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第123話 責任感

 

 立てられた段ボールに弾があたり、倒れる。


「難易度はこれくらいで大丈夫かな……?」


 水戸部が考え込む。


「あ……一先ず、デモプレイお疲れ」

 

 散らばった銃の弾を集め水戸部が感謝の言葉を告げる。それから合掌し「ごめんね。本当、あとちょっとだから。てのは、明日も授業あるから……」と少し遠回りをして片付けを手伝ってくれと言っている。

 

「…………」

 

 俺は射的台に手を掛ける。

 男子がだらだらと片付けを始める。


「よいしょ……っと」


 空き教室に全てをしまい込み、教室に戻れば残っていた女子が机を元の位置に戻している。

 全てが終わったのは午後六時を過ぎた頃合いだ。

 

「よし、ありがと。これで片付けも終わったね」


 デモプレイをする前とほぼ同じ状態となった教室を眺め、水戸部が言う。


「じゃあ、今日はこれで解散です。皆さん、お疲れ様でした!」

 

 水戸部が終わりを伝えれば、教室に残ったクラスメイトがぞろぞろと帰り始める。

 

「水戸部」

 

 教室には俺と篠森、そして水戸部がまだ残っていた。俺は、自身の席に戻った水戸部に話しかける。

 

「どうしたの?」

「いや……どんな感じだ?」

「どんな感じってのは?」

「学園祭準備の進みの話だ」


 今回のデモプレイではどのあたりまで進んだのか。準備は順調なのか。俺からは未だ不透明なままだ。

 

「うーん……順調、って程でもないけど、そこまで急がなきゃって訳でもないって感じ」


 何とも曖昧に思える答えだ。

 ただ、その間であると言うのなら。


「……普通、なのか?」

「そうだね。進みとしては普通かな。私はそう思ってるんだけど」

 

 道具は一応揃っていて、組み立てにデモプレイも行った。後は適切な難易度になる様にデモプレイを参考にしながら的を作り、的のポイントを決めていき景品用のお菓子の買い出しをすると言った所、だと。

 

「まあ、二週間あれば間に合うと思うよ」


 この二週間、というのは俺たちに残された残りの準備期間だ。実際は一五日。登校日のみと限定すれば、残りは九日。

 水戸部の言う二週間というのは、その九日間の事の筈だ。


「そうか」


 そこで間に合うのだと。


「まあ、いざとなったら泊まり込みかも」

 

 それは、大丈夫なんだろうか。

 俺が黙り込んでいると水戸部が「あはは……流石に無理だって。泊まり込みとか先生から許可出ないし」と笑う。

 

「……だよな」

 

 泊まり込みとなれば多くの問題が存在する。条例や法律的な問題もあるだろう。それに何か間違いが起こらないとも限らない。

 そんなリスクを教師が許可する筈がない。

 

「間に合わないなんて事にはしないから」


 水戸部が真っ直ぐに俺の目を見つめてくる。


「今の予定で無理そうなら、どこかは削るし……少なくとも射的に決まった以上、その形にするつもりはあるよ」

 

 そう言う、水戸部は真剣な顔をしている。

 この言葉に冗談の要素は無いんだろう。

 

「間に合わせる為にも、甲斐谷くんとか」

 

 チラリと水戸部が篠森の方に顔を向けて。

 

「篠森も」

 

 呼ばれたと思ったのか、少し離れた場所にいる篠森が水戸部の方に振り返り不思議そうな顔をする。

 

「それに他の人にも手伝って貰うんだよ」

 

 そう言ってから水戸部が少し照れ臭く感じたのか顔を綻ばせ、目を伏せる。

 

「あー……まあ、そういう事だから。まだ色々とよろしく」

 

 水戸部は話を切り上げ、荷物を纏めて「じゃあね、先に帰るから」と教室を出て行ってしまう。

 

「……水戸部、責任感強いんだね」

 

 篠森がリュックを背負い水戸部が出ていった扉を見ながら、俺の方にゆっくりと近づいてきながら呟く。

 

「確かに、そうだな」

 

 買い出しに行くのも、荷物を運ぶのも。積極的に行動しているのは、篠森の言う様に責任感が強いのだと思える。

 

「実行委員だから、かな」

 

 もう一人、実行委員である男子がいる筈だ。ただ、彼は中々姿を見せない。

 その為、現状クラス出展の準備のほとんどを水戸部が牽引している。

 

「……かも、な」

 

 もう一人が中々に部活で忙しいのかもしれない。そう言うこともあり、余計に水戸部に責任がのしかかっているのだろうか。

 

「俺も言われた通りに手伝わないとな」

 

 水戸部の言葉を思い出し、俺がそもそもで水戸部に言った事をも思い出す。

 

「言質、取られてるしな」

 

 それは大した理由でもないか。

 

「そっか」

 

 篠森が「私も……頑張る」と呟く。

 

「おう」


 俺はふと壁時計を見上げる。


「帰るか」

 

 流石に教室でダラダラと話している訳にも行かない。時刻は既に六時を回っているのだ。外は既に充分過ぎるほどに暗い。

 

「話は帰りながらでも出来るし」

「そうだね」

 

 俺も鞄を持ち教室を出る。

 玄関に向かえば、幾つかの外履きがあり部活のある者がまだ学校に残っているのが分かる。

 

「倉世は、もう帰ってるな」


 倉世の下駄箱には外履きがない。


「あ、本当だ」

 

 篠森も気がついたらしい。

 俺は自分の靴を入れ替える。

 外履きを履き、玄関の扉を開き篠森と一緒に外に出る。微妙な時間帯というのもあり、玄関近くに他の生徒は見当たらない。


「ね……帰ろ」


 鳥の鳴き声が響く。


「ああ」


 足取り、緩やかに。

 


 

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