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第80話 午後の楽しみ

 昼食のラーメンを食べ終え、会計を終え店を出る。俺達は食事後と言うことで、ゆっくりとした速度でゲームセンターに向かって歩いていく。

 

「へえ〜……」

 

 篠森は今までゲームセンターに入る事は無かったからか、珍しいものを見る様な目で辺りを見回している。

 

「篠森、何かやりたいのあるか?」

 

 篠森は「何あるか分かんない」と眉を八の字にして答える。


「それもそうだよな」


 俺たちはゲームセンターの中を入り口から離れる様に進んでいく。

 

「ねえ……甲斐谷はいつも何やってるの?」

 

 いつもと言われても、俺は据え置きのゲームを家でやるくらいで、ゲームセンターに来ることは滅多にない。前回来たのは、金谷先輩に誘われたからだ。


「何だろうな」


 考えてみるが、前回に金谷先輩とやったのは格ゲーだったからか。

 

「……格ゲーとか、か?」

 

 俺の言葉尻に疑問符が付いているのに篠森は気がついているのか、クスリと目を細めた。

 

「そっか……じゃあ、格ゲーにする?」

 

 格ゲーをしたとして、篠森が楽しいと思えるかは分からない。俺が楽しめたとして、篠森がどうなのか。

 

「ああ……いや」

 

 俺が考える様な顔を見せたからか、篠森が不思議そうな顔をして俺を見つめてくる。

 

「俺も実際はほとんど来ないからな。もうちょっと見て歩いても良いんじゃないか?」

 

 俺は誤魔化す様に言って別の方向に顔を向ける。視界にクレーンゲームのコーナーが目に入る。この辺りで先輩が絶叫していたのだと思い出す。

 

「うん」

 

 篠森と色々と見ていれば、ホラー要素のあるガンシューティングが目に入る。これならば、特に経験などは関係なく楽しめると思うが。

 そんな風に考えながらゲームの近くで立ち止まると、篠森は「甲斐谷……?」と俺の服の裾を指先で掴みながら呼びかける。

 

「これ、やる……?」

 

 篠森に「他のにするか?」と聞くと、悩む様な顔を見せる。

 

「え……と」

 

 篠森は「ううん、大丈夫」と呟いて、一足先にガンシューティングの密閉空間内に入って行く。

 

「別に他のでも良かったんだけどな」

 

 なんとなく申し訳のない様な気もして、俺の口から僅かな困惑と笑いの混じった様な息が漏れ出る。

 俺も中に入って座面に腰を下ろす。

 

「……ん」

 

 俺と篠森は一〇〇円ずつを入れる。

 途端に不気味なゲームスタートの音が鳴り響き、俺の隣で篠森がビクリと肩を震わせたのが視界の端に見えた。

 

「わっ……!」

 

 現れるゾンビに銃口を向けて撃ち放つ。今の所、始まったばかりだからだろう。特に問題なくダメージを負う事なく進められている。

 

「ひゃっ……」

 

 背後から突然に吹いた温い風に篠森が小さく悲鳴を上げる。

 

「大丈夫か、篠森……?」


 篠森が心配になり、俺が確認すると震える声で答えが返ってくる。


「だ、だいじょぶ……」

 

 まだライフが残っているのだから途中で止めるのも、か。

 

「────ボス戦だな」

 

 お互いにライフは残り一。

 難易度が思っていた以上に高い。何度か篠森の悲鳴を聞きながら、ここまで来たが流石に残りライフ一ではどうにもボス戦には勝てない。

 

「あ……ごめんな、篠森」

 

 俺が顔を向ければ、篠森の両目が少しだけ潤んでいる様に見えた。

 

「……え、あ……大丈夫だって」

 

 篠森がぎこちない様な笑みを浮かべた。

 

「そうか」

 

 俺が気にしてしまっているのが、声色に表れていたのか篠森が俺の手を取って「ほら、他のも見よ?」と歩き出す。

 篠森は気にしてないのだろう。

 

「そうだな」

 

 俺は気にしすぎな自分がなんとなく馬鹿らしいと思って笑う。

 

「あ、これとかは?」

 

 有名な音楽ゲームを指差して篠森が俺に聞いてくる。あまり音楽ゲームをプレイする事はないが。

 

「じゃ、やるか?」

「うん」

 

 などと言ってお互いに不慣れなゲームをプレイする。どうにもスコアは伸びず、クリアに届かないことに顔を見合わせて笑う。

 

「なんか思ったより難しいな」

 

 俺が言えば篠森も頷いて、他のコーナーに向かう。

 

「ん……」

 

 箱の様な機械が幾つも並んでいる。

 女性の写真が貼り付けられた様な機械。

 

「プリクラ、か」

 

 俺は今まで使った事はない。

 俺も倉世も特に興味はなかったから、互いに誘う事はなかったし。それに前回、ここに来た時も先輩は特にプリクラを誘わなかったから。

 今までに機会という物がなかった。

 プリクラの機械横に『男性のみでの使用禁止』という文が見える。

 

「…………」

 

 俺はプリクラ機から視線を逸らして、他の場所に行こうと足を動かして。

 

「篠森?」

 

 俺は隣に居ない篠森の姿を探そうと振り返る。

 篠森は立ち止まり、プリクラ機を眺めていた。

 

「あ、甲斐谷……ごめん」

 

 少しだけ離れた距離を篠森は早足で埋めて「他に何かあるかな……?」と言う。

 

「……撮るか?」


 もしかしたのなら、篠森は。

 俺はそう考えて尋ねる。


「え?」


 俺が誘うと言うのは想定していなかったんだろう。違うなら、それで良い。


「ほら、折角だからな。俺だけだと撮れないし」

 

 篠森と一緒なら撮れるだろ。

 さっき目にした男性のみ禁止という貼り紙を指差しながら俺が言えば、篠森はポカンとした様な顔をしてから、破顔して「ありがと」と言う。

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