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第27話 赤或いは、Fについての見解

「ただいま」

 

 ビニール袋を持って帰ってきてリビングに入る。

 

「ん、どこ行ってたんだ?」

 

 父さんも起きたらしい。寝巻きのままでリビングの椅子に座ってる。

 

「お使い頼まれたから、スーパーまで」

 

 俺は肉とルーの入った袋をテーブルの上に置いて、椅子に座る。

 

「……あと、オバさんとオジさんに会いに行ってた」

 

 そっちのが本来の目的な訳だが、順番は何だっていい。そこまで重要ではない。

 

「智世ちゃんとも会ったのか?」

「出掛けたって言うから会ってない」

 

 誰と何しに出掛けたのかを知ってるが、偶然の様に語る。

 

「そうか」

 

 俺は父さんに倉世に嫌われてると言ってない。当然、母さんにも。このことを知っているのは今日話したオジさんとオバさん。あとは当事者である俺たちくらいだ。

 そしてこの事を今後も、父さん達に言うつもりはない。

 

「おかえり〜。お昼にしよう、お昼!」

 

 俺が帰ってきたのを知って、母さんが階段を降りてきてリビングに入ってくる。

 

「ほら、お父さんはまず着替えて。いつまでパジャマでいるの」


 パンパンと手を叩いて立ち上がる様に急かす。


「分かった分かった」

 

 父さんがやれやれと言いたげにゆっくりと立ち上がり、着替えるために階段をのそのそと上っていく音が聞こえる。

 

「昼、何?」

「そりゃパパッと作れるのに決まってるでしょ。インスタントラーメンと昨日の夕飯の残りよ」

 

 土日休日の昼ごはんに豪勢な物は並ばないし、手の込んだ物を作ることはない。どちらかといえば夕飯の方が手間をかけてる。

 

「ほら、作って。優希、インスタントラーメン作って」


 あれ、母さんが作るんじゃないのか。


「俺が作るの?」


 何でだ。


「お母さん、掃除で疲れちゃったから。お昼ご飯作ってよ。インスタントラーメンなんてチョチョイのチョイでしょ」

 

 別に無理難題なんてものでもないから、文句を言うのも違うような気がする。大人しく母さんの言う通りにしよう。

 

「お父さん戻ってくる前に早く」


 いや、流石に。


「それは無理だって」

 

 どんな無茶振りだよ。

 インスタントって言ってもお湯沸かすのにも時間かかるんだから。

 俺はラーメンの袋を四つ持ってくる。


「よいしょっと」

 

 大きめの鍋に水を入れてコンロの上に置いて点火する。

 

「…………」

 

 俺が横目で母さんを見れば椅子に座ってテレビをつけてぼけっとしているのが確認できる。

 

「あ、卵使う?」

 

 母さんが振り返って聞いてくる。

 

「使う」


 特にトッピングはないため、卵を入れるくらいの工夫はする。


「あと何個ある?」


 冷蔵庫を開けて卵のパックを確認する。


「四個……で、今二個使うから二個」


 二個取り出して冷蔵庫を閉める。


「んー……そろそろ買わないとね」

 

 弁当用に卵を使うからか、消費は結構多いのだろう。卵を使いきれなかったと言うことはないし、完全にゼロになったのも見たことがない。

 

「頼んでくれたら買ったんだけど」

「今気づいたからー」


 母さんも気が付いてたら言ってたんだろう。


「明日、買い物に行くかぁ」


 母さんがテレビの方に目を戻して呟いた。

 明日。


「あ、そうだ。母さん。俺、明日出かけるから」

 

 明日は篠森と約束している。

 俺が謹慎中だった時の範囲の勉強を教えてくれると言う話だ。これを逃すわけにはいかない。今更、断ると言うつもりもない。彼女の親切に対して失礼な態度を取る事になる。

 

「ふーん。分かった。お昼ご飯は?」

「いらない」

「夕飯には帰るの?」

「うん」

 

 そうこう話してる内に、鍋の中がフツフツとしている。お湯が沸いてきた。

 袋を開けて麺をお湯の中に入れ、菜箸で突く。

 

「ま、気をつけなさいよ?」

「分かってるって」

 

 言っても、そんな危ないことは無いだろう。

 

「あれ、テストって終わったんだっけ?」


 俺が出かけると言ったのを遊びの約束だと思ったんだろうか。


「来週から。だから友達と勉強すんの」

「成る程ね。アンタ、智世ちゃん以外に友達いたのね」

 

 なかなか鋭い指摘をしてくる。

 確かに居た覚えがない。

 だが、今は違うのだ。

 

「いや、居るから」

 

 篠森をそう呼んでいいのならそうだろう。わざわざ確認するつもりはないが。友達と言ってもいいと思う。

 

「飯できたか?」

 

 ドスドスと階段を降りてくる足音が響く。父さんがリビングに戻ってきた。

 

「あとちょっと」


 麺がほぐれてきてる。


「何だ、優希が作ってんのか」

 

 父さんが椅子に座り込む。

 

「お父さん。明日、優希が出かけるって。友達と勉強するんだってさ」

「勉強……? なんかあったか?」

 

 何かなければ勉強しないのか。

 いや、否定はできないが。俺だっていつだって勉強勉強って考えてるわけではないから。

 

「ほら、テストよ。テスト」

「ん? テスト。ああ、そんな時期か」

 

 父さんはあまり学校の事について詳しくない。そういうのは母さんのほうが知ってる。


「ま、頑張れよ。つっても、赤点とっても割と何とかなるからな」


 父さんが欠伸をしながら言う。

 テストを目前にした息子に気の抜けた様な事を言う。


「いや、取らないからな」


 絶対に。


「別に受験にそんな影響ないだろ。指定校無くなったんだから」


 それはそれ、これはこれだから。

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