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秘密の交流5

閲覧ありがとうございます!



「……アスマリア、それはマズいと思う」


「なぜ?お茶会の前に複数人の方に事前に飲んで頂くのよね?」


「それはそうだけど、その……相手が王族なのは何かあったら私の首が飛んじゃうし、アスマリアもただじゃ済まないよ?」



これは比喩ではない。

確実に直接的かつ迅速に飛ばされることだろう。

徐々に実感が湧くと共に顔から血の気が引いて、僅かに上げた口角が引き攣る感覚がした。



「そうなの?では誰に頼んだら良いかしら…わたくし知り合いは家族くらいしかいないし、侍女も近衛もローレンス以外ほとんど話したことがないもの」


「アスマリア……」


「姫殿下……」




恐らくローレンスも同じことを思ったのではないだろうか。


ーーーこのお姫様、対人関係ヤバくね?




隣にいるローレンスをチラッと窺うとあちらも同じようにこちらを見ていた。

目が合うと彼は神妙な顔付きで僅かに銀髪を揺らして頷いた。

それを見て私も同じように頷き返した。





「あのね、アスマリア。正式な手続きをして味見もしてないと王族は食べられないんだよ」


「え?でもいつもわたくしは出来立てを頂いているわよ?」


「それはお作りしてすぐに魔法を掛けて冷めないようにしてから味見をしているからだと思われます」


「まぁ!そうだったのね。ではどなたが味見をして下さるのかしら?」




きっと純粋な疑問なんだろう。

こちらを見てくる目に特別な感情はなく、ただふと湧いた好奇心のまま言葉を紡いだのだ。




この国の事情は分からないが、味見というのは所謂毒見のことだ。


毒見は命の危険が伴う。

主人が地位ある立場であればあるほど毒を盛られる危険があるから。

特に王族の子供なんて何も知らないままに毒見役が亡くなっている可能性だってあるのだ。





そう私とローレンスが噛み砕いて説明すれば全てとはいかなくても人が死ぬ可能性があること、自分にソレが盛られるかもしれないことを知ったアスマリアは大きな翠色の瞳を更に見開いて絶句した。


今まで誰からも傅かれ丁寧にお世話をされて来たアスマリア。

そんな蝶よ花よと育てられた彼女からすれば信じられないことなんだろう。



「まさか……そんな。わたくしの食事に毒?それで侍女達が死ぬかもしれない?」


「この国の制度は分からないけど、アスマリアの知らないところでアスマリアの為に頑張っている人がいるんだよ」


「……わたくし、なにも知らなかった」




呆然と呟く箱入りのお姫様は、胸の前でぎゅっと手を組んで目を瞑った。

事実を飲み込んでいるのか、それとも信じられないと逃避しているのか。


なにを考えているのかは分からないけど、今なら彼女の周りの人に対する態度を変えるキッカケになる気がした。


それはローレンスの騎士団や近衛内での待遇改善にも繋がるだろう。




「みんながわたくしのお世話をするのは当たり前だと思ってた。でも、それで死んでしまうかもしれないなんて……」


「全員ではないと思うけど、少なくともローレンスは体張って護衛してくれてると思うよ」


「恐縮です」




おま、否定しろとは言わないけど。ちゃっかりしてるな。


近衛は有事の際に体張って王族を護るのが仕事、というのは間違ってないと思うけど。

言葉なら簡単に言えるけど、実行するとなると途轍もなく重たい職務だな。




思いの外どんよりした空気になってしまったので、そろそろ話題を戻した方がいいかも知れない。






「とにかく、アスマリアはもう少しお世話してくれる人や護ってくれる人に優しくしてもいいと私は思う。あとお茶の件は王妃様に聞いてみれば良いと思うよ」


「お母様に?」


「王妃様主催ならきっと味見のことも考えてくれていると思うし、何より分からないことは知ってそうな人に聞くのが一番だよ」




そう。

何だかんだと愚痴ったり思い悩んだり戸惑ったりして、答えに迷ったら助けを求めれば良いのだ。


大人になれば聞きづらいこともあろうが、今の私たちはみんな10歳前後の子供。

本来なら教えられて然るべき年齢と言える。

そこを踏まえるとローレンスへの待遇は公爵家とはいえ些か過剰な気もするけど。


なにか他にも私の知らない事情があるかもしれない。




「分からないことを聞く?……わたくしは王女なのに頼ってもいいの?」


「王女だからこそ周りを頼って利用していかないとじゃない?」


「そう、ね。……上に立つ者なら、周りを上手に利用しなきゃだものね!」




少し戸惑っていた様子だが、最後は上手く自分なりに解釈出来たのかいつものハキハキとした高い声で言い切った。


今までとは少し違うその様子に私は妹を見るような生暖かい視線を送り、ローレンスは意外そうなそれでいてまだ少し不安そうな顔をして見つめていた。









かくして、お茶の葉は無事にアスマリアを介して王妃様へ届けられ数々の項目をクリアしたのち、王妃様主催のお茶会で披露された。


そのお茶の効能が彼らの想像を上回る超効果を見せたため、王都内には王族が特別なお茶を仕入れていると話題になったそうだ。


特に美容効果が高いということで貴族女性の話題を攫うのにそう時間は掛からなかった。

このお茶会によりアスマリアは幼いながらに特別な伝手を持つ有能な王女として注目を浴び、本人の意識改革もありその認識は更に加速したらしい。



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