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第111話 家族団欒

 

 家に着く頃にはすっかりと辺りは暗くなり、赤い空も遠くに細く見える程度に。もう直ぐ完全な日没だ。

 

「ん……優希、今帰りか」

 

 俺が帰ったタイミングと丁度、父さんも。玄関前で合流する。俺がスマホを見れば時刻は六時。確かに父さんが帰ってくる時間だ。

 

「ああ、うん」

 

 聞かれるかは分からないが、理由も言っておく。

 

「学園祭の準備で」

 

 俺がスマホの電源を落としポケットに戻しながら言えば「そうか」と考えるような顔をして。

 

「まあ、頑張れよ」

 

 父さんが玄関の扉を開いた。

 俺も一緒に家の中に入り「母さん、ただいま」と言う父さんに続き、ただいまと伝える。

 

「おかえり〜……二人一緒?」

 

 母さんがリビングから出てきて、物珍しそうに俺たちを見る。

 

「お父さん。優希の事、迎えに行ってあげたの?」

 

 帰り道のついでに、と。

 母さんの疑問に直ぐに父さんは首を横に振って「いや、帰りの時間がたまたま一緒だったんだ。さっき、玄関前でな」と答える。

 

「そう? なら優希の帰りが遅かったのね。優希、何してたの?」

 

 俺と父さんは靴を脱いで。


「ん、ああ……と」


 俺が答えようとして。

 

「学園祭の準備だと」

 

 代わりに父さんが答えてしまう。

 別に俺が答えたいと言う訳でもなかったから、気にはしないが。

 

「へ〜、学園祭。まあ……朝、段ボール持ってったりしてたものね。でも、あまり遅くなるなら連絡はしなさいよ」

 

 心配するから、と母さんに言われて「分かった」と返そうとして、一つ聞いておく。

 

「具体的にはどれくらいで?」


 遅くなると言うのはどれくらいの時刻を指して言うのか。今日のこのくらいの時間はどうなのだろうか。


「そうね……七時過ぎになるってなったら?」

 

 母さんとしてはそんな感じらしい。父さんはどうなのかと、母さんは目を合わせる。

 

「そう、だな……まあ、七時過ぎだな」

 

 なら、今度からは気をつけよう。


「了解」


 帰宅部の俺が、何の連絡もなしに七時過ぎの帰宅となれば父さんと母さんが心配するのは当然か。

 

「その時は、母さんに連絡するから」

 

 一先ず、着替えに行こうと。俺が階段を上ると、父さんも直ぐ後ろに付いてくる。

 

「…………」

 

 鞄を置き、さっさと着替えを終えリビングに戻る。母さんも玄関から戻っていたようで、キッチンに立っている。

 

「もう出来るから」

 

 俺は特にすることもないだろうと椅子に腰を下ろし、何とはなしにテレビの電源を点ける。特に何か、これと言って観たいものがある訳でもないが。

 母さんが「学園祭の準備、どう?」と調理を続けながら聞いてくる。

 

「……よく分からない」

「そ」

 

 俺の答えに対して、短く言ってから「で、今日は何してたの」と質問を投げかける。

 

「ほら、準備って言っても色々あるでしょ?」

 

 質問に補足的な説明をする。

 

「持ってった段ボール、使った?」

「それはまだ。今日は買い出しに行ったんだよ。段ボール使うにも、カッターとかが必要だから」

 

 ホームセンターまで。

 俺の答えに「買い出し……だから遅かったのね」と母さんは納得した様に呟いた。

 

「……今日のご飯は?」

「豚肉にタレかけて焼いたのと、あと味噌汁」

 

 俺の質問に母さんが答えた直後、キッチンから肉を焼く音と匂いがしてくる。

 

「足りなかったら、自分で作りなさい」

「大丈夫だって」

 

 と、話していれば階段を下りてくる足音が響く。父さんも着替え終わったのか。リビングに入ってくる。

 

「ん……できたか?」

 

 父さんの言葉に「今ね」と母さんが答え、キッチンからフライパンを持ってきて、鍋敷きの上に置く。

 

「優希、味噌汁装って。アタシがご飯やるから。お父さんはお皿ね」

 

 母さんに言われた通りに。

 味噌汁用のお椀を三つ。その三つに適当な量をお玉で鍋から掬い入れる。最初に父さんの分をテーブルに持っていく。

 俺と母さんの分をテーブルに持っていけば、他の準備は既に終わっていた。

 俺も椅子に座り直し。

 

「いただきます」

 

 掌を合わせた。

 父さんと母さんも同じ様に「いただきます」と言ってから食べ始める。

 流れるテレビから土曜日に放送される番組の予告が流れる。

 土曜日。

 

「あ、母さん、父さん」

 

 そういえばまだ言ってなかった。

 まあ、まだどちらかに確定した訳でもないのだが。一先ずは伝えておこうか。

 

「うん?」

 

 母さんが相槌を打ったことを確認してから「土曜日か日曜日にちょっと出かけるから」と伝える。

 

「学園祭の?」

「いや、それとは……まあ」

 

 曖昧に誤魔化す。

 そうしてしまったのは、学園祭の、と言ってもおかしくはないのかと思って言葉に詰まりかけたからだ。

 

「とりあえず土曜か日曜ね」

 

 母さんは記憶する為にか呟く。

 まだ細かい事は決まっていないが、少なくともどちらかに入るはずだ。

 

「分かったわ」

 

 母さんも父さんも特に俺が出かけると言うのを止めるつもりはないらしい。まあ、そうなるとは思っていたのだが。

 

「──ごちそうさま」

 

 食器を流しに片して、リビングを出ようとすると「優希。お風呂、もう入れるわよ」と母さんが言う。

 俺は「ん」と答え、自分の部屋に向かう。風呂に入るにしても着替えが必要だ。

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