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第110話 Return

 

 今は二人だ。


「なあ、篠森」

 

 水戸部はレジにいる。

 俺と篠森は水戸部が買い終えるのを待っている。篠森に話しかける。

 

「どうしたの……?」

「いや……お前も来るっての知らなくてな」

 

 篠森の返答を聞いてから俺は言う。篠森は「あ、そうだね……ごめん」と謝ってくる。この謝罪の理由は俺に買い出しに一緒に来ると言う事を伝えていなかった、といった所だろうか。

 

「いや、別に責めてない……それに、俺も篠森に何も言ってなかったしな」

 

 今日の買い出しの事については、俺も篠森と同じだ。伝えようとは思っていたが。


「お互い、タイミングなかったしな」


 などと話していれば。

 

「あ……ほら、水戸部戻ってくるぞ」

 

 会計を終えて戻ってきた水戸部が、封筒の中にお釣りの小銭とレシートを入れ「オッケー、お待たせ二人とも」と告げる。

 

「その袋、持つか?」

 

 水戸部が右手に持つ、ガムテープとカッターの入ったレジ袋に目を落としながら俺が聞けば「いや、別にそこまで重くはないんだけど……」と言いながらも差し出してくる。

 

「ん……じゃあ、よろしく甲斐谷くん」

 

 俺が受け取ったのが分かってから水戸部は持ち手を握る手を緩める。確かに水戸部の言う通りだ。ガムテープとカッター程度では重たいという感じはない。

 俺に袋を渡した、水戸部は自動ドアを抜けた直ぐの場所で空を見上げていた。

 

「お、夕焼け……」

 

 水戸部の声に、俺も顔を上げる。

 外に出れば空は赤く染まり、太陽も落ちつつある。

 

「最近日、短くなってるよね」

 

 九月と言うのもあり、段々と日の入りも早くなって居るのか。少し前まではこの時間はまだ青空が望めたが、今はもう夕暮れ時。

 

「九月だし……夏も終わりだ。もう秋かな」

 

 しみじみと水戸部が言う。

 少しずつ、夜が長くなっている。

 

「まだ、ちょっと暑いけどな」

 

 俺の言葉に水戸部が「確かに」と頷く。

 

「まだちょっとアイスとか恋しいよね」

 

 それも分かる。

 それに俺としては夏が終わりつつあると言う感覚はしても、秋が始まったという感覚はまだしない。

 

「あー、何か言ってたらアイス食べたくなってきた……よし。二人とも、早く帰ろ。アイス食べたいし」

 

 水戸部がそう言って歩く速度を早める。俺と篠森もその後を追いかけた。

 

「────しっかりレシート貰ったか?」

 

 学校に帰ってきて、最初に向かったのは教室ではなく職員室だ。

 担任に予算を返す。

 封筒の中身を見て、レシートがある事を確かめて引き出しにしまい込む。


「で、甲斐谷が持ってんのが……」


 俺の右手にあるレジ袋をチラリと見る。

 

「今日はこれで終わりか?」

 

 先生の確認に、俺と篠森は水戸部の方に顔を向ける。

 

「はい、今日はこれで」

 

 水戸部の返答に先生は「そうか。まあ、気をつけて帰れよ」と一言。俺たちは職員室を出て、買い出しの荷物を置くために空き教室に入る。

 

「水戸部。袋、ここで大丈夫か?」

 

 俺が持ってきた段ボールの上にレジ袋を置く。水戸部は「適当でいいよ。分かればいいから」と。

 

「うん、二人ともお疲れ」

 

 一通りの仕事を終え、教室に戻ったところで水戸部が言う。

 

「今日はありがとね」

 

 これで解散、と言う事で良いんだろう。

 水戸部は荷物を纏め、帰りの準備を既に終えたのか。

 

「また、何かあったらよろしく。じゃあね、また明日」

 

 と、一足先に教室を出て行った。

 俺も鞄を持ち上げ、篠森がリュックを背負ったのを確認して廊下に出る。既に廊下には水戸部の姿は見当たらない。

 

「……俺たちも帰るか」

「うん」

 

 階段を降りていき靴を履き替え、外に出る。

 空はさっきと変わらない赤色をしている。いや、少し暗くなっているか。俺はスマホを取り出して時間を確認する。

 既に午後五時を回っている。

 

「篠森」

 

 俺は隣を歩く篠森に呼びかける。

 

「うん……?」


 顔を上げた篠森に。


「今日、どっか寄って帰るか?」

 

 俺が聞けば、ホームセンターが戻ってくる時に水戸部が言っていた事を思い出してか、倉世は「もしかして……アイス、食べたくなった?」と問い返してくる。

 

「……なのかもな」


 それは少なからずあるかもしれない。

 今は少し、暑さも感じている。

 ホームセンターから早足気味に帰ってきて、少しばかり汗をかいたか。


「じゃあ、コンビニ……寄る?」

 

 何となく、言ってみただけのつもりだったが。


「そう、だな」


 俺が先に聞いた筈だと言うのに、篠森に言われるとは。

 少しおかしくて笑ってしまう。

 

「……そう言えば」

 

 篠森に確認する事があった。

 俺が思い出した事を話そうとして呟くと、篠森は首を傾げる。

 

「朝に先輩に聞かれてな」

 

 土曜日か日曜日、どこに行くか決まったか、と。

 篠森にその事を伝えれば、遠慮気味に首を横に振り「ごめん」と謝られた。

 

「あ、いや大丈夫だ……そうか」

 

 まあ、少しばかり仕方がないと思うのだ。こう言った場合は、大概先輩が決めていたから。俺たちは先輩に言われた事に付き合っていたから。


「甲斐谷は?」

「俺は、特には……」

「そっか」

「……悪い」


 俺が一言謝れば篠森は「大丈夫」と返してくる。

 

「あ、コンビニ」

 

 篠森の声が響いた。

 

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