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第35話 テスト最終日

 

 テストは最終日を迎え、全てが終わると下校する生徒と、久々の部活に向かう生徒に大半は分かれる。部活に入ってない俺は当然後者な訳だ。スマホを取り出して金谷先輩との連絡に備える。

 倉世を見て、どうするか。

 生徒会室には金谷先輩が居ることが分かってか、昨日は行ってない。

 

「…………」

 

 今日もそのまま帰るのか。倉世が教室を出たのを見て、俺も席を立ち扉の近くから見る。

 

「……下りた」

 

 生徒会室には行かずに帰るらしい。

 この行動は金谷先輩のお陰という物か。

 

「甲斐谷」


 呼ばれた声はすぐに誰かわかった。


「どうした、篠森?」

 

 すぐ近くに来ていた篠森に俺は尋ねる。

 

「帰る?」

「ああ」

 

 俺は倉世の後を追いかける様にして歩き始める。その隣に篠森がいる。

 俺は金谷先輩に『今日も大丈夫です』と一言送る。今日も直ぐに既読が付く。スタンプが送られてきて、俺は確認してスマホをズボンのポケットにしまい込んだ。

 

「ねえ、甲斐谷」

「うん?」

「最近さ、結構スマホ見てるよね?」

「……ああ、まあ」

 

 篠森の言う通りだ。

 金谷先輩に生徒会室に向かう様にお願いをする為に連絡は必要なため、今まで以上にスマホを使う様になった。

 

「必要だから」

 

 階段を降りていく。

 隣の篠森が俺の顔を覗き込む。

 

「誰と連絡してるの?」

「……ちょっとした協力者」

 

 別に隠す様な事じゃない、と言うのは少し違うが、篠森には教えても問題ないだろう。

 

「協力者?」

「ほら……倉世の事でさ」

「うん」

「倉世って生徒会だろ」

 

 だから、俺たちにはそこで何があるのかを探る術がない。そこで何があっても止める手立てがない。

 

「だから、生徒会の人が手伝ってくれるって」

「……そうなんだ」

 

 廊下を歩きながら、篠森は暫く考える様な顔を見せる。

 

「それって……この前の生徒会室の前で会った人?」

「……よく分かったな」

 

 俺が答えると篠森がズイと近づく。

 

「連絡先、交換したんだ」

「そりゃ、しなきゃ連絡できないし」

「だよね」

 

 篠森は顔を逸らして呟いた。

 俺は話を切り替えようと明日の予定について持ち出す。

 

「なあ、篠森。明日の事なんだけど……」

「明日……?」

「ほら、水族館行くって言ったろ?」

「あ、明日……うん」

 

 忘れてたのか。

 

「午前一〇時に駅前で良いんだよな?」

「うん」

 

 玄関で靴を履き替え扉を開ける。

 

「────待ってたよ、優希くん」

 

 女子生徒が一人、俺を待ち構えていた。

 

「何してるんですか、金谷先輩」

 

 案の定と言うか、金谷先輩だ。

 篠森が遅れて靴を履き替えて出てきて困惑してる。それはそうだ。俺は篠森と帰るつもりだったのに、金谷先輩が俺を待っていたなどと言うのだから。

 俺だってよく分からないから疑問をぶつけた。

 

「何もないんでしょ?」

 

 それは生徒会室に、と言う話であって。俺は篠森と話しながら倉世と三谷光正の動きを見張るつもりだったのだ。

 

「ありますよ。今から倉世が帰る所ですし」

「あ、そう言えば会長と智世ちゃんなら……ほら」

 

 小さくなった二人の姿が見える。

 俺はそれを追いかけたい。

 

「それに……俺、今から……篠森と帰るんですけど」

 

 明日の話も交えながら、なんて考えていたのに。

 

「わたしも一緒に帰りたいな」

 

 俺の心休まる場に入ってくるとは。溜息が漏れ出た。断るにも断りにくい。先輩だから、協力してもらってしまってるから。

 

「悪い、篠森」


 断りにくい、と言うか断りきれない。俺は篠森に振り返り謝罪する。


「や……全然大丈夫」

 

 篠森の目が俺から金谷先輩に移された。

 

「ごめんね、二人きりの時間を邪魔して」


 申し訳なさそうに笑う。


「…………」

 

 篠森は何も答えずに金谷先輩を見つめている。

 

「……全くですよ」

 

 俺が言ってやると金谷先輩は困った様な顔しながら揶揄う様に言うのだ。

 

「二人はそう言う関係なの?」

「そう言うって……どう言う関係ですか」

「いや、付き合ってるのかなぁ……って」

 

 何言ってんだ、この人。

 

「分かってるでしょ」

 

 俺と篠森は友人であって、そう言った関係ではない。

 

「違いますよ、全然」

 

 ここで話し込んでる場合ではない。このままでは倉世を見失ってしまう。

 

「そうだよね……だって、優希くんは智世ちゃんの事が好きだもんね」

 

 他人から言われてしまうと、動揺する。


「…………」


 誤魔化す様に俺は歩き始める。篠森と金谷先輩も隣に付いてくる。いや、篠森は少しだけ後ろを歩いてる。

 

「……あの」

 

 篠森とのいつもと違う距離感に迷う。


「金谷先輩」


 俺と篠森の関係について、この人がどう思ったかは知らないが。少しだけ、俺は思うことを吐き出したくなった。

 

「別に……俺が誰と帰っても良いじゃないですか」

 

 篠森は友達なのだから。

 とやかく言われたくない。俺は彼女と居るのを心地よく感じている。

 

「あ……ごめんね、優希くん。あと……篠森、さん? であってるかな?」

 

 金谷先輩が俺の左隣から顔をヒョイと前に出して、俺の右に居る篠森に話しかける。

 

「……大丈夫、です」

「──ごめんね」

 

 金谷先輩の篠森への謝罪は、俺なんかに向けるよりもずっと向き合った様な声に聞こえた。

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