表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/192

第58話 夏と言えば

 

 五日間に及ぶテストが終わりを迎えた。

 やれる事はやった。

 後は結果だけだが、今回も問題ないだろうと思う。明日は休みで、終業式まで学校は残り数日。

 俺は自室でぼんやりとベッドに座っていた。先程まで点けていたゲームを消して、座り込んでいる。

 

「ただいま〜」

 

 母さんが帰ってきた。

 俺は部屋から出て、帰ってきた母さんを出迎える。

 

「おかえり」

 

 母さんは俺の顔を見てもう一度ただいまと言う。帰りに買い物をしてきたのかエコバッグを俺に渡してくる。

 

「中にアイスとジュース入ってるから冷蔵庫に入れといて」


 ずっしりと重たい。


「あと今日は冷しゃぶね、優希も手伝いなさい」

 

 中身には豚肉とレタス、ミニトマトが見えた。

 

「じゃ、アタシ着替えてくるから。あ、それまでにお風呂掃除やってても良いからね」

 

 俺は渡されたエコバッグをリビングに運び、冷蔵庫の中にジュース類を、アイスを冷凍庫の中に仕舞う。

 

「で、風呂掃除か」

 

 やってても良いと言うが、やれと言う事だろう。俺は浴室に向かいズボンの裾を上げてシャワーで浴槽の中をサッと流す。

 棚にあるスポンジを右手に握り、シャワーをかける。

 

「冷てっ……」

 

 段々とシャワーから出る水の温度が上がり、お湯といえる温度になった。スポンジも冷たさを感じる程ではない。

 

「…………と」

 

 シャワーを止めて、洗剤を左手に。浴槽に洗剤を適当にかけてスポンジで擦る。

 

「こんなもんでいいか」

 

 俺が見る限り泡は全体に付いてる。

 蛇口を捻り、シャワーを出し洗剤の泡を流す。


「よし」


 風呂掃除を終えてリビングに戻ると母さんは既に着替え終えて台所に立っていた。

 

「終わった?」


 風呂掃除が終わったか確認してくる。


「うん」

 

 母さんは俺に何をさせるか考えているのだろう。そうだ、と呟いて俺の方を見る。

 

「じゃ、玉葱切っちゃって」


 と言われても、だ。


「玉葱、どこにあんの?」


 俺は玉葱を見た覚えがなかった。


「冷蔵庫の中。一番上」

 

 俺は言われて冷蔵庫の中を探す。

 エコバッグの中になかったのは買う必要がなかったからか。

 

「一個で大丈夫?」

「うん。その間にお母さん、お肉やるから」

 

 お湯は沸かし終えたのだろう。菜箸で肉を摘んで鍋の中に入れていく。

 

「あ、母さん」


 そう言えばまだ話してなかったのだった。


「ん?」

「再来週の月曜日、ちょっと出かける」

「アタシも仕事休みだったような……何の日だっけ?」

「海の日」

 

 俺が告げると母さんは「どこまで?」と肉に火を通しながら尋ねる。

 

「友達と海に」

「……そ。じゃあアタシはお父さんとどっか食べに行こっかな」

 

 肉を鍋から皿へ取り出した。

 俺の切った玉葱を見て母さんが言う。

 

「玉葱、切ったの水にさらしといてね」

 

 母さんは盛り付け用の大皿にレタスを千切って敷き詰めていき、一先ず仕事は終わったかのようにテレビの電源を点けた。

 

「……あれ、優希。そう言えば夏休みっていつから?」

「来週の土曜日。金曜に終業式で」

 

 玉葱を切り終えて母さんの方に振り返る。

 

「よいしょ、と」

 

 母さんは座り込んで自らの肩を揉んでいる。

 

「あ、肩揉みよろしく」


 何となくさっきの動きで察していたが、やっぱりか。俺は母さんの後ろに移動する。


「はいはい」

 

 大人しく従って、今日も相変わらずに固い両肩を揉み解す。いや、解せているという実感は湧かないが。と言うのも、固い物が多少柔らかくなったからと、俺の指ではそれが分からないから。

 

「他に作らなくて良いの?」


 今回は冷しゃぶだけで良いのか尋ねる。


「ちょっとめんど臭いから。こう言う日もあるでしょ。あー……気持ちいー」

 

 仕事で疲れて、家事もしているのだから仕方ないだろう。毎日凝った料理なんて作れる訳もない。母さんの肩を揉み始めて暫くして父さんも帰ってくる。

 

「ただいま」

 

 俺たちの姿を見て二階に上がる前に仕事着のままリビングに入ってくる。

 

「おかえり」

「おかえり〜、お父さん」


 俺たちは帰ってきた父さんを見て言う。


「あ、そうだ。優希が再来週出かけるって」

 

 母さんの言葉に父さんは「そうか」と返して、肩揉みを続けている俺を見る。

 

「で、またやらされてんのか」

 

 半笑いで父さんが言う。

 

「まあ、うん」

 

 父さんは「頑張れよ」と言って着替えるためにリビングを出ていく。階段をゆっくりと上る音が聞こえる。


「その日、ちゃんと晩御飯食べてきなさいよ? お母さん達も出かけるから、多分」


 母さんは「ありがとうね」と言ってから立ち上がり、台所の方へと戻る。


「そう言えば」


 何だろうか。


「テストだったんだっけ? そっちは大丈夫なの?」

「多分問題ないと思う」


 前回と同じで手応えとしては悪くない。

 赤点と言う事はまず無いはずだ。


「そっか」


 多分、赤点でも特に反応は変わらないだろう。それは恐らく父さんも。取れば取ったで取ってしまったかと言う程度で終わるのだと思う。


「お父さん、戻ってきたわね」


 階段を降りてくる音が聞こえて、母さんは盛り付けの終わった冷しゃぶをテーブルに持ってくる。


「優希、ゴマだれとポン酢出して」


 俺は冷蔵庫の一番上を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ