第119話 Report
「二人ともじゃあね」
と、先輩が言う。
「先輩、また明日」
「金谷さん、また明日」
俺たちの挨拶を聞いて先輩が去っていく。
「甲斐谷、またね」
篠森の家まで一緒に行き。
「ああ、篠森。またな」
家の少し前で挨拶を交わし。
帰りは前回と同じか、少し遅い時間。空は既にだいぶ暗い。
家に着いて扉を開ける。
「……父さん」
「ん」
俺の呼ぶ声か、それとも扉の開いた音に反応してか父さんが振り返る。
「ただいま」
父さんは丁度、靴を脱いでいる所だったらしい。
「ああ、優希。おかえり、今日も学園祭のか?」
この時刻になった理由を推測して、父さんが聞いてくる。
「うん」
俺が頷くと「そうか」と呟き。
「そっちも大変だな」
労いの言葉をくれる。
「仕方ないっての」
仕方ない、と言うかか。
俺も靴を脱ぎ、父さんに続く形で家の中に上がり、リビングに居る母さんに一言「ただいま」と声をかける。
「おかえり〜」
と、母さんの声が返ってきた。
俺は階段を上り、制服から着替える為に二階に向かう。父さんは一度、リビングの方に向かう。
「………っと」
鞄を置き、制服から着替えてる途中で階段を上ってくる足音が響く。多分、父さんだ。着替える為に上がってきたんだろう。
俺が着替え終えて一階に降り手を洗ってから、リビングに行くと父さんの姿は見当たらない。
「ん、優希。今日は?」
キッチンに立つ母さんから質問が飛んでくる。何をしていたのか気になるのだろう。
「学園祭の準備。買い出しに行ってきた」
母さんは疑問に思ったのか、小さく唸る様な声を出してから「ん? 先週も行ってなかった?」と聞いてくる。
「他にも必要なのが出たんだよ」
母さんは「そうなの」と呟く。
「そう言えば、先週もちょっと思ったんだけど買い出しって一人?」
「いや」
俺は水戸部から聞いた事を思い出して答える。
「買い出し行く時は、基本は数人で行けってさ」
俺は冷蔵庫を開き、飲み物を探しだす。
「お金の管理とかもあるから、出来る限り一人では行くな、と」
食器棚から取り出したコップに注ぎ、半分ほど飲んでから一度テーブルに置く。
ペットボトルを冷蔵庫の中に戻す。
「へ〜、そうなの。じゃあ、二人で?」
「三人。クラスの実行委員とあともう一人」
俺は答えながら椅子に腰を下ろす。
「そ」
「先週もだよ」
「で、その二人ってのは男の子?」
俺は首を横に振り「俺以外は女子」と答えると、母さんは「そうなんだ」と相槌を打つ。
「女子二人ね。なら、優希は荷物係とか?」
「……まあ、そんな感じか」
今日も荷物を持つのを代わったのだから、そう言えなくもない。多少、強引に係というのを決めるのだとしたら、予算管理係が水戸部、先生から予算を借りるのを円滑にする信頼・信用係が篠森、荷物係が俺と言った感じか。
「でも、荷物って言ってもそんなに重くないから」
今日買ったのだって紙とボンドくらいだ。学校に通うよりももしかしたら荷物の重さは大した事がないかもしれない。
「ふーん」
「……まあ、そんな感じ」
これで、母さんには今日の事は大体伝え終えただろうと思う。
「テレビ点けるけど」
「うん」
俺が母さんに言ってからテレビのリモコンを右手に持ち電源を入れる。
母さんが料理を続けているのを横目に、俺はテレビを点ける。時刻は六時を回る。俺は適当なチャンネルにして、画面を見つめていた。
「優希、今日テレビ何やるって。ちょっと教えてちょうだい」
母さんが俺に聞いてくる。
「ああ……と」
一度番組表にして何が入るのかを確認し、母さんの興味のありそうな番組名を読み上げていく。
読み上げていると、ある番組で母さんの琴線に触れたのか。
「それ何時から?」
「七時から」
「じゃあチャンネル、そこにしといて」
母さんからの注文があり、俺も特に今入っている物を見続けていたいとも思っていなかった為、チャンネルを変える。
数分ほどして階段を下りてくる音がする。
「優希、もう少しで出来るから準備手伝って〜」
俺は立ち上がって食器棚の方へと向かう。
「どれ出せば良い?」
「まず大皿ね、あとお茶碗」
母さんに指示された通りに大皿を持って行き、茶碗を三つ手に取る。
「お疲れ」
父さんがリビングに入ってきた。
「あとちょっとだから。優希とご飯用意して待ってて」
「ん、分かった」
父さんが返事をしてから、俺の居る炊飯器の前に来る。
「母さん、どれくらい食べる」
父さんの質問に調理が終わったのか、コンロの火を止めてから「アタシはそんなに多くなくて良いや、いつも通りね」と。
「いつも通りな」
父さんが母さんの分と自分の分を装ってテーブルに置き、座り込む。俺も自分の分を用意して同じ様に。
母さんの方も料理を終えたのか、今日は麻婆豆腐らしい。大皿に移してテーブルの真ん中に持ってきた。
「あ、お皿ね。あとレンゲ」
取り分ける用の皿を人数分とレンゲを一つ持ってきて、母さんも漸く席に着いた。
「じゃ、いただきます」
父さんが手を合わせる。
「いただきます」
俺がそれに続けて挨拶すると、母さんも「いただきます」と口にする。




