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第97話 ショッピングモール

「いや、食べた食べた〜。美味しかった〜、お腹いっぱい」

 

 会計を済ませてレストランから出る。先輩は料理に満足したのか腹を撫でながら言う。それなりの量があって満足度も高かった。値段は図書館近くのファミレスより多少は張るものの、高すぎるなんて事はない。

 

「じゃ、帰る?」

 

 ショッピングに行こうと言ったのは先輩だと言うのに、これではレストランに来ただけだ。

 先輩の言葉に俺は「いや、何のために来たんですか」とツッコむ。

 

「嘘、嘘。服、見にいくんでしょ?」

 

 先輩が柔らかに笑った。

 先輩とマップを見た時にアパレルショップも何回にあるかは見つけていた。具体的な位置までは分からないが、それは行けば分かるはずだ。

 

「もうすぐ秋だからね〜」

 

 俺は別に服とかについては詳しくない。

 

「秋の服、買うんですか?」

 

 まだ夏の内だと言うのに。

 それに九月になっても暑さは残ったままだろうし。気が早いんじゃないか、と思ってしまうが先輩は「優希くんは分かってないね」と鼻で笑う。

 

「本格的に寒くなってからじゃ遅いんだよ、多分ね。ね、そうだよね? 楓ちゃん」

 

 先輩は自分で言っていて自信がないのか、篠森に確かめる。

 

「そうですね。もうこの時期から秋冬の服の新作は出てますし……」

 

 だから先輩の言ってる事は間違いじゃないのだと。俺は服にあまり頓着がなく、どの時期に服が売られ始めるとか全然知らなかったから。

 

「へえ、成る程」

 

 と、感心してしまう。

 

「流石〜、楓ちゃん」

 

 俺達三人の中で一番、こう言った話に詳しいのは篠森なのだろう。

 

「やっぱり、篠森って……」

 

 お洒落だよな。

 篠森はそう言うの気にしてるんだろう。服装とか。それに比べて俺は。

 

「そうだ、優希くんも服見るでしょ?」

 

 エスカレーターに乗って下の階に降りていく途中、前方に立つ先輩が俺に聞いてくる。

 

「良いんですか?」

 

 俺の服を見に行く事で、二人の服を選ぶ時間が減らしてしまうかもしれないと言うのに。

 ただ、先輩は「良いよ良いよ、そりゃさ。面白そうだし」と笑う。

 

「どっちから行こっかな〜、優希くんのが先か。わたし達のが先か」

 

 先輩は楽しそうに考えている。

 エスカレーターを降りて、アパレルショップのある階に着く。

 

「お、そうだ。優希くん、楓ちゃんに服選んでもらったら?」

 

 篠森に。

 俺は横に立った篠森を見る。目があった。

 

「だ、大丈夫?」

 

 篠森が心配そうに聞いてくる。

 

「私が選んで……甲斐谷の好みとかもあるだろうし」

 

 俺は別に。

 それに篠森が選んでくれた服なら、俺が選ぶなんかよりも絶対に悪くない筈だ。

 

「選んでもらっても良いのか、篠森?」

 

 と言うか、俺の方こそ良いんだろうか。

 

「……うん」

 

 篠森に服を選んでもらっても。


「なら……お願いしようかな」


 選んでくれると言うなら。

 言葉に甘える事にしよう。


「分かった」


 俺たちのやり取りを聞いていた先輩がニコニコとしながら篠森に耳打ちする。その話し声は俺には聞こえない。

 言いたい事を伝え終えたのか、先輩はそれから何でもない様にアパレルショップに向けて歩き始める。

 

「篠森、金谷先輩はなんて?」

「な、なんでも……ない」

 

 俺の質問から逃れる為にか、篠森が顔を逸らして早足で金谷先輩の方に近づいていく。先輩は篠森に何を言ったのやら。

 

「先に優希くんの方、選ぼっか」

 

 アパレルショップ内に入って、男性用のコーナーを物色する。篠森はワイシャツやジャケット、コートなんかを見てる。

 

「秋冬の結構並んでるね〜」

「ですね。まだ八月なのに」

 

 俺と金谷先輩は並ぶ商品を色々見ながら店内を進む。店内には篠森の言ってた様に秋冬の服が多く並んでいる。

 

「……先輩」

「うん?」

「さっき、篠森に何て言ったんですか?」

 

 篠森は答えてくれなかった。

 聞いておきながらも分かってる。

 どうせ、先輩も。

 

「秘密〜」

 

 答えてなどくれないだろう。


「ですよね」


 誤魔化すのは分かってたから。

 

「まあ、優希くんに教えちゃったら、楓ちゃんとこっそり話した意味ないじゃん」

 

 それもそうか。

 俺は今も服を選んでくれてる篠森の方に近づき、どんな服で悩んでいるかを横から覗く。

 

「あ、試着も出来るって。優希くん、参考として着てみたら? 楓ちゃんもそっちの方が選びやすいでしょ?」

 

 サイズも確認しなきゃならないし、と先輩は続けた。

 色々着て、見てみることで分かる事もあるはずだ。どこからかカゴを持ってきた先輩が篠森の見ていた服を幾つか入れていく。

 

「悩むなら実物見た方が手っ取り早いよね?」

 

 先輩に試着室まで連れて行かれ、俺は篠森が選んだ服の袖に腕を通す。普段はパーカーとかジャージ、Tシャツなんかで済ませてるが。

 

「篠森、どうだ……?」

 

 試着室のカーテンを開ける。

 黒ジャケットと白シャツ。

 シンプルな感じだ。黒と白ではっきりとしていて、清潔感もあるような。

 

「え、と……似、合ってる」

 

 篠森の感想にホッとする。


「そうか」


 なんて思ってれば先輩が「他にも持ってきたんだから、色々着てみてよ」とカーテンを閉める。

 俺はカゴの中から取り出して、また他の服を着てカーテンを開く。

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