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消えた竜種6

閲覧ありがとうございます!



たまごに魔力をぎゅるぎゅると吸われること数分。


やばい、なんかクラクラして来た。



魔力が急に減るとまるで貧血みたいな症状が出るんだ……知らなかった。


現実逃避しながらも吸われるがままに魔力を与え続けた。

師匠もクイーンもアンペルも、みんなシーンと静かにそして真剣に見守っているのが見なくても分かった。


その空気に呑まれたのか、それとも単に魔力が切れてきたのか。

だんだん戸惑いよりも呆れの気持ちが湧き上がった。



……このたまご、食いしん坊過ぎでは?




さっきまで派手に動いていたのに私の魔力を吸い上げている間はなぜかとても大人しかった。


師匠は今まで魔力が貯められなくて〜と言っていたが、女神様曰くこのたまごは″呪われたような″状態だったという。

なら別にたまご自体の魔力は枯渇していないんじゃないか?


殻を破るには足りないにしても師匠は休眠させていたと言ってたし。

……なんか怪しくなって来たな。女神様に聞いてみるか。





ーねぇ女神様。


『なに?今良いところなのだけど』


ーえ、今なにしてるの?


『貴女の記憶から掘り出した漫画を読んでいるワ。ちょうど主人公がこれから…』


ーちょちょ、こんな時に何やってんの!?さっきまでドラゴンに殺されかけてたんですけど!?


『貴女の師匠の気配を感知したから引っ込んだのよ。だってあのドラゴン、アンペルだったかしら?あの魔女と仮契約しているもの』


ー仮契約?そんなの聞いたことないけど。


『完全な契約ではないから通常の使い魔と違って人数の制限はないワ。ただ力ある魔物にしか出来ないし、仮契約による恩恵は意思疎通が出来る以外にはないから殆ど使われないワね』


ーそうなんだ……って違う!今聞きたいのはそれじゃなくてこのたまごのことなんだけど、もう孵化出来そう?


『そのたまご?もう孵るじゃないの。……ってまだ貴女は分からないんだったワね』




その子、私たちの魔力が気に入ったみたいよ。

孵化に必要とする以上に吸っているワ。




そう言うとくすくす笑いながら女神様はじゃあもう戻るワね、と引っ込んでしまった。



つまり、そういうことらしい。


女神様の言葉の意味を理解した私はたまごに魔力を供給するのを止めた。

正しくは装置から手を引き抜いた。


すると餌が送られなくなったたまごは!?と驚きを表す様に跳ねたし、師匠達も驚いた顔で私とたまごを見比べ師匠が意思疎通の出来ない2匹の代わりに疑問を投げ掛けてきた。




「レヴィどうしたの?」


「師匠、このたまごはもう元気いっぱいみたいです。私が魔力を送る必要はありません」



私の言葉を理解しているのかたまごがビクッと跳ねて微動だにしなくなった。

また元気ないアピールをしようとしている、と察した私はたまごに向かって畳み掛けた。



「それより師匠、殻を破るのに充分な魔力を蓄えておきながら怠惰に他から貪るばかりなんて、とても外で生きていけるとは思えませんよね」



私の芝居がかった言い方にハッと何かを察した師匠が、話を合わせる様に続けてくれた。



「そ、そうね。自力で殻を破れない子はすぐに死んでしまうかも知れないものね」


「せっかく皆が心配して孵化を手伝っているのに、それを無駄にするたまごは割ってしまう方がいいかもしれません」



私の明け透けな言い方にアンペルが鼻息を荒くしたが、すぐさま隣にいたクイーンに鼻先を掴まれて黙らされていた。


しばしジッとしていたたまごが物騒な私たちの会話にぶるぶると振動を始めたので、金属製の装置を地面にガツンと軽く当てる。

その音を聞くとついに観念したのか、今までとは違う不規則な硬いものを叩く音と転がる様な動きを見せた。



師匠とドラゴン達が驚き食い入るように見守っているが、私はやや半目になって白けた眼差しを送った。



なんだろう、命の誕生の瞬間ってもっと感動的になるものだと思っていたんだけど、凄くコレジャナイ感ある……。


今までのやり取りで全てが台無しになった気がする。






そんな思いを抱きつつも、いざ殻にヒビが入り一生懸命に出てこようとする姿を見ると胸にクるものはあった。

隣では師匠が涙ぐんでいてむしろそちらに驚いて関心を持って行かれた気もする。


何はともあれたまごは無事に殻を破ることができ、あとは中の赤ちゃん竜の体調を確かめるだけだ。



ぱきぱき、ぱりぱり。

分厚いのに軽い音で割れていく殻の中から黒い何かがもぞもぞしているのが見えた。


ばきん!と一際大きな音を立てて割れた殻を頭に乗せて黒いドラゴンが……ってドラゴン?



現れたのはドラゴンというより……


「トカゲ……?」



大きな黒いトカゲはクイーンそっくりの金色の瞳をくりくりさせながらきゅ?と可愛らしく鳴いた。

その体は私から散々魔力を吸い取ったお陰か丸々としており、心なしか鱗も生まれたてとは思えないほど艶々と輝いている。



「くるるるる!」

「きゃるるる!」


喜んで周りをスキップするアンペルとたまごに顔を寄せるクイーンの二匹を尻目に師匠がなんか思ってたより肥えてる……?と呟いたのを聞いて、全力で頷いてしまった私は悪くないと思う。




とりあえず無事に生まれたということで、ベビードラゴンをバスタオルに包んで一度パピヨンに連れて行こうと師匠が言った。

それに同意した私たちは師匠の用意した転移魔法陣で帰ることになったのだが。


え、2匹とも来るの?


来る気満々のアンペルにパピヨンが壊れないか少し不安になった。



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