帝国皇子付きの憂鬱6
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試験中のヴィアラクテア王国大使のリアクションも伝えると僕が感じたものと同じ印象を彼も抱いたようだ。
彼等がそう遠くないうちにまた侵略戦争を再開するのでは?と考えたのは僕だけではない。
現に帝国の第2軍隊長も来賓の貴族に紛れてやって来ていた。
ガレリア帝国軍はその役割によって大きく第1から第5まで軍隊がある。
第1軍隊は皇城とその周辺の警護全般を担当し、第2軍隊は諜報活動など情報収集から裏では規律違反の粛清まで行う。
第2軍隊長は軍としての仕事の傍ら外交官の護衛なども担っているので国の顔として他国へ赴く機会も多い。
よって今回の入国はヴィアラクテアから来る大使の動向をチェックする意味もあったのだろう。
第1実技試験では観客は3つの会場に分けられていたのにちゃんとヴィアラクテアの大使と同じ会場へ入っていたのは流石と言える。
来賓室のそこら中で光り輝いている高価な装飾やSSランク鉱石を加工して嵌め込んだ花瓶、石像などの調度品を見ながら部屋の構造を確認した。
今は試験中で外部の人間と接触は出来ない状況なので表立って彼を護衛出来るのは一緒に試験を受けている僕くらいだからだ。
勿論グレイも感知魔法である程度の構造や経路を確認しているはずなので、あくまで僕のは念の為だ。
自衛の術は一通り学んでいるので彼を過保護にし過ぎると機嫌を損ねる可能性があるし、何より僕もずっとそばに居られるわけじゃない。
グレイに許可を得て部屋を探索すると来賓室はその奥に更に客室が複数ありそこから各寝室へ向かえる。
各客室にシャワー室も完備されていて上級宿にも劣らない設備だ。
全ての部屋に置かれている呼び鈴は魔道具加工してあるようで鳴らせばすぐに使用人や衛兵を呼ぶことが出来る。
本来であれば僕とグレイが同じ部屋に寝泊まりすることはないので、久しぶりの同室に気分が良くなったグレイと試験中の話を再開した。
グレイの方はアルテナス神興国のアスマリア王女が参加していたらしい。
しかし同じチームになることはなく、あちらと関わる機会はなかったようだ。
事前に聞いていた噂とは違った印象だった、と言って紅茶を口に含んだグレイはこの紅茶、美味いなと零した。
そういえば近年アルテナス神興国は美容茶という新たな特産品を作ったことで話題になっていた。
美容に良い魔法薬を使用したお茶ということで特に貴族を中心に女性達の注目を集めたのは記憶に新しい。
そしてお茶の出所がアルテナス神興国王妃のお茶会であったことも美容茶の信用度を上げる要因となった。
王族が自ら特産品を作り国を挙げて宣伝するという前代未聞の事態に帝国でも当時かなり話題になった。
このような特産品を扱うのは商人や領地を持つ貴族の仕事であるために一部の者達からは不評を買っていたらしいと聞いたことがある。
しかしそんな彼等を黙らせたのは美容茶の予想以上の効能だった。
美容茶の効果を疑った貴族たちが王妃へ伺いをした際に彼女から振る舞われたお茶を飲んで態度を一変させた。
ある貴婦人は長年悩んでいたシミが薄くなったと興奮気味に言い、ある高位貴族の愛娘は顔中にあったできものが一晩で治ったと大喜びした。
そんな効能が噂に噂を呼んでカリギュラの商業ギルドからアルテナス神興国の王家へ商用に扱わせてくれないか、と依頼したこともすぐに広まることになった。
カリギュラの商業ギルドと言えば大陸一の品揃えを謳う大物中の大物で、大抵の商品を扱っている。
日用品から魔法薬の材料、魔道具や兵器まで何でも揃えます。
それがカリギュラの商業ギルドの有名な謳い文句だ。
しかしその大口の誘いをアルテナス神興国側は蹴った。
その理由として彼等が挙げたのは美容茶の開発者達との契約上、我がアルテナス神興国でのみ販売することを義務付けられているということだった。
アルテナス神興国側のこの返答により、王妃が発案したのではなく別の人物による発明品でありそれが複数人いることが判明した。
そしてそのうちの1人がアルテナス神興国の王女にして王妃の娘であるアスマリア・アル・モレアであることが後に彼女の誕生のパーティーで知られることになったのだ。
一度も会わない内に婚約者として決められてしまったグレイとアスマリア姫。
これに関してはヴィアラクテア王国への牽制を兼ねている為、婚約しているという事実が政治的に必要なのだと父上が話しているのを聞いたことがある。
ただ僕達からすれば恋愛のれの字も知らぬままに決められた婚約に何も思わないわけではない。
王族として覚悟していたとは言え、あまりにも早過ぎる決定に一時期彼が密かに気を落としていたことを僕だけが知っている。
だからこそこの数十年現れなかったという聖女を探し求めたのかも知れない。
聖女がいれば王族といえど婚約は難しくなる。
一気に破棄までは行かなくとも先延ばしには出来るだろう。
幼少期から聞き齧っていた王女の噂はとてもじゃないがグレイと同じ王族の行いとは思えないものだった。
グレイは公には婚約者と呼ばれる女性に対し大きな感情は無かったのか紅茶の感想を述べると明日も早いからお前ももう休め、と僕に言った。
その指示に従い客室から繋がる寝室を覗き来賓室の彼に通路側を使いますね、と声を掛けると返事の代わりに手をひらひらと振られた。
寝室へ荷物を運びひと息吐いた時、ふと先程話題に登った王女のことが頭に過ぎった。
幼少とは言えガレリア帝国まで届いていた彼女の良いとは言えない素行。
しかしある時からマイナスを振り切っていた彼女の噂がピタッとなくなった時期があるのを思い出した。
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