紹介3
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注文した軽食が続々と運ばれて来た。
なんか量が多い気がするけど、誰か呼ぶのかな?
いつもよりも多い料理を見て不思議に思っていると、店員が1人分の椅子とティーセットを持って入って来た。
それらを私たちがやって来た時と同じようにセッティングしてお辞儀をすると音もなく出て行った。
「師匠、これから誰か来るんですか?」
「ちょっとね。貴女も知ってる人よ」
私の知ってる人?
リーレットさんかラリューヌさんくらいしか思いつかないんだけど。
首を傾げながらも運ばれて来る料理に舌鼓を打っていると、扉がノックされ誰かが入って来る音がした。
扉の方へ顔を向けると、灰色の髪に赤紫色の瞳の美形がニコニコしながら立っていた。
もう何年も会ってないので一瞬出て来なかったが、特徴的な髪と目の色を見ると一拍遅れて思い出した。
彼は師匠と同じアルティ学院の卒業生で各地を旅していてその知識の多さと発表した論文の多さから大賢者と呼ばれているそうだ。
言っては悪いがこういう煌びやかな空間にはあまり縁の無さそうなイメージだったので、師匠同様慣れた足取りで店員を伴わずにやってきた事に驚いた。
「セルージュ、久しぶりね」
「セルージュさん、お久しぶりです」
「アムリネにレヴィ!息災だったかい?」
まさかセルージュさんが来るとは思わなかった。
師匠、リーレットさん、ラリューヌさん、セルージュさんの4人は同期で成績上位者同士かつ生徒会に所属していた繋がりがある。
3人は私が小さくてまだ自分で動けなかった頃、師匠の子育てを手伝ってくれていたのだがセルージュさんだけは他の3人とテンションが違った。
彼だけは凄く嬉しそうに甲斐甲斐しくミルクやご飯を食べさせてくれたり私のちょっとした愚図りにもすぐに反応して服や寝る位置をずらしたり。
更に大きくなると大陸で人気の絵本やオモチャ、子供服をお土産に持って来てくれるなどまるで本当の実子の様に扱ってくれていた。
それもあり4人の中では1番セルージュさんに懐いていたし、今も変わらず父親的立ち位置である。
もちろん全員子育て未経験者ながら優秀な魔法使いとしての知恵と技術を遺憾なく発揮して面倒を見てくれたのは確かだ。
そんな彼は私と会うと大抵親バカな父親みたいなことを言って師匠を呆れさせるまでがテンプレートだった。
「嗚呼、レヴィ!また会わないうちに随分と可愛くなったね。変な男に言い寄られたらすぐ僕に言うんだよ?丁度この間良い呪いの魔道具が手に入ったんだ!」
「そんなことは起こらないので大丈夫です」
「相変わらずね。馬鹿なことを言ってないで早くアレを出して頂戴」
こんな感じで居もしない″私に想いを寄せる男″への殺意を年々滾らせている彼をあしらうのがここ数年の恒例のやり取りである。
そして今日も何やら手土産を持って来てくれたらしく、やや緩みきったニマニマ顔になりながら布の塊をテーブルの中央に置いた。
サンドイッチを食べ終えた師匠がナプキンで手を拭くと置かれた布の塊を手に取った。
大きさは手のひらから少しはみ出る程度、おしぼりくらい。中身はなんだろう?
屋外で食事中だから危ないものやグロテスクなものではないはず、だよね?
ちょっとハラハラしながら師匠の動きを見守っていると、手に持った布を私に差し出して来た。
「え、私に?」
「そうだよ。レヴィが学院に行きたいって言ってから苦労して探したんだ」
「その髪のままじゃ目立つでしょう?ずっとローブを被りっぱなしじゃあ不便だしね」
包んでいる布を開けてみると、シルバーの蝶の金具が付いた蒼色のリボンが出て来た。
金具の中央には透明な石が嵌っている。
リボンの造りは生地も含めてしっかりしていて破れたりしにくそうだ。
セルージュさんがリボンについて説明してくれた。
金属部分に髪を挟む所があり着けると魔法で外れない様にロックされるので大きな衝撃がない限り落下する心配は無いそうだ。
透明な石はフレアクリスタルで透明度が高く質の良いものをセルージュさんが探しラリューヌさんが髪色を濃い藍色に見える魔法を魔術式として石に組み込んでくれたらしい。
金属部分の加工はリーレットさんが、リボン自体にも防塵防火などの魔法を込めた刺繍を師匠が施してくれたという。
髪色を誤魔化す程度の効果しか今は付与していないが他の魔術式を追加で組み込むこともできるし、より貴重な魔鉱石に付け替えることで別の強い効果も付与出来るそうだ。
凄い……もはや付け替え可能な宝具みたいなものでは?
いつの間にこんなものを用意してくれていたんだろう。
師匠達は以前から街に降りる度にローブを被るのは大変だと言っていた。
確かにこれから森を出る機会は多くなるだろうから、必要以上に見せなくて済むならその方が良いかも知れない。
筆記試験の時もそうだったけど、入試にはかなり大勢の人が参加していた。
魔物寄りの魔人であるジャスパーを虐めていた少年達の私の髪色へのリアクションを見ると、やはり初めから髪を晒すのは不安がある。
髪色で落とされることはないと思うが、少しでも芽は摘んでおきたいところだ。
「着けるか着けないか、タイミングはレヴィに任せるわ。好きに使いなさい」
この言葉を聞いて師匠達は私に選択肢を用意してくれたのだ、と理解することが出来た。
もし学院に落ちてもそこで終わりではない。
師匠の代わりにパピヨンで調合する事になるとしても、1番距離的にも近いアルテナス神興国は取引で立ち寄ることも多いだろう。
外出が多くなれば交渉したり取引をすることもある。
その時にローブを被ったままではいずれ信用がなくなってしまうかも知れない。
相手の素性を気にしない者は相応にやましいことがあるものだ。
今後この髪色が不利に働くこともあるだろうから、そんな時に使えるのであればとても助かる。
「ありがとうございます!筆記試験の時、ローブを外したら注目されてしまったので助かります」
「喜んでくれて良かった。本当は艶やかなレヴィの髪を隠すなんて勿体ないことをさせたくないんだけど……」
「セルージュ、貴方気持ち悪いわよ」
「だって!僕にとっては娘みたいなものだし、レヴィはまだ13歳だよ!?女の子ならもっとオシャレとかに興味が出て来ても良い年頃だろう!?」
「そんなもの人それぞれでしょう」
師匠の呆れた様子にめげずに言い募るセルージュさんを見てやはりこの人たちデキてるよなと確信した。
アレイストさんもそれっぽいこと言ってたもんな。
思わずニヤついてしまっていたようで、私の顔を見た師匠から気持ち悪い顔になっているわよと指摘されてしまった。
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