歴史1
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嬉しそうな様子のアスマリアがベッドに腰掛け滑らかな金色の髪を指に巻き付けながら言った。
「アルティ学院は我がアルテナス神興国が誇るこのマチピロス大陸の最古にして最高の教育機関よ」
そういえば私のいるこの大陸の名前はマチピロス大陸というらしいのだ。
師匠の友人の一人で大賢者と呼ばれるセルージュさんが地図を見せて教えてくれたことがあった。
彼もアルティ学院の卒業生で、ずっと世界各地を旅しているとか。
人類史が記録される1000年より前の歴史や大昔の宝具についても調べているんだと言っていた。
師匠が宝具を探しているのはその辺りも関係しているのかな?
「大陸では南にあるヴィアラクテア王国が最古と言われているけれど、我がアルテナス神興国も規模は小さいけれど約1500年の歴史がある国よ。アルティ学院は建国から100年と経たないうちに創設されたと言われているわ」
曖昧な言い方に引っ掛かりを覚えていると、アスマリアが困ったように笑いながら言った。
「実は人類史が記録される前のことだから、どんな経緯で誰が創設したのかも分かっていないの。建国史も記録が殆どなくて国名から女神信仰の原点と言われているけどその詳細は聖書に記載されている程度のことしか分かってないわ」
まるで誰かがわざと記録を残さなかったみたいに綺麗に抜け落ちているのよ。
内緒話をするように小さな、けれどよく聞こえる声でそうアスマリアは言った。
「じゃあカリギュラみたいに建国した人の名前とかの記録は残ってないの?」
「初代国王の名前はモレストスだと記録が残っているわ。でも何故建国に至ったのかもどうやったのかも分からないの。当時は神々による大戦の最中でこの国も何度も戦火に巻き込まれたそうだから、そのせいで紛失してしまったのかも」
この世界の歴史は色々と複雑な事情がありそうだ。
そういえば共生しているはずの女神様についても私はあまりよく知らない。
確か1500年前に生きていたそうだからアルテナス神興国の建国について何か知っているかも。
ーねぇ、女神様はアルテナス神興国について何か知ってる?
『……さぁ。私が生きていた時には聞いたことのない国だワ』
うーん、なんか含みがあるなぁ。
今分かっている情報は、大陸の大半の国に信仰されている女神がアルテナスという名前で聖書には彼女の教えや戒めなどが書かれている。
その中には女神が信仰されるまでの経緯を物語のように纏めた書物も含まれているらしい。
生憎と師匠は信者ではない為パピヨンには聖書を置いていないそうなので私は見たことがない。
ラリューヌさんは出身国が信仰しているそうで貴族なのもあり信仰していると言っていた。
神職者ではないので持ち歩いてはいないらしいが自宅に聖書を持っていて内容を少しだけ聞いたことがある。
女神アルテナスの成り立ちは幼い子供に読み聞かせられるよう簡単にリメイクされたものが出回っているそうだ。
尋ねるとアスマリアが聖書にも書かれているその話を教えてくれた。
むかしむかし、みなみのもりにめがみさまとよばれるうつくしいしょうじょがすんでいました。
あるとき、きたのくににすむせいねんがもりにやってきてしょうじょとこいにおちました。
ふたりはきたのくにへいきけっこんしきをあげました。
それからすうねんごふたりのあいだにおかあさんにそっくりのかわいいおんなのこがうまれました。
おんなのこはおとうさんそっくりのうつくしいきんいろのかみとおかあさんそっくりのあおいろのひとみをもち、おおきくなるにつれどんどんとうつくしくなっていきました。
あるひしょうじょがもりにあそびにでると、ひとりのせいねんにであいました。
かっしょくのはだにあかいひとみをもつうつくしいせいねんでした。
せいねんはみなみのもりのせんしで、みなとのしょうにんをしているせいねんといっしょにきたのくにへしごとにきていました。
しょうじょにひとめぼれをしたせいねんはきたのくにとみなみのくにをなかよくしようとかんがえました。
みなみのくにはまわりのくにとわざとけんかをしてけらいにしてしまうくにでした。
ひがしのくにをけらいにしたみなみのくにはちょうどきたのくにをねらっていたのです。
だんだんとみなみのくにときたのくにのけんかははげしくなりました。
けんかはたいりくじゅうにひろがりさまざまなくにをまきこんでおおきなおおきなけんかになってしまいました。
けんかでけがをしたひとをみてかなしんだしょうじょはおかあさんからとくべつなちからをもらってめがみさまになりました。
めがみさまになったしょうじょはせいねんたちとちからをあわせけんかをおわらせました。
しかしめがみさまはちからをつかいはたしてしまい、ながいねむりについてしまうことになりました。
せいねんはかなしみながらもめがみさまがおわらせたけんかをまたはじめさせないためにあたらしいくにをつくるためのたびにでました。
おしまい
以上がアルテナス神興国の建国に関わる重要な文章として代々語り継がれてきたらしい。
この他にもあるそうだが、アスマリアが知っているのはここだけだった。
そういえば私が4、5歳の時にパピヨンに遊びに来たラリューヌさんが何度か読み聞かせをしてくれていた。
その一つにこんな感じの内容があった気がする。
この少女が女神アルテナスで、青年が建国者のモレストスということなのかな?
私の知りえる知識ではそう推測するのが限界だった。
でも幾つかの疑問が新たに浮かぶことになる。
アスマリアの容姿って、どちらかというと女神アルテナスの住んでいた北の国寄りじゃない?
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