帝国皇子付きの憂鬱4
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レヴィが砂嵐から出て行きそれを英雄が追いかけたのを見計らって僕が砂嵐ごと風属性魔法を2人にぶつけ、クラレスが水属性魔法で地面を沼化させた。
地面が沼化して沈んでも先程レヴィにやられていたからかすぐさま彼方も地面に魔法を掛けて相殺しようとしているが、クラレスが使っているのは水属性魔法だ。
同属性による系統が似た魔法は威力や技術の高い方がその魔法を打ち消すことも出来るが、そこが噛み合わないと属性の相性や魔力の使い方で優劣が決まりやすい。
今回の地面への魔法は土を魔力で変化させる相手の魔法と、魔力を水に変換して土へ働きかけるクラレスの魔法は相性が悪かった。
いくら土を硬化させようともクラレスの水魔法が土の間に染み込み硬化を弾いてしまうからだ。
よって百戦錬磨であろう彼等は何故か魔法を使用しても地面が軟化していく状況に困惑しながら僕の風魔法に対処している内にクラレスの音属性魔法がベースの固有魔法を喰らうことになった。
「なんだこれ、土属性魔法じゃないのか!?」
「視界が悪くてよく見えねぇっ」
「今です、クラレスさん!」
「はい!……″沈黙への誘い″!!」
「っ!?」
「おい、どうし……た」
相手は実践経験豊富な冒険者だったが、レヴィが規格外の魔法を連発して動揺させてくれていたお陰で僕達への対処にも焦りからか遅れが出ていたのが功を奏した。
通常水属性魔法は土属性魔法に負けやすいと言われるが今回はそれぞれ魔法を掛けた対象が違うので相性を覆す結果となったようだ。
多少時間差はあったもののほぼ同時にガクリと膝を折りそのまま沈んで行く2人にクラレスが慌てて魔法を解くことで何とか窒息するのは阻止した。
僕たちが2人を無力化したのと同じ頃に砂嵐が落ち着いて開けてきた視界の中、凄い速さで走ってくるニーナとその服の裾にしがみ付くジャスパーが見えた。
「お、おいニーナ!落ち着け?な?」
「ワタシは落ち着いてル!速く行かないとレヴィが1人で終わらせてしまうからナ!」
「ジャスパーさん、こちらへ!」
「分かった!ニーナ、無茶すんなよ!」
「分かってル!今度こそ決めるゾ!″魔獣化″!!」
固有魔法名を唱えるとニーナの手足が人間らしい姿から獣のソレに変化して行き、ジャスパーのように獣毛が生え猫足の形になった拳をキツく握ると同じく変化した脚で地面をグッと踏み締めて一気にレヴィ達のところまで跳躍した。
ここまでの移動は単純な身体能力強化だけだったのだろうが、それでもかなりのスピードがあった。
それが魔獣化したことにより更に強化され殆ど目で追えない程の速度で動いていた。
そんなニーナの動きを完璧に把握していたようなタイミングで、レヴィが英雄のアックスによる攻撃を止めた。
何か細工をしたのか今まで土から生成した石で対処していたアックスを無詠唱の防御魔法で止めて見せた挙句、その刃を破壊したのだ。
これには会場の観客達もどよめきを隠せない様子だった。
特に来賓として呼ばれていたヴィアラクテアの大使や、我が国の守備の要である第2軍隊長はレヴィの魔法技術の高さに思わずと言った様子で席から立ち上がって観戦していた。
その隙を見逃さずに固有魔法を発動したニーナの一撃によって僕達の勝利が確定した。
審判による勝利宣言の中、僕たちに拍手を送っている観客席をぐるりと見て目を細めた。
ヴィアラクテアでは有能な魔法使いを大陸各地から引き抜いており、王国の研究機関や軍部にはアルティ学院出身者も多く在籍している。
他国へ侵略戦争を繰り返しているとは言え南の大国であることには変わりない。
裏を返せばそれだけ攻めても傾かないくらい国に体力があるということになる。
戦争は資源や金、命を際限なく貪り食う病気のようなものだ。
通常他国へ戦争を仕掛ければ自国も兵士や土地、食糧や武器を消耗する。
しかしあの国は南にある領土の各地から物資や食糧を税の代わりに徴収することで短いスパンでの侵略戦争を可能としている。
温暖な気候と肥沃かつ広大な大地で育つ食糧と住んでいる大勢の人々、そしてその大地を統治下に置く巨大な王国。
かつて大陸の殆どの土地を支配していたという歴史を裏付けるのに十分な環境要因だと思う。
ヴィアラクテア王国の大使が目を付けているとなったら我が国も見ているわけには行かなくなる。
何せ複数の上級魔法を同時使用かつ無詠唱発動出来る魔法使いなんて、それこそ教科書に載る偉人レベルじゃないか?
例えば大魔法使いアムリネとか。
彼女を始めとした当時の生徒会メンバーが規格外の天才過ぎて、入試から棄権者続出だったとされる当時の現役生はかなり優秀な人材が多かったと言われている。
所謂黄金世代、というやつだ。
魔人では珍しい睡眠魔法を使うクラレスや一握りしか使いこなせないという魔獣化の魔法を使うニーナ。
そしてこの国の姫に我が国の皇子……もしかしたら何か大きなことでも起こるのかも知れないな。
そう思うのも無理はないほどに僕の想像を遥かに超える出来事がこの時から既に少しずつ起こり始めていた。
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