秘密の交流6
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王妃様のお茶会からさらに数ヶ月後のこと。
あのお茶会で披露された茶葉が思いの外高評価を受けたそうで、あれからも定期的にお茶を納品していた。
師匠にはかなり前からお茶の試飲先が見つかったと伝えて転移魔法陣で移動する旨を伝えていたので、魔法での移動について深く追求を受けることはなかった。
今は納品先として交流していると伝えている。
本当は魔法陣なしで移動しちゃってるけど、さすがにそれは言えなかった。
少し前に9歳を迎えた私は、相変わらず日々雑用やら健康茶作りやらで忙しくしていた。
そして今日も今日とてアルテナス神興国の王宮にいるわけだが。
部屋に到着すると何故かローレンスがソファに腰掛けてテーブルに向かって何かをしていた。
アスマリアはベッドに仰向けに寝転がって何やらぶつぶつ呟いている。
この状況は一体?
近衛のローレンスが座っているなんて前に愚痴を聞いた時以来じゃないかな。
しかも私来たけど集中してるっぽいし、話しかけて大丈夫?
戸惑ってしばらく棒立ちしていると、やっと私に気がついたローレンスがアスマリアに声を掛けた。
「アスマリア様、レヴィが到着していますよ」
「あら!ごめんなさいねレヴィ。ちょっとぼーっとしてしまって」
「大丈夫だよ。それよりどうしたの?二人ともいつもと色々違うみたいだけど」
あれから変わったことが幾つかある。
まずローレンスがアスマリアを姫殿下ではなく名前で呼ぶようになったことが一つ。
今までの呼び方は特に強制や決まりではなかったそうで、ただローレンスの心が離れていたからだったようだ。
そしてアスマリアの態度が身内以外にもかなり優しくなったことが一つ。
これは気安くなっているとも取れるので立場的にやり過ぎるとナメられるので注意が必要である。
最後に近衛と侍女が増えて、ローレンスが鍛錬場へ通えるようになったことが一つ。
ローレンス曰く今までの入れ替わり立ち替わりがなくなり、ちゃんと固定の人がつくようになったらしい。
一見すると良いことづくめに見えるかもしれないが、そうも言っていられないようだ。
以前これを教えてくれたローレンスは複雑そうな顔でこうぼやいていた。
「他の騎士団から見下されなくなったし鍛錬場に通えるようになって良かったけど、実はそれだけじゃないんだ」
銀色の髪をかき上げて困ったように溜め息を吐きながら彼は続けた。
「アスマリア様のお茶が特別だと知った貴族が恩恵に与ろうとこぞって近衛候補に自身の護衛や学院の騎士科卒の身内を送り込んで来たんだ。陛下からの勅命で護衛を強化する必要があるのだが、その選別をアスマリア様が俺に丸投げしてきて……」
うわぁ。
口から出たかも知れないくらい心の底からそう思った。
せっかく待遇改善したと思ったら一気に重い役割を課されてるじゃん。
まだ10歳そこらのローレンスに任せる仕事じゃないだろ。
そう思いつつもアスマリアから言われたのなら断る選択肢は存在しないわけで候補の経歴や家の立ち位置、実力に性格など諸々を考慮してなんとか選び出してリストアップしたものをアスマリアが丸々提出したそうだ。
ここで問題となるのが、私が来ている時の夜警にローレンス以外が来た時だ。
近衛にローレンス以外の年上騎士が着任したので基本はそちらに任せることになる。
そもそも成長期の子供に夜警は良くないしね。
ということはあの時って相当切羽詰まってたんだな、と改めてローレンスに同情した。
夜警の近衛が変わるなら私が夜に来るのはマズいかな?と聞いた時、ローレンスはムッとした顔をしてそっぽを向き拗ねたように言った。
「……別にそうは言っていないだろう。それに新月は俺が夜警を申し出ているから問題ない」
「え、あ、そうなんだ……?」
「ふふふ!ローレンス頑張っていたのよ!」
何やらアスマリアが物知り顔で言っているが、これまでのローレンスの頑張りはあんまり分かっていなさそうだったのでそっかと言ってスルーしておいた。
何はともあれこれからも私はここへ来て良いようなので一安心である。
なんだかんだあったけど、この世界に転生して初めての同年代との交流だ。
価値観や考え方を学ぶのにも良いんじゃないかと思う。
たとえ相手が一国の王女様や公爵家の三男とかいうスペシャルVIPでも。
という回想はここまでにして、私の疑問にアスマリアがやや疲れた顔をしながら答えてくれた。
「ついこの間、お兄様が正式にアルティ学院へ通うことが決まったの。王子1人を入学させる訳にはいかないから、同い年の貴族令息を集めることになって」
「ローレンスも選ばれたの?」
「えぇ」
「アルティ学院って入試があるの?」
大陸最古にして最高の教育機関であることや師匠とその友人たちの母校であることは知っているのだが、具体的なことはあんまり知らなかった。
貴族や王族など地位や後ろ盾がないと通えないのだと認識していたから、そもそも縁のないものだと思っていた。
普段アスマリアの疑問に答える機会の多い私が質問したのが珍しいのか、心なしか嬉しそうな顔で彼女は自身の金色の髪を弄りながらアルティ学院について説明してくれた。
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