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第33話 息抜きプラン

 二日目のテストが終わり、ホームルームも終わると全員がバタバタと帰り始める。

 俺は倉世の方を見ていた。

 金谷先輩に協力して貰える様になった。倉世の動向も、三谷光正の動向も今まで以上に分かるだろう。

 生徒会室に行くのなら金谷先輩が居るだけで、三谷光正は下手な事は出来ない筈だ。

 彼女が今日も階段を上っていくのが見えて、俺はスマホで金谷先輩に連絡する。

 

『生徒会室に倉世が行ったと思います』

『三谷先輩も居ると思うので生徒会室にお願いします』

 

 俺の送ったチャットには直ぐに既読が付き、スタンプで敬礼する男が送られてくる。

 

「よし……」

 

 別に何をしているかを知れないまでも、これは俺にとって充分に意味がある。

 

「ねえ、甲斐谷」

 

 階段前で立ち止まってしまった俺に篠森が声を掛けてくる。

 

「今日も生徒会室に行くの?」

「……いや、今日は帰るよ」

 

 正直、俺にできる事はない。

 残ってても待っているだけ。やれる事はないのだから。チャットで『すみません』と書き、続けて『後はお願いします』と金谷先輩に送信すると、また直ぐに既読が付いた。

 

「じゃ、帰ろ?」

 

 篠森に言われて俺も歩き始める。

 金谷先輩とのチャットにはスタンプが新たに一つ、サムズアップが任せておけと言う様に表示された。

 

「…………」

 

 スマホをポケットにしまい込む。

 これで良いだろう。問題ない筈だ。

 

「今日のテスト、どうだった?」

 

 玄関から出ると篠森が尋ねてくる。

 

「問題なかったよ」

 

 そっちは、と問い返すと「私も」と返ってくる。

 

「ま、篠森のお陰だな」

 

 勉強見てくれたから。

 多分、この後に続く残りのテストも問題ない筈だ。

 

「そっか」

 

 俺から顔を逸らして篠森は小さく呟いた。

 

「本当に、お前が居てくれて……助かってる」

 

 篠森が居てくれなければ、俺はもっと壊れていたと思う。救いようがない程のクソになって、ただのクズになって終わっていただろうから。

 

「…………」

 

 篠森は無言で俺を見つめる。

 この空気感に耐えかねる。

 

「あぁ、今のは……」

 

 何というか。

 

「大丈夫だって、分かってるから」

 

 篠森は笑う。

 分かってる。

 本当に、そうだろうか。

 

「……俺は────」

 

 もっと、説明とかがしたかった。俺は篠森に対して、何かを言いたかった。

 何か。何かというのは篠森に対してどう思っているかだ。どれだけ篠森のお陰で助かっているか。

 ただ、それが俺の口から吐き出される事はなかった。

 篠森が話を変えてくる。

 

「ね……甲斐谷、お腹空かない?」

 

 多分、言わなくて良かったのだ。


「そう、だな」


 俺の思いは友達に向けるには重たい物だと俺は分かってる。だから、言葉にしなくて良かった。話し出せば俺は自分の感情を吐き出してしまいそうになるだろうから。

 それはマズイ。

 

「はあ……」

 

 考え過ぎて溜息が漏れた。

 

「疲れてる?」

 

 篠森が心配そうに聞いてくる。

 

「いや、大丈夫。で、飯だっけ?」

 

 俺の悩みは打ち明けるべきではない。今の友達という関係を壊したくないなら尚更。篠森が居なくなるのは嫌だ。だから、共有してはならないと思う。

 

「じゃあ、ハンバーガーで良いか?」

 

 ファミレスは昨日も行ったのだ。

 三日連続は流石に無理がある。

 

「うん」

 

 隣を歩く篠森をチラリと見る。

 もっと、一緒にいたいだとか。

 離れたくないだとか。出来ることならもっと長く話していたいだとか。

 

「…………」

 

 気の許せる友人だからと言って、こんなのは少し重い気がする。

 

「もっと」

 

 気楽に生きよう。

 もう少しフラットに。


「あ、ハンバーガーってまだ夏のやってないんだ」


 スマホを見ながら篠森が言う。


「後ちょっとだろ」

「惜しかった」


 そんな事を話しながら見慣れたハンバーガーショップに入って注文して席に着く。

 

「────じゃ、テスト二日目お疲れ?」

 

 テーブルに置かれたドリンクの入った紙カップを持って篠森が言う。俺も軽く持ち上げて、別に紙コップをぶつけはしないが軽く揺らす。


「おう」

 

 そのまま、口元に運びコーラを飲む。

 炭酸が爽やかな気分にさせてくる。

 

「ねえ、甲斐谷」


 コップをテーブルに置いて篠森が呼びかけてくる。


「ん?」


 スマホを取り出していじり始める。


「息抜きの事なんだけど……こことかどう?」

 

 スマホをテーブルに乗せ、調べた場所を篠森が見せてくる。電車で一時間半くらいの場所。ちょうど良い距離。

 

「何があるんだ、ここ?」

「水族館があるんだって。イルカショーも見れるらしい」

 

 篠森が楽しそうに言う。

 息抜きを楽しみにしている様に見える。


「……イルカショーか」


 水族館に行ったのはいつだったか。

 小学生の時が最後だった様な気がする。


「篠森は好きなのか、水族館」

「……あ、え……と。久しぶりに、行ってみたい……なぁ、って」


 首裏に手を当てながら篠森は答えた。


「そうだな……」


 確かに。


「良いな、水族館」


 俺も久しぶりに行くのも悪くないんじゃないかと思えた。


「じゃあ……ここで良い?」

 

 行き先が決まった、予定よりも早く。


「オーケー。……篠森、悪いな。俺、何も考えてなくて」

「全然大丈夫だから……」


 また篠森はコーラをストローで啜り始めた。

 

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