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休息2

閲覧ありがとうございます!



まさかのカミングアウトに一瞬息を詰まらせてしまったが話すことに必死なクラレスには気付かれていないようだった。



「私はお母さんが水に棲む魔物とのハーフで、お父さんも魚の魔人だった。だから小さい頃から水の中で生活するのが当たり前だったの」



じゃあ陸に上がってくるのはさぞかし勇気のいることだったろうな。

というか水の中で生活していたならヒレとかがあったんじゃないのか?


そんな私の疑問はすぐに答えが出された。

クラレスは自身が試験前に申請していて今も着けているネックレスに触れて説明してくれた。




「このネックレスは母方のお祖母様が陸に上がって人間だったお祖父様と結婚するために手に入れたと言われる魔道具よ」


「それってクラレスのお祖母さんは水の中に棲む魔物だったってこと?」


「……えぇ。当時は今よりも魔物への偏見が強く、魔物の姿では人里へ入ることも許されなかった。だから人々の目を欺くためにこれが使われていたの」


「じゃあ家宝なんだね」


「そうね。……これがなければお祖母様は陸に上がることも出来なかった。だからこれをお母様から譲って貰った時、とても嬉しかったわ」


「魔道具はお母さんが持っていたの?」




そう聞くと、言いづらそうにチラリと仲良さそうに話しているニーナとピティを見るクラレス。

あ、そうだよね。聞かれてると話しづらいよね。


突然のカミングアウトに驚いて流されるがままに聞き入ってしまっていたが、部屋の外へ出ても良いなら連れ出した方が良いかも。

クラレスの話を一度中断してもらい、部屋の外にいた見回りの生徒に声を掛けるとこの廊下と先にあるトイレ、テラスまでなら行っても良いと許可を貰った。




近くのテラスへ出るとさっきよりも少し顔色が良くなったクラレスがお礼を言って来た。



「レヴィ、ありがとう。お祖母様は魔道具をお母様に託してお祖父様のいる屋敷に住んでいるわ。でもお母様はお父様と水の中で住むことを選んだから、今は離れて暮らしてる……今までこんなことを話せる人なんていなかったから嬉しいわ」


「クラレスの住んでいる所には他に魔人はいないの?」


「いるけど……この魔道具を使って人と混じった私達は完全な水の魔人達から半端者と呼ばれているの。お父様は陸でも生きられる種の魔人だったから気にしてなかったけど、水の中は陸よりも排他的で何より変化を嫌う者が多いから」




ってことは同世代の友達なんて作るどころかご近所さんからも遠巻きにされて話し相手も乏しい状況?

いくら家族がいても外の人と関わらずに生きるのは難しいのでは?



そう思っていると、クラレスは今回アルティ学院を受験した理由について触れた。




「陸は水の中よりも沢山の人や魔人がいるから、きっとお友達が出来るとお祖母様が言っていたの。それを支えに今まで勉強して来た。……でもレヴィに話しかけてもらうまで皆私を遠巻きに見て噂していたわ」


「確かにジャスパーも筆記試験の時に絡まれてた……」


「彼は特に魔物の血が濃いものね。私以上に避けられていた彼に自分から話しかけていたのを見てレヴィ達に興味を持ったの……」


「だから私のこと見てたんだね。てっきり何かしちゃったかと思ったよ」


「まさかそんな……ただレヴィ達3人のことが羨ましかったの」




青白かった頬に少し赤みが出て恥ずかしそうに言う彼女を見て、あの時誘って良かったと思った。

体調が悪そうなのはクラレスの種族が関係しているようだし、このままあの部屋で過ごすのは難しいのかも知れない。





「クラレスの事情は分かったよ。でもその魔道具って着けている間ずっと効果が続く物ではないの?」


「お祖母様が事前に魔鉱石に貯められるだけ魔力を貯めておけば1ヶ月は持つと言っていたわ。だから陸上で生活するのに問題はないはずなのだけど、何故か息苦しく感じてしまって……」




胸元を握り締めながら俯いているクラレス。

もしかしてそれってストレス的なものなのでは?

身体が生きていく分には問題ないにしても、メンタルにとっては今までとは真逆の環境なわけだからかなり負担が掛かっているはずだ。


そう伝えるとクラレスは想像もしていなかったと言わんばかりに驚いた顔をしてまさか、と呟いていた。

現代ではメンタルを崩して体調まで崩れてしまった人が多くいたのでおかしい話ではないはずだ。



一体どうしたら……と眉を下げる彼女に私から1つ提案してみた。




「学院に事情を話して部屋に大きな桶を用意してもらうか、浴場を使わせてもらうのはどう?」



ストレスを和らげるには普段の生活環境に近付ければいい。

つまり魔道具を外して水に浸かれば良いんだ!


短絡的ながらも効きそうな提案に苦笑いしつつもクラレスから同意を貰ったので早速学院の関係者を探しに行くことにした。







生徒から先生に話を通してもらったところ、部屋に防水魔法を掛けた布を敷きその上に桶を用意して水を張るなら良いと言われた。

流石に浴室は他の受験生との扱いに差が出てしまうので許可出来ないようだ。


まぁ水が張れればいいので、ピティとニーナにも相談してテーブルセットを2段ベッドの間に移動させて扉前にスペースを確保した。


そして棺桶よりも1回りほど大きく高さがお尻ほどある箱を浮遊魔法で運んでもらい、そこに私が水を張った。

海水である必要はないそうなので普通の水を入れた。




用意を終えると、クラレスが心なしか頬を緩めながら魔道具を外すとそのまま水に足を入れた。

素肌にタオルだけの姿なのでまるでお風呂にでも入るような姿だ。


ちゃぷ、と足先で音を立てて両足を水に浸けるとそのままずぷんと水の中へ潜った。

波紋がゆらゆらと揺れる水面を皆で見つめていると、ざばりと大きな尾鰭が飛び出した。


白っぽい色のヒレが水滴の集めた光に反射してキラキラとしていて綺麗だ。

尾鰭が水に沈むと代わりにクラレスの上半身が水から出て来てパシャリと水飛沫が飛んだ。




まるで現代の映画から飛び出して来たかのような美しい容姿に人魚姫ってリアルで居たらこんな感じなのかな、と思ってしまった。

ニーナとピティもかなり興奮した様子でクラレスの姿を褒めていて、照れながらも嬉しそうに話すクラレスは最初の人見知りな印象からかなり変わって見えた。


2段ベッドの下や端に寄せたテーブルセットから椅子を持って来て座ると、その晩は食事後や寝支度の後も異色なメンバーによる女子トークに花を咲かせていた。



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