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もしかして異世界1


夢見がちな思春期を終え、ぬるま湯の様な受験戦争を勝ち抜きそこそこの会社へ就職し、特に出会いもなく三十路を迎えようとしていたのでそろそろ流行りのマッチングアプリでも…と思った矢先のことだった。



確か通勤中いや、親友と出掛けていた時だったか。

とにかく出先の大きな交差点で事故か何かに巻き込まれて死んでしまったらしい。

何せ死角からの大きな衝撃であったし、なんの身構えもなくボーリングのピンの様に簡単に吹き飛ばされた。

浮遊感の直後、頭に強い痛みを感じたと思ったらすぐに頭の中が真っ暗になった。








次に目が覚めた時に映った景色を見て、自分は死んだのだとなんとなく思った。





「この子、随分と変わった魔力をしているのね」



派手な緋色の髪を顔の横に垂らしながら魔女っぽい装いの美女が魔女っぽいセリフを言いながら私の視界が一杯になる距離で覗き込んでいたからだ。


もしこれが事故か何かで昏睡している自分の妄想ならばきっと今まで見てきたアニメや漫画、小説の内容が入り混じっているのだなと納得するくらいには女性の格好はザ・魔女であった。


黒いとんがり帽子に黒いローブ、その中から覗く大きな果実とそれを覆う黒い服。

朝焼けの様な鮮やかな緋色が全身を覆う黒によく映えている。

と呑気に観察していたものの、女性の発言でふと思った。


魔力?そんなファンタジーな。

それに覗き込まれているからか女性が随分と大きく見える。もしかしてとても長身な人なのか?

すると頭上から男性の声がして、女性が私から視線を離し一度体を起こして返事をした。




「良ければ買いませんか?銀貨2枚でどうです?」


それを聞いて彼女は優雅な動作で顎に手を当てた。


「…ちょっと考えさせてくれる?」




そう言って再度金色の瞳が私を覗き込んだ。

ん?なんかおかしい。買う?この声の人が父親じゃないってこと?

それにやはり全てが大きく見えるのは気のせいか?




「聞きたいんだけど、この子を一体どこで手に入れたの?」


「あぁ、そいつはこの間のフレアバーストで吹っ飛んだ街の廃墟で拾ったんです」


「フレアバースト?まさか、こんな小さな子が生き延びたって言うの?」


「大方親が護りの魔法でも掛けていたんでしょう。その代わりこの赤ん坊以外は木っ端微塵でしたがね」


「…護りの魔法、ね」




赤ん坊…え、嘘だ。

まさかまさか。でもさっきから声が全然出ないし体も殆ど動かせない。




「良いわ。買いましょう」


「まいど!いやぁ、赤ん坊なんて面倒見たこともないですからね。世話に困ってたんで助かりましたよ。」


「そうでしょうね。でも人を扱うのはもうやめた方が良いわ」


「俺もまさかあんな廃墟に赤ん坊がいるとは思わなかったんですよ。でも見つけてそのまんまってワケにもいかねぇと思ってね」


「まぁ、今回はそのおかげで私も良い買い物が出来たからよしとしましょうか」




女性は赤い髪を靡かせながら男性にお金らしきものを払うと、籠から私を持ち上げて笑った。



「貴女の名前はレヴェリアよ。これからよろしくね」



まるで私が聞いているのが分かっているかの様に目を細めてそう言った。


現代で死んだと思った次の瞬間、気づいたら新たな生を生きていたらしい。




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