最悪の初対面2
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そうして冷や汗を垂らしながら明後日の方向を見て固まっている姿に首を傾げたアスマリアは、私の背後に控えている従者を見て甲高く声を上げた。
「こら!ローレンス!やめなさいと言っているでしょう!」
その言葉に次いでカチャンと剣を納める音が聞こえた。
やっと少しだけだが安堵出来たので懐に入れた手を出してテーブルの上に置いた。
「あら?これは何かしら?」
「これはカリギュラの市場で買った茶葉に魔法薬を染み込ませて加工した美容茶だよ」
お、もうタメ口大丈夫そう?
背後からの刺々しいナニカは今感じない。
「まぁ!美容に良いお茶ですの?飲んでみたいですわ!」
「姫殿下」
咎める様な声色でアスマリアを呼んだ少年は、カツカツとわざとらしく足音を立てて私の横までやって来た。
「得体の知れない者が持って来たものを安易に口に入れてはなりません」
「レヴィはわたくしのお友達と言っているでしょう」
「これ以上は王子殿下と陛下にご報告させていただくことになります」
「ローレンス、貴方わたくしに口答えしますの?近衛隊から外される覚悟があるということね?」
「それは……」
アスマリアへの返答に口籠ると苦虫を噛み潰したような顔で私達の間のテーブルの先にある壁沿いへ下がって行った。
あの様子を見るに相当言われたくない内容だったんだろうな。
彼の顔が見えていないのかアスマリアは上機嫌に言い放った。
「ローレンスは公爵家の三男なのよ。辺境の跡継ぎを欲している貴族へ養子に出される所をわたくしが拾ったの。本来なら特別な才がなければ三男なんて公爵家には不要だもの」
ね?わたくしって優しいでしょう?
そう言いたげな得意顔のアスマリアに言ってあげたい。
横、すんごい顔でこっち睨み付けてますけど??
このまま刺されるんじゃないの?大丈夫?
今だったらローレンスが刺したとしても私のせいに出来るだろうし、ホント、言葉には気を付けた方がいいよ?
と、心の中で注意したところで昨日のアスマリアの言葉を考えてみた。
もし私が訪問している最中に衛兵などが来てしまったら?
そう話すと彼女は考えがあると言って今日を迎えた。
そしてアスマリアの護衛として部屋にいるローレンス。
ローレンスは公爵家に居場所がなくアスマリアのお陰で近衛兵として中央に残っているという。
つまりローレンスなら容易に口止めが出来る、ということなのだろう。
きっとそれはローレンス自身も分かっているはずだ。
だってこの場に呼ばれてタイミング良く私がやって来たのだから。
「早速こちらの茶葉で淹れたお茶を飲んでみたいわ!」
「このティーセットを借りてもいいなら」
「えぇ!使って頂戴」
もう何も言わないところを見ると、きっと心の中で毒でも混入されてしまえとでも思っているのかも知れないな。
ただまだ私が斬り伏せられる可能性は多分に残されているので、ポットを持つ手が心なしか震える。
「わたくしまだお母様のお茶会しか出たことがなかったの。だからお友達とお茶ができるなんて嬉しいわ!」
「私も同い年の子とお茶なんてしたことないな」
「あら、そうなの?ならわたくし達初めて同士ね!」
会話だけ聞いてる分にはすごく微笑ましく感じるかも知れない。
でも横には鬼の様な形相で睨んでくる従者がいて、目の前には失言議員も真っ青の鈍感お姫様。
ぜんっぜん微笑ましくないわ、これ。
もう隠すのも面倒になってはぁ、と溜め息を吐き出してしまった。
慣れた手つきでお茶を淹れて湯気の立つティーカップをアスマリアに差し出した。
自分の分も淹れ、まず先に私が飲むと伝えた。
熱いものを飲むのは火傷が怖いけど今はそんなことは言ってられない。
壁際の彼は毒味をする気がさらさらない様子で微動だにしていないので、自分で飲めということらしい。
カップにふーふーと息を吹きかけて何口か含んで飲み込む。
うん、ちゃんと茶葉の味。
魔法薬の味はしないし、ちゃんと馴染んでて良かった。
満足度の高い出来にちょっとだけ頷いてしまった。
私の様子を見てからアスマリアもカップに口をつけた。
さすがお姫様と言いたくなるような優雅な作法だ。
そういえば師匠も動きだけは優雅だったな、なんて関係ないことを考えて現実逃避しているとアスマリアが感嘆の声を上げた。
「まぁ美味しい!王宮の茶葉とはまた違った風味だわ」
「口に合ったなら良かった」
「でも普通のお茶の様ね。どんな美容効果があるの?」
「主に保湿かな。飲んでから数時間は肌が潤うのが主な作用で、血流を促進して老廃物とかの要らないものを流すからもっちり感が持続しやすいよ」
「よく分からないけどお母様が喜びそうだわ!」
きゃっきゃしているアスマリアにとりあえず体に良いことは伝わったみたいだとちょっと安心した。
いつも師匠達といるからその感じで話しちゃったけど、詳しくない人にとっては専門的な言葉が多かったかもな。
説明する時は気をつけないと。
私は先ほどまでの緊張を忘れ、最初に出してくれたティーセットのプレートに乗せられていた小さなマフィンを食べながらそんなことを考えていた。
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