消えた竜種3
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番外編の続きとなります。
たまごだ……あのドラゴンのだよね?
葉を掻き分けてたまごの全容を確認した。
大きさは両腕でやっと抱えられるくらい?で結構大きめ。
今はまだ8歳だから腕も大人の時より短いし、大きさもそうだけど重かったら持ち上げられないかも。
初めて見るドラゴンのたまごに、さっきまで追われていたことも忘れて見入ってしまった。
ファンタジーなそれをじーっと見つめていると突然女神様から話しかけられた。
『本当に生きているのかしら?』
ーえ!?それはどういうこと?
『だってこのたまご、全然動かないワ。魔力感知ではもういつ孵ってもおかしくないのに』
ー魔力感知ってなに?たまごって動くの?
『あら、知らないの?』
女神様曰く、まだ完全ではないが今の状態でも魔力感知で生命反応くらいは分かるらしい。
そして生命反応があるはずなのに魔力が全く循環しておらず、動きも生まれそうな割に鈍いという。
それって……
ーこのたまごが孵らないってこと?
『このまま魔力が循環せずに殻を破れなければそうなるでしょうね』
ー魔力がないと殻を破れないの?
『たまごから孵る魔物は魔力を使って殻を自力で破ることで外界で生きて行く力を証明する必要があるワ』
ーじゃあ殻はすぐ破れるようなものじゃないの?
『そうね。外からの衝撃で壊れないためでもあるから、それなりの強度だと思うワ』
つまり殻をいつまでも破れない個体では生きていけないから切り捨てるということだろうか。
卵生の生き物の中には複数産んでもたまごが孵らないことはままあることと聞いたことがある。
嫌な予感が頭を過ぎったその時、女神様がでも……と言葉を続けた。
『おかしいわ、このたまご。魔力感知では強い生命反応があるのに魔力だけが抑え込まれているように弱々しいワ』
ーそれってただ弱ってて殻を破れないわけじゃないってこと?
『……分からないワ。こんな状態見たことがないもの。ただ魔力の循環が悪いだけなら私の魔法が通用するかも知れないワ』
ーどうやったらこのたまごを孵すことができるのかな……。
自然の流れに逆らうことになるのかも知れないけど、もし手があるのなら出来る範囲で尽くしてあげたいとは思う。
私の考えていることが分かっている女神様はただ一言、手を当てなさいと言った。
なぜか理由を聞く気になれず、無言で言われた通りにたまごに両手を当てた。
冷たい、つるりとしたたまご。
魔物のたまごを見たことがないから分からないけど、確かにさっきから作り物みたいに微動だにしていない。
孵化直前ならもう少し動いたりしても良いだろうに。
女神様が魔法を使い始めたのか、両手が暖かくなりと手首に魔力リングが出現して光を帯びた。
だんだんと熱がたまごに移る感覚と共に光がたまごを覆っていく。
次第にたまご全体を光が覆い、手のひらよりもたまごの方が暖かくなる感じがした。
私の手から魔力リングと光が消えると今度はたまごの中がうっすら透けるように赤く脈打っている。
これが、本来の孵化間近のたまご?さっきと全然違う。
生命力に溢れた鼓動を触れている殻越しに感じる。
ー女神様凄い!
『私にかかればこんなものよ!呪いに近いものが絡み付いていたから魔法で取り払ってみたワ!』
ーえ、呪い?なんでそんなものが……。
『さぁ?でもこれで孵化出来るんじゃないかしら?』
ーそうだね!よかった。
ホッと胸を撫で下ろした瞬間、言い知れない不安が込み上げた。
良かったけど、なんだろう?何か忘れている様な。
フーッ、フーッ、フーッ
あれ?なんか変な風が吹いてる?
嫌な予感がしたのでたまごから手を離して後ろを振り返った。
振り返ると、そこには私を追いかけ回していたドラゴンがすぐ後ろにいた。
たまごの前にいる私を見てかなり怒っているようだ。
目の前で先程の咆哮を食らい、加えて殺気がビリビリと皮膚を刺激して今度こそ脚が震えて立ち上がれなくなってしまった。
こちらを見据える赤い瞳の中に見える瞳孔は完全に開いていて、かなりの興奮状態であることが窺えた。
外では深緑色に見えた体は薄暗い洞窟の中では真っ黒に見え、大きい体が更に大きく見えた。
咆哮の音量にまたもや耳を塞いで体を縮こめて耐えていた。
たまごの近くにいるお陰か尻尾による攻撃は受けていないが、またいつ飛んでくるかも分からない。
少しでも怒りをおさめようとたまごから後ずさる様にじりじりと離れて行く。
すると口を大きく開け大きな魔力リングを出現させ始めた。
え、これってまさか!さっきのブレス!?
サッと顔を青くして逃げなければ!と必死に足を動かそうとするも恐怖で竦んでしまって全く言うことを聞かない。
ドラゴンの前でじたばたする私に向かって一切の情け容赦ない一撃が加えられようとした刹那、
「アンペル!!待ちなさい!!!」
いつもガサツで無茶振りばかりしてくるのに、なんでか良いところはちゃんと押さえてくる心強い緋色の魔女がするりと飛び込んできた。
私は緊張と安堵が混じって掠れた声でその人を呼んだ。
「し、師匠!」
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