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第117話 追加

 ケーキを食べに行ってから二日。

 放課後になり、水戸部が話しかけてくる。


「お疲れー」


 俺の真正面に水戸部は立った。

 荷物は特に持っていない。

 

「あのさ……甲斐谷くん、絵とか描ける?」

 

 突然の質問に疑問を覚えながらも俺が「人並み程度には」と答えれば、考えるような顔を見せる。

 

「んー、人並みね。この人、俺よりも絵上手いって人とか知らない? あ、クラス内でね?」

「確か……倉世ならそれなりに描けたと思うけどな」

 

 何度か倉世が絵を描いているのを見たことがあるが、中々上手かった気がする。とはいえ、今ではそんな姿を見ることはなく、声すらもほとんど掛けられていないのだが。

 

「水戸部」

「ん?」

「何で、絵が描けるか聞いてきたんだ?」

 

 そもそもの疑問を口にすると、水戸部は「射的の的がただの段ボールってのも味気ないし」と教えてくれる。

 

「それでキャラクターとかを的に描いて……って言う事か」

「そうそう。まあ、そうなると画用紙って言うか、何かデカい紙あるじゃん? そういうのとかも買った方がいいかなっては思うけど」

  

 段ボールに直接描いても、確かに分かりづらいか。となると、また買い出しに向かう事になるのだろうが。

 

「絵を描けるってんなら、美術部とか。居ないのか?」

 

 俺はクラスの事に明るくないが水戸部はどうだろうかと思い、聞けば微妙な表情が返ってくる。

 

「それなんだけどさ、ウチのクラスにも居るには居るんだけど……まともに美術部してないらしくてさ」

 

 所謂、幽霊部員というやつだ。

 入学してから部活に入ったものの、やる気がなく。辞めようにも退部届の提出が面倒だと形ばかりは入ったままになっているらしい。

 

「まあ、でも美術部だし。一応、確認したんだけど断られて。で、倉世ね……じゃあ倉世にも確認、ってもう帰ったか」

「成る程、な」

 

 教室には既に倉世の姿が見当たらない。

 

「それで、さっきの話の……紙の方はどうするんだ?」

「あー。今週中には揃えたいし、別に甲斐谷くんが良ければ今からでも買いに……お、篠森も居るね」

 

 教室に残っていた篠森を見つけ水戸部が席に近づいていく。俺もその後に続いて、篠森の方へと。

 

「水戸部?」

 

 篠森が正面に立った水戸部を見上げる。

 

「篠森、今日って時間大丈夫?」

 

 篠森が水戸部に向けていた目を、俺の方にも向ける。今の水戸部のたった一つの確認だけで察したのか。

 

「買い出し……?」

 

 篠森が水戸部に聞く。

 

「そうそう」

「うん、大丈夫」

 

 じゃ、一緒に行こ。

 と、水戸部が誘う。

 前回もそうだったが、また色々と担任に言われても厄介だと思ったのだろう。

 

「失礼します」

 

 俺だけでなく、篠森を誘ったのはそう言う事だろう。

 扉をノックして順に入っていく。

 俺が最後で、職員室の扉を閉める。

 

「────さて、お金も借りれたし」

 

 職員室から出て前回と同じ封筒を手にしながら水戸部が「行こっか」と歩き出す。水戸部が中身を確認する。


「大丈夫か?」

「ん? ああ、多分大丈夫」


 水戸部は答えながら封筒を制服のポケットに仕舞い込む。

 

「今日もホームセンターか?」

 

 紙を買うならスーパーよりも確実だろう。

 

「だね。で、的作るのに紙買うとして後何必要かなぁ……」

 

 後は。

 

「ボンドとかはどうだ?」

「あ、ボンド」

 

 階段を水戸部を先頭に下りながら。

 

「紙を段ボールに貼るのに使うんじゃないか」

 

 別にガムテープでも何とかなるかもしれないが。

 

「ああ、そうだね。じゃ、今日のところは紙とボンド……あ、あとペンかな。ほら絵描く様に」

 

 篠森が首を傾げた。

 

「絵……?」

 

 そう言えば、篠森にはどうして買い出しに行くのかをまだ説明していなかった。

 

「的にキャラクターとか描くんだと」

 

 俺が端的に説明し、水戸部に目をやるとコクコクと首を縦に振っているのが分かった。篠森も「それで……」と納得したように呟く。

 

「篠森の知り合いに絵、描ける人とか居ない? 甲斐谷くんにも聞いたんだけどさ」

 

 そう言ってから水戸部が「今の所、候補は倉世なんだよね」と付け足す。

 

「倉世……」

「うん。甲斐谷くんがね、倉世が凄い絵上手いって」

 

 そこまでは言ってない。

 

「私も倉世ぐらいしか知らないかな」

 

 水戸部が悩ましげな顔を見せてから、仕方ないかと表情を緩め、力の抜けたような笑みを浮かべる。

 

「他にも居たら良かったんだけど……倉世にはどっかでお願いしよっと」

 

 玄関で靴を履き替える。

 外に出れば、制服姿がチラホラと。

 

「…………」

 

 俺がスマホを取り出して時間を確かめる。

 

「今、何時?」

 

 俺の行動を水戸部は見ていたのか。

 水戸部の声に篠森も俺の方に顔を向ける。

 

「四時ちょっと過ぎくらいだ」

 

 父さんと母さんに連絡をするのは七時を過ぎた場合だ。それまではまだ三時間もある。どうせ今日も買い出し程度で終わるだろう。連絡の必要はないように思う。

 俺はスマホをポケットの中に戻す。

 

「じゃあ、五時までには帰れるかな、学校に。多分ね」

 

 なら家に着くのはこの前と同じくらいだろう。

 

「そうだな」

「何の問題も無ければね」


 と言うのは、単に人身事故だとかの話だろう。起こらないとは思うが、気をつけるに越したことはないか。

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