帝国皇子付きの憂鬱1
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今回、ガレリア帝国からわざわざ試験を受けに来る羽目になったのは長年仕える主人殿の我儘によるものだった。
ガレリア帝国第一皇子付き。
それが僕に与えられた役割とその役名だ。
家柄が釣り合ったのと同じ年に生まれたこともあり僕は幼い頃から彼の元で気心の知れた幼馴染として、そして将来高官として支えるために側に仕えてきた。
5年前のあの日。
カリギュラで出会った顔も名前も分からない聖女。
彼女を探すために多くの人と時間を割いたが結局見つけることはおろか足取りを掴むことも叶わなかった。
落ち込む主人を連れてガレリアへ帰還後、皇帝陛下に詳細を報告するとすぐさま聖女を探していると皆に知らせ、見つけ次第連れてくるよう御触れを出した。
しかし来たのはただ魔力を持つだけの少女や明らかに年齢の合わない女性ばかり。
極め付けはカリギュラから連れて来たという魔力も持たない一般人だった。
おおよその年齢や体格の情報を掴んでいた一部の貴族や商人がそれらしい人物や身内を見繕って城に送り込んでいたそうだ。
勿論そんなことをすれば漏れなく罪に問われる。
貴族はまだ別として、皇帝を欺こうとした罪で何人もの一般市民が投獄され中には処刑された者もいた。
そこまでしてやっと事の重大さに気が付いた者達は以後、その件で城の門戸を叩くことはなくなった。
城付きの鑑定魔法使いがいくら鑑定しても連れて来られた者の中に癒しの魔力を持つ者が見つかることはなかった。
そうなると皇子は本当に聖女と遭遇したのか、という話になるのは必然とも言えた。
しかし僕は実際に彼女に会っているしグレイの目が見えるようになる瞬間にも立ち会っている。
ただ僕や皇子がいかに主張しようとも彼等が納得することはなかった。
僕らが幼過ぎたからだ。
あの日、もしグレイの我儘に耳を貸さずに護衛を連れていれば。
あるいはすぐにその場で彼女を拘束していれば。
後悔にも似た振り返りをしたこともある。
けれどあの出来事がなければグレイが帰還後に再び剣を取ることもなかったし、ましてやいくら名門と言えど帝国第一皇子でありながら他国であるアルテナス神興国にやってくることもなかった。
結果を見ればこれで良かったのかも知れない、と最近は思うようになった。
アルテナス神興国はガレリア帝国とは違い入国審査があまり厳しくない。
なので僕もグレイも周囲に気取られる心配なく入国することが出来た。
ヴィアラクテア王国は王侯貴族やその推薦者以外には厳しいが、ガレリア帝国は全ての者を厳しく審査する。
アルテナス神興国は他国でも地位ある者の紹介状を持っていれば手荷物検査や身体検査は殆ど行わないのだ。
代わりに何かあればその人物を紹介した者に責任を問う形となる。
入試中拠点とする宿は宿屋街ではなく王宮内の敷地の外れにある高位貴族や王族だけが泊まれる来賓専用の宿泊施設を利用することになっている。
目の見えないグレイは国外では周囲に介助が必要だと思わせるために僕が常に付き添っている。
実際は剣を習い直した時に感知魔法の修行もしているので1人でも殆ど問題はないのだが念の為だ。
とは言ったものの。
試験会場が離れてしまったのでは仕方がない。
筆記試験はスルーして実技試験へ臨むため、朝早くから人混みを歩いて来ることになったのまでは良いが会場が分かれてしまったのは誤算だった。
王族であろうとアルティ学院に関することはアルテナス神興国内であっても治外法権、特に入試は一切の不正や優遇が認められないことで有名だ。
学院までの道は狭いので貴族であっても歩かせるし、入学希望者に王族がいても一般人と一緒に試験を受けさせる。
現にこの国の姫も入学するにあたりちゃんと入試を受けるのだ。
アルテナス神興国の王位継承権第1位であるアルベール王子ですら受けたと言うのだから公平さは筋金入りだと思う。
実技試験会場へ到着すると5人1組を作れと言われた。
だがガレリアから入学を希望して来た貴族と僕が組めば本国で要らぬ火種を生みかねない。
こういう時、立場があると言うのも面倒だなと思う。
仕方なくガレリア帝国民ではない者で更に試験を突破出来る程度の実力を持つ者を探すことにした。
何人かに声を掛けられたが明らかに僕の正体を知った上で話しかけて来ている者や実力不足が傍目で分かる者しかいなかったので丁重にお断りした。
運動場内を歩きながらめぼしい人物を探していると、ある人物にふと目が行った。
彼女は……。
茶色の髪の一部が金色になっている猫耳の魔人の少女といた人物だ。
今まで見たことがない位に鮮やかな青色の瞳が印象的だった。
思い出したのは先程グレイと共に運動場へ向かう際にぶつかった時のこと。
グレイは僕よりも感知魔法に優れている為、通常ならいち早くぶつかる前に声を掛けてくれるのだが。
あの時は何故か常時展開しているはずの感知魔法に引っ掛からなかったのでぶつかる直前まで気が付かなかったと言う。
気配を消している様子もなければ特に何かをしてきたわけでもない。
なのに何故かあの時のことが妙に記憶に残った。
まるで喉の奥に何かが閊えているような、スッキリしない感じがする。
そんな気持ちを抱えながら好奇心のままに彼女へチームを組まないかと誘いを掛けた。
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