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散策4

閲覧ありがとうございます!



あの後、何故か放心状態になったアストライオを覚醒させて市場の大通りまで案内してもらった。


お昼代やお隣さんへの果物代を立て替えると言ってくれたが、あの家の感じを見る限りそんな余裕はなさそうである。

師匠からもらったお金はお使いも含めて粗方使ったが、次いつ街に来るかも分からないので勿体ぶるだけ無駄だと思った。


なので港町デビューだから記念にとか色々こじ付けて何とか承諾させた。




「な、なぁ」


「なに?あ、送ってくれてありがとうね。宿はもうすぐそこだから」


「気にすんな。こちらこそオヤジのことありがとうな。それで、その…」



言いづらそうにもじもじしているアストライオに、最初の勢いはどうしたんだ?と疑問に思いだから先を促す。


買った物が宿に届いてるか確認したいしそろそろ戻りたいんだけどな。



「どうしたの?」


「あー、その…また会えるか?オヤジの体のことも伝えたいし、」


「確かに経過を教えてくれるのは助かるけど、私が住んでるのは森だから会うのは難しいかな…」


「そうか…」



あれ、なんかシュンてしてる。

おやつ食べ終わっちゃったわんこみたいになってる?

アストライオってこんなキャラだったっけ?もっと最初トゲトゲしてたような?


なんだか悪いことをしたような気がして、とりあえず思いつく限りのフォローを入れてみた。



「あー、じゃあ手紙を送るよ!魔法飛脚便だからそんなに頻繁に送れないけど」


「良いのか!?」



さっきと一転、パァッと嬉しそうに深緑の瞳を丸くしてこちらを見るアストライオ。

ほんとわんこみたいな奴だな。

将来有望なカッコ可愛い顔なのにそんな感想しか出ない自分にちょっと悲しくなった。


何だか懐かれたみたいだし、お父さんの容態も確認したいから一応ファルファーラの森の転移魔法陣を教えた。



魔法飛脚便とは、手紙などの郵便物に相手の名前や大まかな住所、魔法陣を模写して貼り付けておくなどすると各国に存在する飛脚局が選別して転移魔法で送ってくれるシステムだ。

鳥型魔物による郵便よりも正確かつ大きな物も運べることを謳っている。


ここだと海洋貿易国家カリギュラの港町でアストライオという名前と身体的特徴を軽く記載すれば、同姓同名同じ容姿の人がいない限りは届くだろう。

この制度には穴が多く魔法で偽造できたり誤配送もあるし、もっと確実かつ簡単に郵送出来ないのかと常々疑問に思う。


重要書類なんかは飛脚便を使わずに転移魔法陣同士で直接飛ばすと師匠は言っていたけど。


転移魔法は拡張魔法と同じく時空間魔法を簡素化したもので、高度だけどちゃんと学べば魔法陣を使用したものは使いこなせるらしい。

ただそんな物を一般の人が使えるわけないので、受け取りには各国にある飛脚局まで赴く必要がある。



因みに届け物が来た時どうやって知らされるかと言うとその国の飛脚局から鳥型魔物が飛ばされて来るという、魔法は?と聞きたくなるアナログな方法だ。

ある意味ファンタジーらしいなとは思う。




ただ魔法飛脚便は一回の利用で手紙なら銀貨一枚必要なので、一般庶民には割高な利用料だ。

なのであまり頻繁なやり取りには向かない。

今回は数ヶ月に一回を想定しているので問題ないとは思うけど。







嬉しそうなアストライオに笑顔で見送られ、私は宿の門を潜った。


宿屋の主人には顔を覚えられているので顔パスで借りている部屋まで行くことができた。

カーペットが敷き詰めてある廊下を歩き扉を開けると、今朝食事をしたテーブルでティーカップを持った師匠が座っていた。




あれ?もうそんな時間?

部屋に備え付けの時計を見るとまだ18時になっていないくらい。

早くてもディナーまで帰って来ないと思っていただけに驚いてしまった。


カップを置いた師匠の顔がやけにニヤついていて、何となく嫌な予感がした。




「見たわよ。いつの間にボーイフレンドを作っていたの?隅に置けない子ね」


「何のことか分かりませんけど。彼はアストライオと言って、父親の具合が悪いそうなので話を聞いていたんです。それでー」

面倒に思いながらも今日あったことを簡単に説明した。



「あら、そうだったの」


つまらなそうに口を尖らせる緋色の美女に呆れた視線を送るも、全く意に介した様子はなくあちらも今日の出来事を喋り出した。





「そうだ!聞いて頂戴。やっぱり宝具は持ってなかったのよ!」



と憤慨している師匠曰く、



商業ギルドで宝具を持っていると話していた男がいて、それをたまたまギルドに来ていたリーレットさんが聞き師匠へ手紙を出した。



師匠が来るまでに交渉の席を用意してもらっていたのだが、相手の男は交渉に来るのが魔法使いアムリネだと知るや否やすぐに断ろうとしてきた。

ただギルド的には有名?な魔女である師匠に少しでも良い顔をしたかったようで、男を逃さぬように囲ってくれていたらしい。


交渉初日、男はのらりくらりと師匠の提示する条件を呑まず代理交渉人に任せっきりで本人は全く話さなかった。




ここで一つ大事なことがある。


師匠は…


あんまり我慢強くない。

というか、待つのが大嫌いだ。


実験や研究では必要な要素だからそういう時は待てるのだが、例えば相手が喋らないと話が進まない時とかいつ終わるか分からない交渉とか。


今回、謝礼は師匠曰く十二分に用意したと言う。

それなのに交渉が全く進まなかった。

あちらの交渉代理人が首を縦に振らなかったのだ。





師匠の導火線がどんどん短くなっていったのは言うまでもない。



男の態度にマズいと思ったのか、それとも世間話のつもりなのか帰る際にギルド職員から例のガレリア帝国の噂を聞いたとか。


昨日の時点で夕方の交渉終了まで話が全く進まずにイラついた師匠はリーレットさんを道連れに近場のダンジョンで派手に暴れてストレス発散していたらしい。


だから昨日帰って来なかったのか…リーレットさん可哀想に。


今日、リーレットさんは徹夜ダンジョンで疲れたからとさっさと国外にある研究室に帰ってしまったそうだ。

残念そうに話す師匠に、そうでしょうね!と思わず深々と頷きそうになるのを必死で堪えた。




師匠の友人の中で最もストッパーの役割を果たしているリーレットさん不在の中、二度目の交渉はスタートした。


案の定、前日と同様にのらりくらりを決め込もうとする相手。

しかしストッパー不在の師匠は手加減をしなかった。



「そちらが話を進めるつもりがないのなら、こちらにも考えがあるのよ」



そう言って取り出したのは昨日私に渡した召喚術式を組み込んだ使い捨て召喚石。

ただし召喚されるのはフェンリルの近縁種ではなく、パピヨンで暇を持て余している純血種のドラゴンだった。



それを聞いて顔を真っ青にして止めに入るギルドの職員を尻目に、師匠は笑顔で言ったという。



「人間ってあんまり美味しくないらしいの。もしウチの子がお腹を壊したら慰謝料を請求しなきゃね」



悪魔かな?

想像するまでもなくイメージ出来る阿鼻叫喚な様子に口元が引き攣った。

ハッタリとは言え食われた挙句に金銭まで要求されるなんて、相手の人がとても不憫に思えた。




結局相手は本当に喚ばれたドラゴンに恐れ慄き宝具のことは嘘であったと即告白した。

あまりの恐怖に泡を吐いて気絶した男をギルド職員が引き摺って行き、嘘の供述をしたペナルティを課して罰金と一定期間の出禁になるという。


木っ端微塵にした商業ギルドの会議室は師匠が修復魔法で杖をひと振りして直したものの、ギルド長からはガッツリ怒られたそうだ。

しかし本人は今の話ぶりを見るに全く懲りていない。



この人を出禁にした方が良いのでは?と考えてしまった私は悪くないと思う。

きっと師匠じゃなかったらギルドもそうしていたに違いない。


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