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第1実技試験15

閲覧ありがとうございます!



ドラが鳴り止み会場が一時シーンとした空気になった頃、シュトロイゼンはハッと我に帰った様子で後ろの仲間を見つめた。


クラレスとギルが何をしたのかは分からないが眠っているらしいBとDの沈んでいる場所は地面がかなり軟化していて沼のようになっていた。




ザワザワとしていた観衆が徐々にワーッと盛り上がり始めるとスタッフらしき男性がやって来て次の試合があるので撤収するよう言われた。

フィールドを元に戻すために続々と生徒だろうライトグレーのベストを着た人たちが手を翳して魔法を使って行く。


彼等の指示に従ってギル達の元へ向かおうとすると、シュトロイゼンが慌てた様子で話しかけてきた。




「お、おい!レヴェリア、ちょっといいか?」


「今は撤収が先みたいなので、ここを出てからでも良いですか?」


「分かった。じゃあ後でそちらのテントへ行く。27、だったか?」


「……そうですけど」




次も試合があるのにわざわざ話したいことってなんだろう?


これまでのおちゃらけた雰囲気は感じられず、かと言って負けた悔しさを全面に出している感じもない。

ただ何とも言えない顔で仲間と私たちを見ながら話したい、と彼は言った。



負けて嫌がらせをするようなタイプには見えないし、とりあえず皆が良いならテントに来ても大丈夫だよね。




「他のメンバーにも聞いてみます」


「頼む」



言ってしまった手前、聞かないわけにはいかないので集まって喜んでいる4人の所へ行ってシュトロイゼンの言っていたことを相談してみた。

すると何故かレヴェリアさんに従います、とギルが和やかに微笑みながら言った。



他のメンバーも特に嫌がる様子がなかったのでシュトロイゼンに向かって頷いて見せた。

彼も他のメンバーが担架で運ばれて行くのを見送りながらこちらをチラリと見て頷き返した。













会場から休憩所のテントへ戻ると周囲からの視線がかなり多く向けられとても居心地が悪かった。

まだ試合を終えたチームが少ないこともあるのだろうが、魔人と人間のごちゃ混ぜチームでかつ番号がそれなりに大きいのに勝ったことが視線を集めた要因の一部なんだろう。


ギルが周囲のリアクションを見てテント内で待機して垂れ幕で目隠しをしましょうと提案してきたので全会一致でそれに従った。




シュトロイゼンは仲間が急遽建てられた医務室に運ばれているのでそちらに寄ってからこちらへ来るそうだ。


なので彼が来るまでの間、収納されていたティーセットを出してお茶を淹れておくことにした。

既に見せている魔法だからか今更皆が大きなリアクションをすることはなかった。




いつの間にか木箱には物資が追加されており茶葉も足されていたのでそれをもう一度淹れつつ、クッキー缶を見つけたのでそれも皿に盛り付けて出すことにした。

と言っても皆敷物の上に座っているから必然的にティーセットも木箱から出した板の上に乗せているだけだ。


順番にお茶を差し出すとお礼を言って皆がそれぞれ口を付ける中、クラレスだけが俯いて手を膝に置いたままだった。




「このクッキーうまいゾ!」


「1人で全部食べちゃダメだよ。……クラレス?」


「あの、次の試合はいつなんでしょうか……?」


「そうですね。この参加者の数ですから、少なくとも一巡するまで1試合目が終わった僕達が呼ばれることはないと思いますよ」




不安気にギルへ質問をするクラレスの顔は初めて会った時を思い出すほどに暗かった。

さっきの試験で怖さが勝ってしまったんだろうか。

もし棄権するなんてことになれば私達も困ったことになる。


ギルもそう思ったのだろうか。

とても優しい声色でしばらくは呼ばれないだろうと言った彼の言葉にクラレスは少し安心したのか詰めていた息を吐き出し、震える手でカップを持ち上げ口を付けた。



珍しくニーナも静かにしていて、誰も話さないまま数分が過ぎた。


その間、他のテントから人の話し声や移動する足音が聞こえてくるので試合が順調に進んでいることを確認した。



テントの布越しに外へ視線を向けていると、ジャスパーが私に話しかけて来た。




「レヴィ、凄かったな。アイツらは皆オイラ達よりも格上だった。それを3人も一気に相手するなんて!まるで魔王様みたいだ」


「魔王様?」


「クロノバレド連合国を統治している国王のことをそう呼ぶそうです。魔物や魔人を含めた国民全てを統べる王だから、と聞きました」


「そうだ。先代が建国してまだ日の浅い国だが、それ以降まだヴィアラクテアからの大規模な侵略戦争は起こってねぇ」


「流石に国として成立している場所を攻めるのは他国からの反発も多いですからね。ですが一部の場所は未だ支配されていたり攻撃を受けています」


「オマエ詳しいな。最近だと10年前のクロヴィアの砦の戦いが1番大きいって言われてるな」




クロヴィアの砦?

私が首を傾げていると珍しくニーナを含む他の皆は知っている場所らしい。

するとニーナが得意気に説明をしてくれた。



クロヴィアの砦とはクロノバレド連合国に属する村々の一部を改造してヴィアラクテア王国と接する国境近くに建設された巨大な砦のことだと言う。

砦の建設には多くの時間と犠牲があり、10年前の完成直前にヴィアラクテア王国からの大規模な襲撃があった。


その時砦を守り切ったのが元々その付近を領地としていたこちらで言うところの辺境伯の一族だったという。

特に当時16歳だった当主の息子が目覚ましい活躍をして、今でもクロノバレドに住む国民から英雄と讃えられているらしい。



その後無事砦は完成し、周辺の地域がヴィアラクテアに攻められることは未だにないとジャスパーが付け足した。


英雄と呼ばれた彼はその後国を出て武者修行のようなことをしているのだとニーナが言った。



クロノバレドで10年平和が保たれているのはその人のお陰と言っても過言ではないわけか。





そうして納得しているうちに話題は次へ移り、試合の振り返りをしながら次の作戦とチームとしての弱点を話し合うことになった。


途中小腹が空いタ!と騒ぐニーナのために木箱を漁ってサンドイッチを出してやったりしながらシュトロイゼンが来るのを待った。



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