消えた竜種9
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私が意味を理解出来ていないことに気が付いた師匠は、笑った顔を崩すことなく説明を始めた。
まずフレアドラゴンについて。
竜種最強と呼ばれるこのドラゴンは、その気性の荒さと余りの強さに各国が合同で討伐隊を組み北にある生息区域を攻め滅ぼした経緯を持つ。
基本他国を見下し、時に戦争を吹っ掛けて属国にしてしまうヴィアラクテア王国が同盟を組んだ唯一の出来事だと言われているとか。
フレアドラゴンの特徴は明るさによって黒くも見える深緑色の体と長い尻尾の先に金属の大きな棘が無数に付いていることだ。
無尽蔵とも言われる魔力を持つフレアドラゴンは尻尾に魔力を送り込むことで金属部分を帯電させることが出来る。
尻尾の先にある棘で発生させた雷を尻尾の先端から真っ直ぐ伸びる一本の棘に集めることで強力な雷属性の一撃を放つそうだ。
本来竜種の殆どは火属性か風属性しか持たない。
クイーンも火属性魔法が得意とのことだが、風属性魔法も使う事が出来る。
しかしアンペルはそれらに加えて雷属性魔法も使えることになる。
これはかなり異質なことだという。
魔物も人も得意な属性というものがあり通常はその得意な一属性しか使えないことが多いと言う。
師匠は最初、火属性魔法しか使えなかったそうで修行してなんとか他の属性魔法も戦闘レベルまで使える様にしたのだとか。
ここで言う属性魔法は魔力をそれぞれの属性に変化させ操ることで、生活魔法は既にあるものを操ったり引き寄せたりするという決定的な違いがある。
入浴や料理では既にある水を操ったり多少温度を変えたりする程度で、熱湯にしたり洗浄するのはそれよりも高度な操作が必要な魔法ということになる。
つまりフレアドラゴンが脅威と見做されたのはその凶暴な気性に、かつ魔法を三属性も使えるからってことか。
討伐隊により棲家を追われたフレアドラゴンは各地に散り、その殆どの個体は大陸外のダンジョンへ向かったとされる。
僅かに大陸に残った個体はその大半が東の国へ行き、他種族と交わって生きているとされるが真相は定かではないらしい。
アンペルは大陸に残った内の西を選んだ個体の子孫じゃないかとのことだ。
竜種は総じて長寿なので300年は当たり前に生きるらしいがドラゴンは500年を超えるという。
フレアドラゴン狩がいつ頃かは分からないが寿命的に少なくとも1000年以上前なのは間違いない。
そして意外にもアンペルは若いドラゴンだそうで人間で言うとまだ20歳に届くかどうか位らしい。
クイーンは姉さん女房なのよ、と師匠が言うのを聞いてじゃあさっきのアンペルの話し方は一体?と地味に気になった。
聞くのも馬鹿馬鹿しい疑問なのできっと親竜の話し方が移ったんだろう、と勝手に結論付けたがもう一つ気になってしまった事がある。
……クイーンって何歳なの?
ただこの疑問は口に出したら最後命の覚悟を必要とする可能性があるので、胸の内にこっそりと秘めておくことにした。
触らぬ神に祟りなしってやつだ。
アンペルについて説明したあと師匠が付け足す様に、一般の人がドラゴンに遭遇する確率は限りなく低くて一生に一度あるかないかだそうよと言った。
え、それなのにこの人カリギュラの商業ギルドで公衆の面前にクイーンを喚び出したの!?と再度当時の彼等に同情することになった。
師匠の説明を聞いてから再度3匹の竜を見ると、最初よりも印象が変わって見えた。
よくよくベビドラを観察すると見た目の体色は父親だが目の色は母親、尻尾は父親で翼が母親似だ。
使える魔法の有無は分からないが見た目に関しては両親の種族的な特徴を色濃く受け継いでおり、もしも事の次第が当時討伐隊を編成した国々に知られたら大変な事態になるだろうと容易に想像がついた。
そんなヤバいたまごを安易に孵化させて良かったんだろうか。
今更になってちょっと心配になってきた。
俯いて膝に乗せた拳をぎゅっと握り締めると、そこへ横から手が重ねられた。
ハッと顔を上げるといつの間にか椅子から立ち上がっていた師匠が私の手に自身の手のひらを乗せてこう言った。
「ちょっと脅かし過ぎたわね。貴女のしたことは未だ誰も成し遂げたことのない未知の領域。今はまだ公に出来ないとしても、いつか必ず解明するから安心しなさい」
「師匠……」
「それまではアンペルとその子供については言い触らさないこと。良いわね?」
「はい。……師匠、ありがとうございます」
その言葉を聞いた瞬間、握り締めた拳から力が抜ける感じがした。
開いた手のひらはびっしょりと手汗で濡れていてそこでやっと気が付いた。
そうか私、緊張してたんだ。
もしかしたら国から拘束されたり実験されたりするかもなんて色々考えて、今まで平和な日本で大きなトラブルなく過ごして来ていた私が緊張しないわけなかったんだ。
「良いのよ。それで早速だけど、貴女あの子に名前を付けてやってくれる?」
クイーンと戯れるベビドラを指差していつもの雑用を頼む様な軽いノリで言い渡された指示に、再度手のひらがじっとりして行くのが分かった。
おいおいおい!なーんでそう、貴女って人は!見直したばっかりなのにぶち壊すようなことしてー!!
そうは思っても、師匠だから言っても無駄か……と過去の経験からすぐに諦めてしまう辺り大分毒されてしまっているな。
なんだかんだ従ってしまう私が悪いのか、それともひたすらに横暴な師匠が悪いのか。どっちもか?
結局いつも通り言うことを聞いてうんうん唸ったものの、あんまり良い案が思い付かずクイーンの娘ってことでこれは?と出したものが即採用された。
これが後に私の最初の使い魔となる大陸一美しいフルトゥレドラゴンと大陸最強のフレアドラゴンのハーフ、レジーナとの出会いである。
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番外編はここで終了です。
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