第1実技試験16
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案外盛り上がりを見せた話し合いの途中、垂れ幕の外にシュトロイゼンの気配を感知した。
私が魔法で感知したあと、次に早く気が付いたのはニーナだった。
いち早く耳をピンと立てると誰か来たゾ!と声を上げた。
それを聞いて皆がお茶を飲んだりしていた手を止めて垂れ幕の方を見た。
ギルが立ち上がり垂れ幕を持ち上げて外を確認すると、気まずそうな顔をしたシュトロイゼンが突っ立っていた。
よぉ、と片手を上げて入って来ようとするシュトロイゼンだがただでさえ狭いテント内に6人は些か無理があると思う。
すると狭くなっていく空間を嫌がったニーナがジャスパーに向けて無遠慮にこう言った。
「おい、ジャスパー!オマエ魔法使って小さくなレ!」
「なんだよ急に!?」
「それは名案ですね。ジャスパーさんお願いします」
「ギルもか!?しょーがねぇな……″弱者の行進″!」
詠唱はせずに技名っぽいものを叫ぶとしゅるしゅるとジャスパーが小さくなった。
本人はネズミサイズ、と言っていたが手のひらくらいまでのソレは見た目のファンシーさもあってまるで大きいハムスターの様だった。
え、結構可愛い!
思っていたよりも可愛かったのでジャスパーを手招きして膝の上に乗せることにした。
ジャスパーもそのままだと隣のニーナに潰されそうで怖かったのか、大人しく私の膝に収まってくれた。
「いやぁ、悪いな入れてもらっちまって」
「結局私に何の用があったんですか?」
「それもあるが、まずはお前らに謝りたい。馬鹿にして済まなかった」
シュトロイゼンが突然謝罪して頭を下げたので皆して面食らってしまった。
試験中あれほど自信に溢れた態度が一変すれば誰でも驚くとは思うが。
試験前と試験中に馬鹿にしていたことを言っているっぽいので魔人である3人のことだと思うけど。
当の3人はポカーンとしていて使い物にならなそうだ。
そこでまたもやいち早く復活したギルが話を進めてくれた。
「突然ですね。どのような経緯で謝罪しようと思われたのですか?」
「魔人と人間の即席チームなんて聞いたことがなかったからな。俺たちはお前らを完全にナメてた。それがこのザマだ」
「確かに魔人と人間が共に戦うことは僕も聞いたことがありませんでした」
「どちらかと言うと人間がオイラ達を嫌がることの方が多いからな」
「私も魔物の血が暴走するからだと聞いたことがあります……」
「ワタシのように使い熟せる者は多くないからナ!」
いつの間にかポカーンと惚けていた面々も会話に参加していて、シュトロイゼンを受け入れている雰囲気だった。
これなら謝罪について考えるまでもないか。
「さっき医務室で仲間が目を覚ました。レヴェリアの魔法は相当強かったが、あれでも手加減していたんだろ?最後のはどうやってやったか聞きたかったんだ」
「まぁ、そうだけど。こんなに効くと思わなかったよ。アレは水魔法の攻撃の下に高濃度の酸を隠してアックスに浴びせたんだ。金属疲労と酸で刃を脆くしたんだよ」
「そうか。水魔法に混ぜて、金属疲労……面白い!」
「そういえばそちらに使われた魔法をほぼ全てやり返してましたよね」
「本当カ!?ワタシも見たかったゾ!」
「アイツらも反省していた。今まで順調に色んな場所のダンジョン攻略や旅をしてきて俺達は何処かで慢心していた……」
そういえばそんなこと言ってたな。
今までこのパーティーでやって来たって。
ならなんで今回学院の入試を受けに来たんだろう?
同じ疑問を持ったらしいジャスパーが私よりも先にシュトロイゼンに質問していた。
「冒険者ならなんで入試なんて受けに来たんだ?」
「……実は俺が以前から行きたかった場所が特殊な所で、入るにはこの国の認可が必要なんだ。ただ過去にそこへ行けたのは各国から派遣された研究者くらいなもんだった」
「もしかしてその場所というのは、」
「閉ざされた北の大地って言やあ、誰でも知ってる場所だろ?この数百年の間に魔道具の開発が進んで大陸の殆どのダンジョンが攻略された。でも誰もが名前を知ってるのに誰も何も知らない場所が未だにこの大陸には存在している。冒険者なら誰もが一度は夢見る場所だ」
そう語るシュトロイゼンはまるで子供が夢を話すようなキラキラした目をしていた。
こんな熱の籠った目で話を聞かされたら仲間達も頷かずにはいられないだろうな。
既に私達がその話を疑うこともなく聞いてしまっているのが何よりの証拠だ。
いつだか地図に書かれていた閉ざされた北の大地という名前。
確か場所は地図上だとアルテナス神興国のほぼ真上と言って差し支えない位置だった。
アルテナス神興国の上に亀裂のようなものが描かれていてその先が黒く塗りつぶされていたと記憶している。
あれはまだ誰も到達していないから黒く塗られていたってことなのか。
「つまりシュトロイゼンさんはそこに行く為の足掛かりとしてアルティ学院に入学したかったってことですか」
「そうだ。あぁ、俺のことはジョシュって呼んでくれ。ジョウは親父と、シュトロイゼンは色々被るから紛らわしいんだ」
それからしばらく、彼はテントで冒険者として旅を始めた時のことを話してくれた。
どうやら彼の家はクロノバレドとヴィアラクテアの国境付近を領地としているようで、何度も戦に巻き込まれて来たのだと言う。
あれ?なんか聞いたことのある話だなぁ。
膝に振動を感じたので視線を下げると、小型化したジャスパーがぶるぶる震えながらジョシュを指差した。
「え、えええ英雄!!??」
魔人組が口と目を大きく開いてジョシュを見ている中、彼等の興奮ぶりがイマイチ分からない私とギルはニーナの魔獣化の時のような雰囲気を感じた。
彼等にとっては10年も平和を保つ要因となった人だから本人に会えて感動しているんだろうけど。
一般教養と国についてもっと詳しく勉強しておけば良かったな、と少し後悔した。
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