初契約1
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今回は番外編になります。
クイーンとアンペルの娘、レジーナがたまごから無事に孵って3ヶ月ほどが経過した。
生まれた直後から元気そうではあったが念のため検査や経過を見ると言うことで師匠が魔法で新たに作ったベビドラルームで過ごさせた。
入室制限はないので親竜と私達はいつでも入ることが出来るが、それ以外は誘拐防止の魔法がこれでもかと掛けられている。
これが異世界ホームセキュリティってやつか……。
例えば登録者以外が扉や窓を開けたらアンペルの雷魔法が飛んでくるとか、レジーナが過ごしている寝床や暖炉にはクイーンの火魔法が掛かっているのだがレジーナ以外には超高温に変化するとか。
更に部屋の材木には特殊な木が使われていて、もし部屋を攻撃して木が傷付くと傷口から毒液を出すのだ。
その毒は超猛毒で衣服を貫通し揮発するので吸い込むだけで即死する。
しかもトラップの被害を受けないよう、防御魔法一式を付与した糸を編み込んだミサンガをレジーナの足にちゃっかり着けている辺り性質が悪いと思った。
こうして仮に忍び込んだ者がいたら同情してしまうくらいにはヤバめのデストラップ満載ルームが無事完成した。
部屋には大きな暖炉があり常に火を焚いてある。
たまに様子を見に行くとレジーナはよくそこへ飛び込んで体に灰や炭を擦り付けたりしている。
一見汚れや火傷が心配になるが、これは彼等にとって必要な一種の習性だと師匠が説明してくれた。
灰や炭には体表の汚れを落としやすくしたり寄生虫対策、体を温める効果もあるという。
そもそも赤ん坊といえどドラゴンの皮膚はとても硬く熱さに強いため滅多なことでは火傷どころか傷も負わないという。
中にはマグマに棲む種もいるというから改めてとんでもない生き物だなと思った。
初めて確認された異なる竜種から生まれたたまごなのでどんなことが起こるか未知数だということから、定期的に親竜以外の私達も部屋の窓から観察したり中に入って体調を確かめたりしている。
ドラゴンについてなんて学んだことがないので師匠の部屋から本を借りて読んだりアンペルやクイーンに話を聞いたりして情報を集めた。
幼体の期間は寿命全体から見るととても短く、5年もすれば成体になるそうだ。
人間でも体が出来上がるのに15年から20年は掛かるのに。
野生の生き物は外敵に襲われる危険性の高い幼体期間が短くなるよう、成体までの成長が早くなっているのは魔物も同じのようだ。
魔物と普通の生き物の1番の違いはやはり魔力を行使するか否かだろう。
赤ん坊であっても魔物である限り生命活動にも魔力を必要とするらしい。
通常は親や魔力を宿す自然物から取り入れて、成体になるにつれ自分の力で魔力を作るのだそう。
この日、私はレジーナに魔力供給をして欲しいと師匠経由でクイーンにお願いされたのでデストラップ満載のベビドラルームへやって来た。
いつもは餌となる肉や魚を捌いたり、ビタミン補給の為のフルーツや薬草をスムージーにしたりして飲ませるくらいのことしかしていないのだが何故かいきなり大役を任されてしまった。
それと言うのも孵化する時に私の魔力をたらふく吸い込んだレジーナは、親竜のクイーンやアンペルを差し置いて私の魔力しか体内に取り込もうとしないからだそうだ。
なんで私がレジーナの好き嫌いに付き合わなきゃいけないの?
しかもまたあの感覚を味合わなきゃいけないのか。
魔力ぎゅるぎゅる吸われた時のことを思い出して何となくげんなりした。
けれど魔力は食事とは別に摂取必須の栄養素みたいなもんだし、摂り入れてもらわないと困る。
部屋の鍵穴に鍵を入れて回すとドアノブを持つ。
ただ普通にノブを回してしまうと登録者以外にぶっ放されるアンペルの雷魔法がここでも発動するので、一度グッとノブを扉に押し付けた。
すると引っ掛かる感覚の後、ノブがガコンと扉の中にへこんで行った。
そしてへこんだドアノブをそのままに扉を横にスライドさせるとガラッと横に開いた。
これは襖とかをイメージして私が配置したギミックだ。
普通に鍵で開けて終わりでも良かったが、どうせならちょっと捻りを入れてみようかなと思って魔法を使って作ってみたのだ。
この扉の仕組みを説明した時に師匠からは、
「やっぱり一緒にいると似てくるのかしらね」
と言われたが果たして何のことやら。
部屋に入るといつものようにレジーナは暖炉に頭を突っ込んでいて、それを体を小さくしたクイーンが見守っていた。
私が入って来たことを確認したクイーンは灰塗れのレジーナの首根っこを咥えて暖炉から出すと床の上に置いた。
衣類なら兎も角、生き物相手に洗浄魔法を使うのはコントロールが難しい。
しかし竜種は頑丈な皮膚を持つので多少強めに洗浄しても問題ないそうなので、私の練習がてらレジーナの体を洗わせてもらっている。
丁寧にやっているのもあるがレジーナも気持ち良いらしく自分から洗わせてくれることが多い。
まだ翼が未発達の為小さく正面から見ると完全に丸々としたトカゲにしか見えない。
灰で濃い緑色の体が白っぽく煤けているので大人しくしているレジーナに向けて手を翳した。
魔力リングが出現してじんわりと光が私の手からレジーナに移り包み込むと、汚れをふわりと浮かして綺麗にしていく。
洗浄魔法を掛け終わったら更に持って来たオイルを塗布して鱗と翼のケアは完了。
さて、じゃあ魔力供給を始めますかね。
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