電撃訪問2
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すでに師匠が出て行ったパピヨン内の自室でご機嫌そうな女神様の声が頭の中に響いた。
『さぁ、まずは簡単な魔法からやってみるワよ!』
ーホントにやるの?
『当たり前だワ。私達以外誰もいない環境なんてそうはないでしょ?』
ーそりゃあそうだけど。
『早くしないと夜が明けちゃうワ!』
ーまだ日が暮れてもないけどね!!
はぁ、と溜め息を吐きながら部屋の柱時計を確認するが16時前とまだ日が暮れるには少し早い。
でもここで言うことを聞いておかないとあとで色々と煩そうだ。
仕方なくどうしたら良いのか聞いてみる。
『ペンダントのサポートがあれば簡単な魔法くらいは使えるワ。まずは空間転移魔法からいきましょうか』
ーいやいやいや!空間転移魔法って特殊魔法の一つだから!師匠ですら座標無しに飛ぶの厳しいから!!
それを簡単ってどういうこと?
無理じゃない?やめよう?と仄めかしてみたものの、もうやる気でいる女神様を止める決め手にはならなかった。
『まずは足元に向けて手を伸ばして、魔力を放出するイメージをするワよ』
ー…了解。
何を言ってもダメそうなので言われた通りに手を足元へ向け、いつも魔法を使う時の様に魔力の流れを下へ向けるようイメージする。
毎回目を閉じた方がやりやすいのでそうしているが、戦闘中とかだったらそんな事をしている暇はないだろうなぁ。
『今回はデモンストレーションだから、どんな姿勢でも大丈夫よ。慣れれば手を向けなくても出来るようになるワ』
ーそういうものかな?
『床を歩く時にいちいち地面の状態なんて確認しないでしょう?それと同じだワ』
しばらくそうして手の平から魔力を流し続けていると、足元がほんのり温かくなってきた。
あれ?そういえばどこに移動するのか決めてないけど。
ー因みに女神様、魔法でどこに移動するの?
『あー、そうね、じゃあ…森の外とか?』
ー決めてなかったんかい!!
凄く適当な答えを返された。
とりあえずパピヨンの外をイメージしてみるか。
本格的に魔力の巡りとリングの発現がハッキリする頃、女神様がついでとばかりに呟いた。
『まだまだ本調子じゃないし、もし失敗しても20時には帰って来られるようにここの座標を時間指定しておくワ』
ーえ。
一際強い光を放ち、空間転移魔法を発動する為の魔力リングが私を中心に広がった。
なんかあの女神、後出しでとんでもないこと言わなかったか?
目を強く瞑り光が収まるまで身を固くして衝撃に備えた。
特に体へこれといった刺激はなく、
瞼の裏の光が収まった頃、ゆっくりと目を開けるとそこはパピヨン内の自分の部屋ではなかった。
ただし私がイメージしていたはずのパピヨンの外、ファルファーラの森でもない。
ここは…
「だ、誰ですの!?ここが何処だか分かっていて!!?」
誰かの…いや、見るからにお姫様だとかそういう高い身分の少女の部屋だった。
パピヨンの自室の数倍はあろう広い部屋に高い天井とシャンデリア、天蓋付きのベッドにはふりふりしたシーツが掛かっている。
窓も三つの頭が揃うと象並みに大きいポチが出入り出来そうなくらい大きく、テラスも付いている。
目の前の金髪の少女は白いネグリジェの上につるりとしたピンクのショールを羽織って翠色の目を大きく見開いていた。
なんでこうなった…。
「ごめんなさい、魔法の練習をしていたら間違えて来てしまったみたいで…」
キーキー言っているお姫様(仮)を宥めるようにゆっくり話しかけた。
私は怪しい者ではありません、と言いたかったがそれを言ったら余計に騒がれそうな気がしたので止めてみた。
「ま、魔法?まさか…いえ、そんなはずは」
「?、どうかされましたか?」
「あ、貴女はもしかして、わたくしが女神様にお願いした″お友達″…?」
「え?」
間抜けな返事をした私を気にする事なく、少女は自分から興奮した様に喋り始めた。
今日は少女の誕生日で先程まで大広間でパーティーをしていたそうだ。
そこで様々なプレゼントを献上されたが彼女が本当に欲しかったのは対等に話せるお友達だったそうだ。
大広間から部屋へ戻って湯浴みと着替えを済ませ、一人になりたいと侍女を下がらせたところへ突然魔力リングと共に私が現れたという。
「女神様がわたくしの願いを聞き届けて貴女を遣わせたのね!」
「いや、多分違うと思う…」
「ではなぜわたくしの部屋に…?まさか、侵入者ですの!?」
「お友達です!!!」
やっばいここで馬鹿正直に話したら絶対衛兵呼ばれて拘束されるやつだ。
もうこのお姫様?の話に合わせるしかない。
それに、まぁ、女神様が遣わせた…あながち間違ってはいないか。
信仰されている女神様と私の中にいる女神様が同一とは限らないしね。
明らかに冷や汗だらだらで間髪入れずに肯定する私を疑いもせずにお姫様は嬉しそうに頷いた。
「やっぱりそうだったのね!わたくし前からお友達が欲しいと思っていましたの!」
「えっと…因みに、なぜか聞いても?」
「実はお母様のお客様をお招きしたパーティーで兄弟や幼馴染のいる方が多くいらっしゃって。わたくしにも欲しいと思いましたの」
え、そんな皆飼ってるから自分も犬猫飼いたい、みたいな理由で…?
お金持ちってよく分からないな。
とりあえず気安く話せる人が欲しかったってことかな?
「私はどんなお話をすれば良いんですか?」
「あら、わたくし達はお友達なのですから気安い言葉で話すべきですわ!わたくしのことはアスマリアと呼んでくださる?」
「はぁ…わかりま、じゃなかった。分かった。私はレヴェリア。よろしくねアスマリア。」
「えぇ!わたくしもレヴィと呼びますわね!」
よく分からないままにお姫様を呼び捨ててしまった…。
これ処刑されたりしないかな?
雑談をして欲しいとのことだったので、お互いの生い立ちから話すことにした。
アスマリアの話だと私が間違えて転移したこの場所は、大陸北側にある唯一の国で最古にして最高の教育機関であるアルティ学院が存在するアルテナス神興国という国の宮殿だった。
以前リーレットさん達が遊びに来た時話してくれた事がある。
師匠達は元々アルティ学院でそれぞれ勉強や研究をしていて、皆そこからの付き合いだそうだ。
学友ってなんか良い響きだよね。
アルティ学院の入試条件は13歳以上であることと魔力を持っていることの二つだけ。
毎年冬に行われる入試は倍率が最低300倍だそうだ。
現代の受験戦争ですら3桁なんて凄まじい倍率だったのにこちらでは当たり前とは…。
久しぶりの受験の話題になんだか頭が痛くなりそうだった。
私が住んでいるファルファーラの森について話していると、女神様からお声が掛かった。
『レヴィ、そろそろ時間だワ。設定した家の座標へ転移するワよ』
ーもうそんな時間?分かった。
「ごめんねアスマリア。もう時間みたい。家に帰らないと」
「もうですの?また会いたいですわ!明日の夜は来られませんの?」
「明日…夜なら、まぁ」
師匠は三日後まで帰って来ないから転移魔法の練習がてらここに来るのも良いかもしれない。
ただもし護衛の人とかに見つかったらきっとアスマリアが何と言おうが不法侵入で捕まるのが目に見えている。
私が歯切れの悪い返答をしたのが気に障ったらしい。
アスマリアが頬を膨らませながら、
「わたくしと会うのは嫌ですの!?」
と甲高く声を上げた。
「いや、部外者の私が出入りしているのがバレたらどうしようかと思って」
「!そうでしたわね…確かにレヴィは正式なお客様ではないから、衛兵に見つかったらきっと投獄されてしまうわ」
で、ですよねー!!言っておいて良かった。
アスマリアもすっかり頭から抜けていたみたいだし。
「でしたらわたくしに考えがありますわ!明日の夜8時、ちゃんと来るんですのよ!?」
「え、分かった」
なんか凄い自信有り気に念押しされたので思わず頷いてしまった。
そのまま時間がやって来て行きと同じ魔力リングの発現と共にパピヨンへ帰宅した。
数日ぶりのゆったりした入浴中、ふと思った。
あれ、どんな考えか私アスマリアに聞いたっけ?と。
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