第2実技試験13
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師匠との約束もあり、今まで人前で喚んだことがなかったのだが案外レジーナは平気そうな顔でお行儀良く前脚を揃えて座っていた。
目の前には突然現れたレジーナに警戒しているのか、大きな口を半開きにして威嚇しているゴベルスドラゴンがいた。
先程までのピンチから一転、精神的な余裕が出て来たせいか手首の痛みを摩って誤魔化しつつ考え事をした。
いつの間に私、召喚魔法なんて使ったんだろう?
魔法を使った覚えがないからまたレジーナが勝手に来ちゃったのかな。
最初に契約した時もそうだったがレジーナは自由奔放で私の言うことをあまり聞かない。
普段から魔力は勝手に吸うし森は荒らすしと、やりたい放題している我が家のお姫様も流石に契約主のピンチには駆け付けてくれるということだろうか。
しかし金色の目を細めて舌舐めずりでもしそうなくらい機嫌の良さそうなレジーナにそんな感じではないような気もした。
もしかして面白そうだからちょっと顔出してみようかな、とかその程度だったりして。
何はともあれ来てくれたのは心強い。
ドラゴン2頭を前に怖気付く様子もないのでこのまま戦闘の指示をしても問題なさそうだ。
「レジーナ!いけるね?」
《もちろんなのよ!こいつらふぇろー達より弱そうだからすぐおわっちゃうのよ!》
「ブレスと尻尾からの毒液攻撃に気を付けて!」
《ぶれす?あんなのが?ちょっとそこのツチノコよくみときなさい!ぶれすっていうのはね、こうするのよ!》
「ちょ、レジーナ!いきなり広範囲攻撃は、」
周辺への被害があああ!!
高確率で更地になるから指示した時だけっていつも言ってるのにあああ!!
しかもゴベルスドラゴンをツチノコって……そんな言葉どこで覚えて来たの!?
彼女は契約している関係で意思疎通は取れるものの、まだ成体になるかならないか位のせいか舌っ足らずな子供の様な話し方をしている。
それにしても語尾が特徴的なのは何か意味があるんだろうか?
レジーナはクイーンと一緒に遊んだりお使いで秘境へ行くことも多かったので、そう言うところで教えてもらったとか?
あとは考えたくないが、師匠にクイーンが付き添う時もレジーナは同行しているのでそちらで要らない知識を授けられた可能性もある。とても考えたくないが。
「レジーナ、ブレスは一旦ストップで!」
《なんでなのよ?パパがめんどくさい時はこれでいっぱつだ!っていってたのよ?》
「元凶はアンペルかアイツ許さん」
レジーナのブレスはアンペルに少し似ていて、クイーンの炎を吐き出すタイプのブレスよりも爆発する傾向にある。
よって今彼女の吐き出したブレスは先程私の手を折ったゴベルスドラゴンに命中しドカンと大きな爆発音を立てた。
まだ幼体気味のレジーナの体ではワンパンは無理だろう、と思い警戒していたのだが何故かゴベルスドラゴンが立ち上がってくる気配はない。
死んでしまっては私が失格になるのでヒヤヒヤしながら煙が収まるのを待つと、どうやら気絶してしまっているようだった。
安堵の溜め息を吐いて飛ばされてしまったセレスティアを探すと、少し離れた場所で尻餅をついて口を大きく開けたまま呆然とレジーナを見上げていた。
ゴベルスドラゴン2頭を相手に尻尾をぶんぶんしてオラ!掛かって来な!と言わんばかりに翼を広げる黒いドラゴンはさぞかし珍しいに違いない。
見たところ大きな怪我をしてなさそうなのでもう1頭の相手を任せてセレスティアの元へ向かった。
ブレスはストップ!と言っておいたため大人しく尻尾をぶん回してゴベルスドラゴンが毒液を吐き出す前の予備動作を妨害しているレジーナ。
バシン!ズシン!と響く戦闘音をBGMに折れた手を抱えながらセレスティアのそばへ行くと、歯をガチガチ言わせながら恐怖に染まった目でこちらを見て来た。
「な、な、なんなの、あれ……ドラゴンなの?貴女がよ、喚び出したの?」
「勝手に来ちゃったんだよ。まぁお陰で助かったけどね」
「一体何者なの!?さっきの風魔法も、防御魔法も、全て無詠唱なんて信じられないのに!ドラゴンまで喚び出すなんて!」
「いや、これには色々事情があって……兎に角ゴベルスドラゴンをあと1頭倒せば終わりだし、話はその後にしない?」
「……そうね。あとでちゃんと!聞かせてもらうわよ」
立ち上がろうとしている足は膝が笑ってしまっていて力が入らないらしく、震える手で必死に膝蓋骨を押さえていた。
手伝ってあげたいのは山々だが生憎と私の手は今使い物にならないので見ていることしか出来ない。
レジーナのいる方角で一際大きなズシーン!!と大きな物が倒れたような音がしたのでそちらを見ると、無事に決着が着いたようだった。
貫禄ある仁王立ちで足元に平伏したゴベルスを見下ろすレジーナを遠い目で見つめる私。
こっちも見ていることしか出来なかった……。
もはや怪獣大戦争みたいになってたから近くにいたら巻き添え喰らって潰されそうだけども。
ここでやっとセレスティアが立ち上がり倒された2頭のゴベルスドラゴンを見覚えのある呆然とした顔で見ていた。
そして褒めて良いんだぞ?とこちらにノシノシやって来る黒いレジーナに気付くとまた尻餅をついてしまった。
あらら、折角立ち上がれたのに。
流石に気の毒になったので怪我のない方の手を差し出して、ついでに砂塗れのお互いに洗浄魔法を掛けようとした時だった。
セレスティア、と声を掛けて手を伸ばすと彼女は怪我をした方の手を見て唇をクッと噛み俯いた。
「……ごめんなさい。私のせいで手を、」
「あぁ、痛いけど大丈夫。もっと痛い怪我したことあるし」
「そういうことじゃないわよ。……貴女ってバカね!」
素直じゃないセレスティアの言葉を受け取りながらほら、と急かすと彼女は観念したように私の手に自身の手を重ねた。
すると突然、眩い光が私達を包み込んだのだった。
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