実技試験前日2
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人だかりを縫って進むと中年の男女が門の前で紙を配っている。
女性の方は筆記試験の日に受付にいた人なのでもう1人は管理人さんの息子だろう。
彼女は受付の時と同じく宝箱の様な金属の箱を持っていて、紙を受け取った人にそこから出した何かを渡している。
「あれはなんダ?」
「筆記試験の時も似た様なことをしてたよ。多分本人確認的なものじゃない?」
「フゥン」
ニーナに敬語を使うのは何故かとても疲れるので勝手にタメ口にしたが、本人は全く気にしていないので嫌ではないみたいだ。
彼女の語尾が女神様みたいな特徴あるイントネーションなのは何か理由があるんだろうか?
それとも個性か?気にはなるが聞くのは躊躇われるところだ。
近くに行くと意外と皆順番を守っているらしい、と思っていたら夫婦の横に立て看板がありこう書いてあった。
【不正を働いた者は即刻受験資格を剥奪の後、身分に関係なく投獄する】
怖っ!
伝統ある学院の入学試験だし厳かになるのはまぁ良いとして、大分強めの警告だなと思った。
過去にやらかした人でも居たんだろうか。
列に並んで順番が来るのを待った。
途中、飽きター!と騒ぐニーナを立て看板の文章を見せて黙らせ無事その時はやってきた。
先にワタシが行ク!と言っていたニーナをその通り行かせると男性から名前は?と聞かれていた。
「ワタシはニーェナーヴェ!」
「ではこちらに手を入れて中身を出して見せて下さい」
「分かっタ!」
男性の指示で隣に立つ女性の持つ箱の前に立つニーナ。
ニーナが手を出すと箱が変形し口を開ける様に開いた。
手が飲み込まれるとニーナがうわぁ、うぇという何とも言えない言葉を発していた。
すぐに箱から手を抜くと何かを持っていた。
ニーナが手を開くとそこには親指くらいの石が握られていた。
「それは明日の実技試験で使うものだ。無くさずに持って来い」
「分かったゾ!」
「では次、名前は?」
「レヴェリアです」
事前にニーナの手続きの様子を見させてもらっていたので難なく終えることが出来た。
因みに箱の中は豆腐に手を入れた時のような何とも言えない生暖かく柔らかい感触がした。
誰かの体の中とかではないよね……?
一体あの箱にどんな魔法が掛けられているのかとても気になるが、中を見るのはかなり勇気が要りそうだ。
人だかりから離れた所で取り出した石をよく観察してみると赤褐色でかなり霞んでいる。
今まで師匠達に教えてもらってきた経験的にこの石はBランクっぽいなと当たりを付けた。
ニーナの石も見せてもらったが同じ色と透明度をしているので多分同じ物だろう。
魔鉱石はその透明度でランク分けされる。
Bランクは魔術付与可能な鉱石の中で最もランクの低いものを指し、街のお店でも入手可能な価格で数多く取り扱っている。
国によっては街中や道端で見つかることもあるくらいありふれた物もあるそうだ。
Aランクも場所によって種類は異なるもののお金を積めば入手可能な範囲だ。
ただし中には大きさや色味でSランクに分類されているものもあると言う。
Sランクはギルドで特別に流してもらうかダンジョンなどに入って採掘してくる必要がある。
貴族の中には装飾として使用することにより自身の財力をアピールする者もいる。
SSランクは採掘される殆どが各国で管理されており市場に出回ることはまずない。
採掘場を領地に持つ貴族や原住民、またはそれを取り立てた王族が褒美や装飾に使用してしまうためである。
購入しようとなると信頼されるだけの地位や家柄、功績を必要としそれとは別に鉱石の代金も掛かるらしい。
アルテナス神興国では3種類のSSランク魔鉱石が各公爵領で採掘され、それぞれの石の名前が3大公爵家に当て嵌められているのだとラリューヌさんが言っていた。
これは余談だがラリューヌさんのお屋敷で勉強に励んでいた時にこの話を聞いた時、3大公爵の名前にラリューヌさんの家の名字があって驚いた記憶がある。
地位の高い貴族だろうとは思っていたが、まさか公爵家だったなんて。
確かローレンスも公爵家の筈だが家名を聞いていなかったので残り2つの内のどちらかであることしか分からない。
石を失くさないよう握り締め、ニーナと森林地区へ向かった。
並ぶ前にまだまだ手続き待ちの人で溢れているので、帰り道が塞がれる前に移動しようと提案していたのだ。
ニーナは楽しみだナ!と大陸共通語で言った。
ちょうど良く見つけた森林地区のベンチに腰掛け、実技試験について確認をすることにした。
まず日程が明日の日付になっていて、次に集合場所は学院の門内広場であることが書かれていた。
時間は朝9時からと筆記試験よりも早い開始となりそうだ。
魔法薬、武器の所持は禁止。
魔道具の持ち込み可、ただし自身へ作用するものに限る。
魔道具を使用する者は試験前に申請すること。
これは魔物や魔人の中には意思疎通に魔道具を使用する必要があったり陸上での生活に慣れていない者の補助など、サポート目的で魔道具を着けている者への配慮だろう。
魔力や体力回復の魔道具は流通しておらず、魔法薬頼りなのでそこを禁止すればドーピングの類はある程度排除出来る。
私も当日はネックレスは外して髪飾りだけを申請する予定だ。
紙に書かれた内容を読み上げて欲しいとニーナに言われたので読み聞かせると、幾つか質問をして来た。
それに答えてから、読み書きは苦手?と聞くとウン。カロルに教えてもらったケド、分からなくなル。と返された。
この様子だとニーナは筆記試験を免除されていたのだろう。
カロルというのは使用人か何かかな?
中堅貴族レベルの後見人が居ないと免除されないだろうから、ニーナは魔人のお嬢様とかかも。
紙を読もうと必死に頭を抱える猫耳娘を見て、カロルさんも大変だったろうなと勝手に共感して労わっていた。
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