きな白雪姫を囲いながら過ごしていた。
白雪姫、白雪姫。
母親が死んだ後にやって来た妃から迫害を受けた白雪姫。
森に逃げ隠れ穏やかに過ごしていたのに毒殺されてしまった白雪姫……
「おや……?」
隣国の王子は白馬に跨り、その森で白雪姫を見つけた。
「なんと美しい少女……」
小人をかき分け、王子はその美しい白雪姫の唇にキスをする。
しかし、運命は愚か、王子はその場で苦しみ出した。
「皇太子殿下!!!!」
護衛の銃口が小人へ向く。
「待ってくれ!これには理由……」
パァンと高い銃声に8人の小人が血を流して膝から崩れ落ちた。
「口はひとつあれば十分」
護衛は小人に問う。
「この女は何者だ、皇太子殿下に何をした」
「あ、あ、……か、彼女の名前は白雪姫。妃に城で虐められ、逃げ着いた先で毒殺された。毒の入った桃を食べたんだ。王子はそれを知らずに我々をかき分けてキスをした……。我々は、何も悪いことなど……」
パァンーーー
説明も虚しく残りの小人も息の根を止められた。
「2人を城へお連れしろ。主治医を走らせろ!」
護衛と共に白雪姫と王子は森をあとにした。
2日後……
カーテンをすり抜けた光がうつくしい白雪姫の頬を照らす。小鳥の囀る声と使用人たちの賑やかな声が聞こえる気持ちのいい朝である。
「はぁ、白雪、白雪、可愛いなぁ。死んでいてもこんなに美しいなんて。あれだけ演技したかいがあったよ。わざわざあの煩い妃に取り入って……死体を回収する取引をした甲斐が有る。なんて美しいんだ。君の死を望んでいたよ。キスしてもいいかな、はぁ、はぁ」
彼は死体愛好家だった。
死んだ白雪の下肢、耳裏、鎖骨、足の指までねっとりとした目で見つめ、匂いを嗅ぎ抱きしめる。
「ああ、ああ、白雪姫。うつくしい。綺麗だ。何も話さなくていいんだ。僕達は愛し合っているよ。さあ、ひとつになろう」
言葉に出来ない惨状、王子の前に乱れた白雪姫の死体は粘膜を通じて彼と一体化する。
これから先ずっと、毎晩毎晩、何度も何度も。
ーーーーーーー
「鏡よ鏡、世界で1番美しいのはだぁれ?」
「それはもちろん、お妃様でございます。」
「……なぜかしら?」
「お妃様は高貴で美しく、そして……」
「純潔でいらっしゃいますから」
若さ、美しさ、愛嬌。
絶対に勝てない条件に、勝てる条件が並んだ時。
きっと誰もが勝てる条件から攻略していくのではないでしょうか