スペリオドルスの手記
我々は、ついに見つけた。
この800年、人類が歴史の記録を付け始めてからずっと謎に包まれていた氷の壁を傷付ける方法をやっと見つけることが出来たのだ。
しかし僅かに傷ついた程度で砕くまでには至っていない。
砕いた際に出た破片は貴重な研究材料として持ち帰ることとする。
この壁はガラスの様な透明感がありながらかなり分厚いのか奥を見通すことが出来ず、氷の壁とは言うものの触っても冷たさは感じない。
貴重な鑑定魔法を使用した調査も、これが自然の産物ではなく魔法で出来ていることしか分からなかった。
そもそも大陸の北側は中心部とは大きく深い崖で分たれており、この崖もまるで亀裂の様ではあるがなぜ、そしていつ出来たのかも定かではない。
かれこれ30年近く研究を続けているが、調査は一向に進展を見せていない。
そろそろガレリア帝国とアルテナス神興国からの研究資金も底をつくため、今回の遠征が実質最後の調査となるだろう。
今まで数々の国に研究資金の支援を依頼してきたが、彼の国が一番資金を用意してくれ、代わりに最新の研究結果を求めてきたのにはやはりあの件が事実であるからだろうか。
今回氷の壁が破壊可能であるということが分かったのは、文献を読み漁る限りここ500年で最も有益な情報に違いない。
あとはこの破片を持ち帰り一体どの様な性質であるのか研究することに生涯を費やすことになるだろう。
私の研究の続きを後の者たちが引き継ぎ、あの神秘の場所を解明してくれることを切に願うばかりだ。
-スペリオドルスの手記-
第5章 閉ざされた北の大地
氷の壁の調査記録より抜粋
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初投稿。
お試し連載です。