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第54話 智世ちゃんリゲインパーティ

「お前ら、席につけ」


 教室で立ち歩いていた生徒達も椅子に座る。


「ホームルーム始めんぞ」


 教壇に見慣れた教師が立つ。


「期末テスト、もうすぐだからな」

 

 先生が言う。六月も下旬に入り、七月まであと両手で足りるほどとなった。七月初めにある期末試験が終われば、直ぐに夏休みがやってくる。生徒達の中には面倒そうな顔をする者がチラホラと確認できる。

 来週からはテスト勉強期間と言うことでまたもや部活動が一時的に中止となる。

 俺には関わりのない話ではあるが。

 

「各々、ちゃんと対策しろよ」

 

 先生はそう言い、他に伝える事はないのか「じゃあホームルーム終わり。気をつけて帰れよ」と締める。教室内で生徒達は帰り始めるなり、部活に行くなりと行動する中、篠森は倉世と話し始めた。

 俺はどうしたものかと思っているとスマホに通知が入る。

 

「金谷先輩……?」

 

 連絡が一つ。

 図書館近くのファミレスに来るようにとの事だ。俺がふとスマホから顔を上げると申し訳なさそうにして倉世が篠森との会話を切り上げ教室を出て行くのが確認できた。

 どうしたのだろうか。

 どうせ、また三谷光正だ。

 確認に走る必要などない。今はもう日常的に起きる些細なことを気にかけるつもりはない。

 俺は長く息を吐きながら腰を上げた。

 

「あ、甲斐谷」

 

 篠森が俺に声をかけてきて確認する。

 

「甲斐谷も金谷先輩から、連絡来た……?」

 

 スマホで金谷先輩とのチャット画面を見せてくる。内容は俺と全く同じでファミレスに来る様にと。

 どうして篠森にも連絡が入ったのか。

 

「……一緒に行くか?」


 それはよく分からなかったが、取り敢えずと俺は篠森を誘う事にした。


「うん」

 

 荷物をまとめて、いつもと変わらない様に下校する。

 

「もうちょっとで、期末テストだね」

 

 篠森が呟く。

 

「そうだな」

 

 学校を出て目的地のファミレスに向かう。

 期末テストといえば、対策に勉強をするのだが、今回も篠森と一緒に。

 そうだ、一緒に。

 

「なあ、篠森」


 篠森の方を向き、呼びかける。


「うん」


 返事を確認して、俺は続きを口にする。


「また、一緒に勉強できるか?」

 

 俺がそう誘う。

 篠森は「うん、良いよ」と答える。元々、彼女は俺に期末の時もやるかと誘って来てくれていたのだ。

 

「ありがとな」

「大丈夫だって……私も点数上がってるし」

 

 そんな話を前回のテスト終わりにも聞いた気がする。


「多分、先生役で理解が深まるんだと思う」


 篠森が笑った。


「そっか」


 俺も篠森に釣られて笑う。


「なあ」


 俺達は話しながら歩いていて、ふと気になったことを聞こうとする。

 

「そう言えば────」

 

 さっきは倉世と何を話してたんだ。

 また一緒に勉強するとかだろうか。

 質問を口にしようとして突然後ろから何か、誰かにぶつかられたのか背中に衝撃が走って前のめりになってしまう。

 

「二人、とも〜っ!」

 

 転ばない様に、と数歩進んだ先で俺は後ろを振り返った。声で誰が俺にぶつかってきたのかは分かってる。

 当然のように先程まで俺が立っていた場所に金谷先輩が立っていた。ぶつかったのは俺だけらしく、篠森は何ともない様だ。

 

「おっ、待た……せ!」

 

 先輩はファミレスに先に向かったのではないかと思ったが、どうにも違ったらしい。俺たちの後ろから来たのだから。

 

「やっと、追いついた〜……はあ、っはあ」

 

 両膝に両手をついて金谷先輩が浅い呼吸を何度か繰り返してから、大きく深呼吸をする。ここまで走ってきたのだろう。白い肌に汗が滲んでいる。


「大丈夫ですか?」


 長距離走を走ってきた様に息の整っていない先輩を心配して篠森が声を掛けるとコクコクと先輩が頷く。

 

「……何してたんですか?」

 

 篠森が金谷先輩に問いかける。

 それは俺も気になっていた。俺達が教室を出たのはそこまで早い訳でもなかった。

 

「いや〜、生徒会室、にね……」

 

 途切れ途切れに先輩が答える。

 何かを取りに行ったのだろうか。

 

「ちょっと……ふぅ。様子、見に行ってきたんだけど、変わらず……だね」


 様子を見に。

 それはつまり、だ。三谷光正と倉世が居ないかを確認しに行ったと言う事だろう。


「それは……」


 わざわざ、先輩が。


「あ〜、良いの良いの。はあ〜……わたしが気になった、だけだから、んっぐ……さぁ」

 

 俺のお願いのせいかと思ったが金谷先輩は気にするなと言って「ファミレス行こうよ、ほらほら」と俺の背中を押してくる。

 

「あの、それで今回は何で……?」

 

 それに篠森も。

 どうして俺だけではなく。

 と、俺は少し後ろにいる篠森に目を向ける。俺の背中を押すのを止めて先輩が答える。

 

「親睦、深めようと思ってね」

 

 ようやく息が整ったらしい。

 先輩がニッと笑みを浮かべる。

 

「この────」

 

 篠森が俺の隣に来る。

 自信満々の笑顔を浮かべた先輩の言葉の先を待つ。

 

「────智世ちゃんリゲインパーティの!」


 俺はリゲインの意味を思い出そうとする。


「リゲイン……」


 確か。


「そうそう、リゲイン! ゲットバック! まあ何だっていいの!」


 そうだ。

 取り返すという意味だったはずだ。

 

「今日は割り勘だー!」


 


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