第2実技試験10
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皆が緊張しながら皇子様の疑問に受け答えをしていたら、いつの間にかクラレスの番が終わっていたようだ。
あ!と気が付いて運動場を見た頃には猫型の魔物が地面に伏せて眠りこけていた。
それを恐る恐る抱き上げたクラレスがゆっくり檻の中へ戻して行くのを見て彼女の試験が終わった。
一緒に受けていた少年も合格したようで、ボロボロになりながらも魔物を風魔法で檻に閉じ込めた。
「……次は私ね」
「お姉ちゃん気を付けてね!」
「セレスティア、頑張って」
クラレスのように少し顔を青白くさせながら緊張で身を硬くしたセレスティアが席を立った。
189番のセレスティアが待機場所へ移動しようと歩き出すと、魔物達の檻が集まる場所からグオオォォと低い唸り声が聞こえて来た。
これには皇子様もピクリと肩を揺らすと、今のは何だ?と困惑した声を発した。
すかさずギルがこれから試験を受ける人が対戦する魔物の檻が移動して、魔物が威嚇しているようですと報告した。
状況を一瞥しただけで冷静に分析して報告するなんてイメージを裏切らない腹心っぷりだ。
それにしても大きな唸り声だ。
まるで機嫌が悪い時のアンペルやクイーンのような鳴き声だなぁ。
そんなことを思っていたらニーナがこれドラゴンの鳴き声だゾ、と冷静に指摘した。
その一言に皆が揃って無言になり数拍置いてピティがお姉ちゃん大丈夫かな?と呟いた。
大丈夫じゃないんじゃないかな。
セレスティアが、というより一緒に受ける人が。
私の予想が的中したと確信したのは、セレスティアの番がやってきて彼女と一緒に受けるらしい少年が入場した時だった。
さっきの鳴き声で既に萎縮していた彼は運び込まれて来たセレスティアが相手する大きく真っ暗な檻に足を震わせていた。
そして緑の髪のニイーズナーさんがやって来て檻に掛けていた魔法を解くと中に入れられていた魔物の姿が見えるようになった。
試験開始前に青年が言っていたゴベルスドラゴン、という魔物を見たことはないが檻の魔物は確かにドラゴンのような姿をしていた。
大きな濃い紫色のトカゲに小さな翼と三叉に分かれた先端が特徴的な尻尾、そして見開いた銀色の目は鋭く興奮気味に鼻から息を荒く吐いていた。
その姿を見て戦意喪失した少年はニイーズナーさんが檻を開ける前にひっくり返った声でききき、棄権します!!!と叫んだ。
直前の棄権宣言に片方の眉をぴくりと上げるとニイーズナーさんがではお前は失格だ、と声を掛けた。
震える足を抱えて躓きながらヒィイと走り去って行く少年を見ることもなく、セレスティアは目の前のゴベルスドラゴンを真剣な眼差しで見据えていた。
その後も次々とやって来る参加者が皆棄権を宣言して行くので物凄いスピードで順番が回り始めた。
ついに237番までが行くことになり私も席を立つことにした。
皇子様達に声を掛けてから運動場へ向かうと、私の相手になる魔物の檻も運動場へ降ろされていた。
控え室へ行ったと思ったらすぐに運動場へ行くよう案内されたので、戸惑いながらも向かうと無表情のまま額に青筋を浮かべたニイーズナーさんが檻の前に仁王立ちしていた。
2つ揃ったゴベルスドラゴンの檻に周囲がザワザワと声を上げているのが分かった。
中心に1人腕を組んで立ち尽くすセレスティアがやって来た私を見て驚いた顔をした。
「あら、貴女の番まで飛んでしまったの?」
「そうみたい。控え室に行ったらそのまま行くように言われたよ」
「……皆意気地無しなのね」
「ドラゴン見たこともない人も多いらしいから無理もないよ」
「そんなの、私だって初めてよ」
強がるような口調の彼女をよく見ると組んでいる腕が微かに震えているのが分かった。
先程の発言を反省しながらセレスティアが恐怖を押し殺しながらも棄権しない理由を考えてみた。
わざわざここまで来たということはそれなりの努力や覚悟があってのことだろう。
そして妹のピティは既に合格を決めてしまった。
ここで諦めて仕舞えばピティとは離れ離れになってしまうし、養い親になった貴族の顔に泥を塗ってしまうことになりかねないだろう。
私も合格はしたいし出来ればお互いに協力したほうが良いと思うのだが、果たして彼女がそれを良しとするだろうか。
まだ短い期間しか接していないが負けず嫌いな性格であることは何となく分かった。
おおらかで大抵のものを受け入れるピティとはほぼ正反対と言っても良い。
ピティがソロで圧倒的なセンスで合格を出してしまった今、負けず嫌いで潔癖なセレスティアが協力してくれるか不安に思ったがダメ元で提案だけしてみようか。
「あの、セレスティア。良ければ私と、」
「いいわよ。協力しましょう」
「え、あ、うん」
「流石に1人でアレをどうにか出来るなんて思わないわ。試験中どちらかのドラゴンが割り込んでくる可能性もあるのだから、だったら最初から協力しておいた方が良いもの」
「そうだね。私、前衛の方が良いみたいだから前に出るね」
「ちょ、あんなのの前に出る!?正気なの!?」
すっと前に出ると驚きながら言ってくるセレスティアに、何だか面白くなってしまってくすりと笑いながら振り向きざまに声を掛けた。
「大丈夫。絶対合格しようね」
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