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第11話 不在着信アリ

 風呂上がりにスマホを見るとどうにも篠森から通話があったらしい。時刻は八時過ぎ。俺は篠森に折り返しの通話をかける。

 

「もしもし、篠森?」

『もしもし、どうしたの?』

「篠森が掛けてきたんだろ」

 

 俺はベッドに座り込む。

 

『……冗談』

「それで、どうしたんだ。倉世とは仲良く出来てるか?」

 

 俺が訊ねると篠森は唸る様な声を出した。どうにも芳しくないのか。

 

『仲良くなれないことはない、と思うけど……どうにも違和感があって』

「違和感?」

『ほら、あのさ……』

 

 分かってはいたんだけどさ、と篠森が歯切れの悪い様に言う。

 

『私の知ってる倉世とイメージが合わないから』

 

 篠森の知ってる倉世と認識が合わないのは仕方がないだろう。三谷先輩の事以外を覚えていないんだから。

 

『倉世って……甲斐谷の事ばっか話してたイメージしかないや、そう言えば』

「俺の事ばっか……?」

『最近だと誕生日近づいてるから、今年も楽しみだって言ってたし』

「…………そうか」

 

 楽しみにしてくれてたと言うのに。全部がなくなった。サプライズの意味も何もかも。しまいには関係が根こそぎに。

 

「どんなこと話したんだ?」

『……あんまり話せなかった』

「何だそれ」


 何かしらの会話はあったんじゃないのか。


『今までと話すことが違いすぎると私だって置いてかれるし、私からも何話したら良いかわかんないから』

 

 篠森の倉世とまた友達になるという計画は上手く進んでるとは言い難いみたいだ。別に俺は時間が掛かっても良いと思う。期待していないといえば嘘にはなるが、篠森と倉世が友達に戻れるのならそれが良い。

 

「別に気負わなくて良いと思うぞ。というか、原因知るために仲良くしようとすると難しいんじゃないか?」

『そう、かも』

「それにまだ一日だけだろ? 時間はある」

『……私は倉世の記憶が戻るなら一刻も早く戻ってほしいって思ってる』

 

 それは俺もだ。

 時間はあるなんてのは出まかせみたいな物でしかない。

 

「打算が入り込んだら……」

 

 関係は脆くなる。

 三谷先輩との関係について探りを入れるために仲良くしようとするのは篠森にとってのリスクだ。

 

『でも、記憶が戻れば』


 可能性の話なら、あり得るものは考慮すべきだ。俺はオバさんと約束したけど、絶対に倉世の記憶を戻せるかが分からない。

 オバさんだってそれは分かってるのかもしれない。


「……それが分からないから、篠森には気をつけてほしい。俺はもう嫌われてるみたいだし、問題ないけど……お前は違うだろ」

 

 篠森はまだ嫌われてない。

 だから、普通の友達に戻れるかもしれない。記憶が戻ったとしても、考えたくもないが仮に戻らなかったとしても。

 

『分かった』

「んじゃ、そう言うことで。倉世と仲良くやってくれ。あと……そうだ、俺の方から言えるのは、やっぱり三谷先輩が怪しいってことだ」

 

 オバさんの話が根拠だ。

 一昨日の夜からと言うなら、それは俺が次の日、つまり昨日に倉世と会う前の話だ。一昨日の放課後まで問題がなかったと言うのは俺も篠森も分かってる。

 

『三谷さんが』

「知ってんのか?」

『生徒会長じゃん。そりゃ知ってるよ』

「いや、内面的な話だよ」


 俺だって知ってる。

 三谷先輩が生徒会長で、倉世も同じ生徒会だ。倉世と三谷先輩の繋がりはそれくらいだと思う。俺が知っているのはと注釈が付くけど。


『ん……倉世が言うには万能な人で、性格も優しいんだって』

「……へえ」

『怒ってない?』


 不安そうな声で篠森が尋ねてくる。


「いや別に」

『嫉妬してるでしょ』

「……そんな訳」

 

 と口に出しかけて思い悩む。

 少し前までなら三谷先輩に嫉妬する事はなかった。俺は倉世の幼馴染であると言う点に誇らしさを持っていた。だが、それが失われ、彼女の隣を三谷先輩という男に奪われた。

 嫉妬と言う以上に、怒りというのが正しい。妬ましいとかではなく、単純に殺意が芽生える様なこと。

 

「…………」

 

 嫉妬ではない。

 だが、暗い感情が今確かに湧いたことを否定できず、俺は口を閉じた。


『いきなり黙らないでよ。ごめんって』

「ん、ああ……そうだな」

 

 そうだ。

 ネガティヴばっかで居られないんだった。良くない方向に流れてしまうから。

 

『大丈夫なの?』

「まあ……ちょっとイラッとはしてるけど」

『うっ……ごめんなさい』

「別に篠森にじゃないって」

 

 俺が腹が立ってるのは三谷先輩にだ。篠森は何も関係ない。


「もう、この話は止めだ、止め。篠森も気にしないでくれ」


 これ以上、この話を広げても良くない。俺の精神的にも。


『……うん』


 篠森が短く頷くと、直ぐに別の話を切り出す。

 

『そうだ』

「うん?」

『ゴールデンウィーク明けたらさ、また甲斐谷の家に行っていい?』


 ゴールデンウィークじゃないのは俺の親と鉢合わせるのを危惧してか。確かに友達の親と会うのは気まずいだろう。しかも友達が異性となれば尚更に。


「分かった。楽しみに待ってるよ」

 

 俺も暇だし、話し相手が欲しいってのもあった。謹慎中と言えど来客があるのは仕方ないだろう。


『じゃあ、おやすみ……甲斐谷』

「またな、篠森」


 通話が切れる。

 数秒、俺はぼうっとスマホを見つめていた。


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