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第61話 明日から夏休み

 

 現在、普段通りであれば三限が始まるであろう時間。


「お前ら、早く並べ」

 

 俺たちは廊下に並ばされている。

 別に注意をされると言う事ではなく、ただ終業式という事で、体育館に移動しなければならないからだ。他のクラスの生徒も同様に廊下に並んでいる。

 

「行くぞ」

 

 先生が俺たちが並んだのを確認して、歩き始めた。

 生徒もそれについて歩く。ゆっくりと動き出した列の中で生徒たちの話し声が幾つか聞こえる。本来ならこの移動時間は話しているべきではないのだろうが、先生も細かい事を注意しようとは思えないのだろう。

 何も注意の言葉は飛んでこない。

 

「…………」

 

 体育館に入ると既に一年生が入場を終えて待機していた。俺たちも入場を終えて三年生が入ってくるのを待ち、ようやく終業式が始まる。

 開式の言葉に始まり、校歌斉唱。

 

「皆さん、先ずはお疲れ様でした。今日まで勉学に励みテストも終え、明日からは夏休みです。一年生の皆さんも……」

 

 そして、校長先生の挨拶に続く。

 ステージに上がった校長先生に向けていた視線を左右に動かして、周りを見る。欠伸をしている物がチラホラと確認できた。終業式という物が長く退屈に感じてしまうのは仕方ないのだろう。

 ようやく校長先生は「これで終わります」と締めて、ステージから降りる。

 

「以上を持ちまして、終業式を終わります」

 

 司会の教師の言葉に生徒たちはまた近くの友人と話し始める。俺の近くも同じだ。

 

「──では三年生から順に速やかに退場してください」

 

 先生の言葉に従い、三年生たちが退場していく。そんな中で見知った人が一人。

 

「何やってんだ、あの人」

 

 金谷先輩は俺を見つけて小さく右手を振ってくる。俺は会釈を返すが、先輩も流石にこれ以上の反応は返せないのだろう。そのまま流れに従って退場していった。

 

「……っと」

 

 俺も退場のために歩き始める。

 誰かの話し声が後ろから聞こえてくる。この辺りは入場の時と変わらない。

 体育館を出て教室に近づくにつれ、列という形はバラけてしまい、生徒は最早自由と言って良い状態になる。

 

「甲斐谷」

 

 俺は周りを見てから反応を返す。

 

「篠森……どうした?」

「え……と、そう。あのさ、結局、学園祭の出し物って何になったんだろうね」

 

 篠森に言われて、俺も「そういえば」と思った。未だ、学園祭で俺たちのクラスで何をやるかというのを聞いていない。

 

「分かんないよね」

 

 もう、夏休み前日だと言うのに。

 未だ動き出す事のできない現状は確かに思う所がある。他のクラスの動きは把握できていないが、どうだろうか。

 他のクラスも似たような状況なのだろうか。

 

「あ」


 篠森は何かを思い出したらしい。


「甲斐谷、まだホームルームあるから」

 

 終業式が終わって今日は終わりというわけではなく、最後にホームルームが残っている。

 俺と篠森はいつも通り別々に教室に戻る。倉世の姿は教室内には見当たらない。

 まだ戻ってきていないのか。

 そう思っていると数分程して教室に入ってきた。篠森が倉世に話しかけるのを見て、俺は視線を逸らした。

 

「終業式、お疲れさん。今から一応ホームルームなんだけどな。まあ俺の方からは特に言うことないな」

 

 先生が言うと、学園祭実行委員の女子が手を挙げて立ち上がる。

 

「すみません、ちょっと連絡があって……」

 

 彼女の言葉に「分かった」と教壇の端に避ける。

 先生からの了承を得て彼女は前に移動する。

 

「あ、学園祭実行委員です」

 

 教壇に立った彼女にもう一人の実行委員が自分もかと立ち上がり、移動する。

 

「なんで来たの?」

「えぇ……?」

 

 そんなやり取りが行われたが、彼は自分の席に戻ることなく彼女の少し後ろに控える。

 

「えーと、学園祭の出展が決まったので連絡です」

 

 先程、篠森と話していたが決まっていたらしい。いつ決まっていたのだろうか。俺には余り関係のない話ではあるが。

 

「学園祭、ウチのクラスは射的やる事になりました」

 

 全員が特に拍手といった反応もせずにいる。

 

「第一希望は他のクラスに取られちゃったので、まあ射的で頑張りましょう」


 この連絡に対する反応は薄い。

 気まずさを感じながら、困った様な笑みを浮かべながら。


「あ、以上で終わりです」

 

 と告げ、彼女はお辞儀をして教壇から降りる。

 

「……お前ら、夏休みの宿題やってても良いぞ」

 

 余った時間を自由に使って良いとの事でクラスが動き始める。とは言え、別に全員が勉強を始める訳ではない。

 学園祭の出展について友人と話し始めるのも少なくなく、或いは夏休みの予定についてだとかを話し合ったりする者もいる。

 実際に勉強をしている生徒は多くない。

 

「…………」

 

 俺も何となく、やる気が湧かずに時計を見つめてぼうっとしているだけ。ここで少しでも手をつけておけば楽になるのだと分かっていてもだ。

 特に話し相手もいない。ただ、終わるのを待つだけになる。


「ん…………だな」


 先生が自分の左腕を見て教壇の中央に立つ。


「お前ら、夏休み前最後の掃除だぞ。キビキビやれよ」


 ホームルームの時間が終わり、掃除に向かい動き始めた。



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