紹介2
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アレイストさんと師匠のやり取りはしばらく続いたが、他のお店にも行きたいらしい師匠が懐から出した注文リストをアレイストさんに押し付けたところでそれは終わった。
どうやら店には置いていない貴重な素材も含まれているようでリストを読んだアレイストさんはまたこんな無茶な注文を!と頭を抱えながら店の奥へ引っ込んで行った。
「じゃ、行きましょうか」
「え!?師匠良いんですか?ご挨拶とか」
「良いのよ。アイツもう発注のことで頭一杯だろうし、レヴィの顔見せは終わったもの」
そういえば私ローブ被りっぱなしだけど大丈夫だったかな?
師匠に聞いてみると悪戯っ子の顔で笑うとハッキリと言い放った。
「それこそ顧客の顔も分からないなんて店主として失格なんじゃない?」
鬼だ……鬼がいるぞ。
物凄く優秀だとしても人間として何かが終わってたら嫌だ……。
引き攣った笑いをしつつ店を出て行く師匠に着いて行くことにした。
というか選択肢がそれしかないので従う他ない。
ただ椅子から立ち上がった師匠が杖を一振りして手に現れた小瓶を机に置いたのだけはチラッと見えた。
顔見せ云々と言っていたが、もしかしたら他の用件もあったのかも。
次のお店はお婆さんが営む魔法の掛かった衣類を売っている服屋だった。
店の隣には魔法の掛かった雑貨を売るお店があり、魔法関連のお店が集まっているようだ。
通りに何も注意書きがなかったが、一般の通りとは違う区画になっているようだ。
師匠が寄ったお店は学院の制服を卸している老舗の名店だそうで、入学しなくとも知っておく価値があるそうだ。
「レヴィに渡したそのローブ、ここで特注してラリューヌと魔術式を組み込んで作ったのよ」
「そんな高級品だったんですか!?」
「高度な魔術を付与するにはそれなりの物が必要になるのよ」
「うわぁ」
店内の値札はどれもこれも金貨10枚以上はするものばかり。
人里に降りない私でも一般的な服の相場は銀貨5枚程度だと知っている。
貴族や専門職となるとまた別の話で、一着金貨10枚以上は当たり前だ。
だけどここは貴族御用達でもなければ騎士や冒険者、魔法使い専門でもない一般の人も入れる普通のお店、のはずだ。
他のお店と同じように衣類に魔法が掛けられている、或いは魔法を掛けることが出来る素材の衣類を扱っている。
カリギュラの物も見たことがあるが、ここまで当たり前に高価な品が並んでいる所はなかった。
これが学院御用達か……さぞかし衣類の質や付与された魔法効果も高いんだろうな。
大事に着てはいるけど、もう少し丁寧に洗浄魔法を掛けようと心に誓った。
師匠はここでもお婆さんに小瓶の入ったバスケットと紙を渡すと、店を出てしまった。
お婆さんとは殆ど話をしていなかったので私も軽く自己紹介と会釈をして店を出た。
それから数軒、同じように魔物素材のお店や冒険者向けのお店まで一通り寄ってようやく師匠の足は止まった。
ただしそこは私たちの泊まっている宿ではなく、城下町の中でもひときわ豪華なカフェだ。
ホテルのアフタヌーンティーを彷彿とさせる白を基調とした店内に大きなシャンデリア、恐らく貴族と思わしきドレスを着た女性達。
その中でローブを纏った私たちはとても浮いていた。
ひそひそと周りのご婦人達が噂しているのを聞きながら俯き加減で迷いなく歩く師匠の後ろを着いて行く。
この人、本当カフェとか軽食とか好きだよな。
そのせいで野菜足りないから食べさせるの大変だけど。
魔法薬で補うから良いのよ、とか言ってエナドリ感覚で軽率に何でも魔法薬で済ませようとするので実物を摂らせようとすると大変なのだ。
遠い目で日々の食生活を振り返っていると、カウンターに着いた師匠が何かを提示して店員に声を掛けた。
「2人よ。1席空けてもらえるかしら?」
「!、只今ご用意致しますのでお待ち下さい!」
店員は師匠の提示したものを見るや否や慌てた様子でバックヤードに駆けて行った。
ドレスのご婦人達ですら肘掛け付きの椅子に座って待っている人気そうなお店で待ち時間も殆どなく席を用意してもらえるってどんな手段使ったのこの人。
ものの数分で先程の店員がやって来て興奮気味にこちらになります!と師匠を案内し始めた。
待ち時間もなく入って行く私達を見て今も待っている彼女達からまたひそひそと話し声が聞こえて来た。
女の人って聞こえるだろう距離であえて声を顰めるのなんでだろう。
師匠は慣れているのか全く動じた様子もなく店員の後ろを着いて行く。
お店の豪華な内装を見回している私はきっとかなりの田舎者に見えているんだろうな。
でも現世のテレビで見たようなセレブ御用達の雰囲気漂うキラキラした空気なんて滅多に味わえるものじゃない。
躓いてしまわないかと思うくらい足への衝撃が少ない質の良いカーペットを慣れない足取りで進んだ。
広いホールは利用客でいっぱいで忙しさを感じさせない優雅な動きでウェイターが注文を取ったり料理を運んだりしている。
ホール、ガーデンスペースを抜けて奥へ行くと階段へ案内された。
階段を登ると幾つもの扉があり、そのうちの一つを開けると中へどうぞと声を掛けられた。
中は下のホールを個室にしたような内装で花飾りやシャンデリアまでそっくりだ。
部屋の中心には猫脚のテーブルと椅子が2脚あり店員が片方の椅子を引き師匠がそこへ腰を下ろした。
続いて向かいの椅子を引き私も同じようにすると完璧なタイミングで椅子をセットしてくれた。
せ、セレブだ……。
私が落ち着きなく周囲をきょろきょろしていても気にせずメニュー片手に店員に注文をする師匠。
因みに私は毎回師匠と同じ物を食べるのでメニューは見ない。
理由は何を頼んだら良いのか分からないのと、私が一緒に食べた方がちゃんとバランスの取れた食事を頼むことが分かったからだ。
案外面倒見が良い師匠はちゃんと私の好きそうな物も頼んでくれるし、食べられるか事前に聞いてもくれる。
こういう所は普段だらしないとは思うけど人でなしではないよなと思う一面である。
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