最悪の初対面3
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アスマリアがお茶を飲んでからしばらくは他愛無い会話をしていた。
夜中なのもあってあまり長居するつもりはなかったのだが、いかんせん壁の目が怖すぎていつ帰ると言って良いやら。
逆に早よ帰れと思われているかも。
むしろそうだと思いたい。私ももう少ししたら帰りたいしね。
「レヴィは森に住んでいるのね」
「うん。西にあるファルファーラの森ってところ」
「西の森は聞いたことがあるわ!確かダンジョンや魔物が多いとお兄様が言ってたかしら」
ファルファーラの森と言った瞬間、少年が驚いた感じがした。
壁までは距離があるし視線だって向けていないはずなのに何故だろう?
そう疑問に思っていると、
『感知魔法の一種よ。転移魔法を使い始めてから少しずつ馴染んできたワね』
女神様が囁く様に呟いたのが分かった。
以降は彼女が何か言ってくることはなく、アスマリアとの会話は別の話へ移って行った。
「そういえばレヴィは帝国の噂を知っている?」
「噂?」
「帝国の皇子が聖女を探しているというものよ」
またあの噂か。
こんなところまで轟くなんて王族って本当プライベート皆無なんだね。
師匠も言ってたけど聖女って結構珍しいんじゃなかったっけ?
そんなホイホイ見つかるものなのかな?
「カリギュラに行った時に聞いたことあるよ。ちょうど聖女を探しに来てるって市場の人が言ってた」
「やっぱり…」
なんだか不安そうな顔で話すアスマリアに疑問符が浮かんだ。
「どうしたの?」
「ガレリア帝国のグレイシャ皇子はわたくしの婚約者候補筆頭なのよ。顔合わせももう済んでいてそのつもりで花嫁修行もしているの」
政略結婚なのか気の毒だなと思ったのも束の間、それは違うらしいと考えを改めた。
何故ならアスマリアが頬を赤く染めて皇子の話をしていたからだ。
あー、もう惚れちゃったやつですか。
それとも婚約者ワードに浮かれちゃったとか?
少なくともアスマリアにとって皇子との婚約はネガティブなものではないらしい。
あちらにとってはどうだか分からないが。
手に持っているティーカップに目を落として考える。
皇子は聖女を探しているというが、きっとその理由によって事情が変わるんだろうな。
ファンタジー小説じゃ大抵結婚ありきだし。
もし聖女の持つ治癒魔法を目当てにしているとしても、国として囲うことは必要になる。
そうなると結婚するなら高位貴族か王族じゃないと釣り合わないだろう。
もし皇子が選ばれたら…
目の前のアスマリアに目をやった。
きっと彼女は帝国にとって不要な存在となるだろう。
アスマリアに特別な才能でもない限りは。
ローレンスへ言い放ったことへの因果応報の様だ。
普段からあんなことを言うのが当たり前なら、というかさっきの彼の反応を見るにそんな感じがするが。
とにかくアレが通常運転ならきっと庇ってくれる存在は少ないんじゃないかと思う。
根は悪い子じゃなさそうだが、今までの環境なのか地位なのかやけに人を見下している所が節々に目立つ。
本人に自覚がなさそうなので自力で改善は無理そうだなぁ。
かと言って、
チラリと壁を見るとローレンスは興味なさげな顔で斜め上を見上げていた。
もはや監視する気もないらしい。
でも無意識に使っているっぽい感知魔法もどきで視線は感じるからきっと気を抜いているわけではないのだろう。
ローレンスがアスマリアのフォローをしそうな感じは全く感じない。
むしろ積極的に陥れそうな気配さえ感じるんだが。
お兄さんがいるらしいから家族仲が悪くないことを祈るしかなさそうだな。
さて、そろそろお暇しないといけないな。
「アスマリア、私そろそろ帰らないと」
「あら、もうそんな時間?次はいつ会えるかしら!」
「そうだなぁ…新月の日は比較的予定が少ないかな」
新月は魔力が弱まるものが多いから採取には不向きになる。
今までの傾向なら新月は確実にお休みになるだろう。
「分かったわ!では次の新月の夜8時にまた会いましょう!」
「うん。ティーセットとか用意してくれてありがとう。…ローレンスも、遅くまでありがとう」
「……」
一応声を掛けたけど案の定無視された。
まぁ私も社交辞令で言っただけだから良いけど。
座標を指定してあるから昨日と同様に自動で飛ばしてもらうのを待つだけだ。
次回から楽したいからここの座標も登録させてもらった。
無事五体満足で自室の椅子に腰掛けると一気に疲労感が出て来た。
ぐったりと背もたれにもたれ掛かると大きく深呼吸をした。
そしてあれ?と疑問に思った。
今思ったけど、私がこんなに容易に侵入出来ちゃうのマズいんじゃ?
本当に今更ながらあの宮殿のセキュリティ体制が心配になるのだった。
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