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第99話 八月下旬、夏休み明け、放課後

 

 ショッピングモールでの買い物を終えて、外に出る。

 

「今日も楽しかったね〜」

 

 先輩は少し前を歩いていて、俺と篠森がその後ろをついて歩く。俺たちは買った服が入った紙袋をそれぞれ持ちながら。

 

「楓ちゃん、本当によかったの?」

 

 先輩は顔だけ篠森に向けて尋ねる。

 

「流石に払ってもらうのは悪いですし」

 

 結局、先輩がお金を出そうとした白いブラウスと紺色のロングスカートは、篠森自身の金で買う事にしたのだ。

 

「金谷さん……この服、ありがとございます」

 

 篠森が微笑んで金谷先輩に礼を告げる。先輩は一瞬キョトンとしてから、ニッと「似合うと思ったからね」と得意げな笑みを見せる。

 

「良かったらさ、また着て見せてよ。今度遊ぶ時、いつかは決まってないけどね」

 

 そんな先輩の注文に篠森は「分かりました」と答える。

 

「いつにしよっかな〜……補講とかあるし、休日になっちゃうかな」

 

 帰り道を歩きながら先輩は呟く。

 補講はほとんど毎日入ってるらしく、放課後になってから部活帰りの様な時間まであるのだと。

 

「それでも大丈夫、楓ちゃん?」

「はい」

「そっか、よろしくね。あ、優希くんもね!」

 

 先輩が俺の方に顔を向ける。

 

「分かってますって」

 

 先輩は「楽しみだな〜、外で見るの」と妄想して、ニヤニヤとしている。

 

「優希くんも楽しみでしょ?」


 先輩の身体が完全に俺達の方を向き、後ろ向きに歩く。

 そして、俺の返答も待たずに先輩は続けた。


「わたしも楓ちゃんに選んでもらった服、着てこっと」

 

 決まったらまた連絡するから、と先輩が付け足す。

 

「──じゃ、またね!」

 

 次は何しようかなんて、先輩が話しながら歩いていれば、先輩の家も近づいていたようだ。

 

「はい、また」

「さよなら」

 

 帰ろうとする先輩に挨拶をして見送り、篠森にアイコンタクトを送る。篠森にも伝わったのだろう、ゆっくりと歩き出す。


「ねえ、甲斐谷……」


 歩き出してから数分ほどして、篠森に呼ばれ「どうした?」と振り返る。俺には、何か言いたげな顔をしているように見えて。


「あ、えと……ちょっと呼んだだけ」


 ただ、それは俺の勘違いだったか。


「そうか」

「……ごめん」

「いや、全然。気にすんなって」


 別に何の用もなく呼んだって、そんなことで怒る事はしない。そんなつもりは全くない。

 

「いつもありがとね」 

「おう……じゃ、また」

 

 篠森が家の中に入って行く。

 俺は自宅に向けて歩き始める。時刻は五時少し前。家に着く頃には五時くらいか、少し過ぎるかもしれない。

 

「…………」

 

 特に寄り道もする事なく自宅に向かう。

 

「鍵、鍵っと」

 

 俺は玄関の鍵を開ける。

 家の中には母さんは居ない。一先ず、制服から着替えよう。階段を上っていき、自室に入る。

 

「服は……」

 

 紙袋のまま、忘れないようにタンスの横に置いておこう。

 

「よっ、と」

 

 俺はベッドに腰を下ろす。

 しまった、まだ着替えてないのに。

 

「……ふぅ」

 

 もう少ししてから、制服から着替えるか。なんて考えて五分ほど。下の方で家の扉が開く音がした。

 

「ただいま〜」

 

 母さんが帰ってきたらしい。

 俺はベッドから立ち上がり、制服から着替え始める。ハンガーにかけて吊るしておく。部屋着に着替えて部屋の扉を開く。

 階段を上ってくる母さんに。

 

「おかえり」

 

 と言って、俺が出迎えれば二度目になる「ただいま」という声がする。

 

「優希、久しぶりの学校どうだった?」

 

 どうだったと言われても。

 

「まあ、始業式だけだから。特に何とも」

 

 まだ、学校が始まったと言う感覚が薄い。夏休みの延長にあるような気分だ。

 

「そ」


 俺の答えに母さんはたったそれだけ。

 直ぐに話は変わり。


「取り敢えず、まずお風呂掃除お願いして良い?」

「分かった」

 

 俺は母さんと入れ違いで階段を下りて、浴室に向かう。スポンジと洗剤で浴槽を洗い、シャワーで流す。それが終わりリビングに入れば、着替え終えた母さんがテレビをつけてニュースを流しながら寛いでいる。

 

「終わったよ」

 

 俺もリビングの椅子に座る。

 

「そう言えば……お昼ご飯、どうした?」

 

 今日は弁当を持っていってない。

 どこで何を食べたのか気になるのか。

 

「ああ、始業式だけだったからちょっと友達と遊んできて……そこで」

「成る程ね〜、どこ行ったの?」

「ショッピングモール」

「あ〜、あそこね」

 

 それから母さんは記憶の中を思い返しているのか、少し間を置いてから。

 

「友達って、海に一緒に行った子?」

 

 そう確認してくる。

 

「そう、海に一緒に行った子」

「ふ〜ん……そっか」

 

 後は聞きたい事は特にないのか。

 母さんが立ち上がる。

 

「じゃ、ご飯作るの手伝いなさい」

 

 俺も椅子から腰を上げる。

 

「今日は何作るの?」

「ハンバーグよ。玉ねぎと卵と挽き肉、冷蔵庫から出して」

 

 俺が冷蔵庫を開いて探しているうちにキッチンの方でガチャガチャと何やら用意している音が聞こえる。

 言われた通りの材料を持って来れば、パン粉と塩胡椒、サラダ油、金属製ボウルが並んでいる。コンロの上にはフライパンが。


「玉ねぎのみじん切り、出来る?」


 母さんはまな板と包丁を用意して俺に聞いてきた。

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