アイドルの休息
「秀くん お願いがあるの。 私の為に…
学校では話しかけないで。」
秀くんは静かに私の言葉を分析している。
「…それは、その女子達の嫌がらせが怖いから?
それとももう構うなって事?」
「…両方だよ。
でも1番の理由は、秀くんに頼らないで
自分の足でしっかり立てる様になりたい。
秀くんみたいに強くなりたい。
そして負けたくない。」
秀くんは笑った。「また 負けたくないの?」
「うん!」
「頼ってれば良いのに(笑)」
「それは私の本意じゃない!…っていうか、
やっぱり頼ってるって思っていたよね?!」
「思ってないケド、その方がかわいいのに(笑)」
「かわ…っ(かわいい)?!
もう!秀くんのおもちゃじゃないんだからね!」
顔を真っ赤にして怒って訴える。
「ごめん ごめん!(笑)
わかった。みおちゃんを応援する。
でも、無理しないで。
知ってる? 頼れるってすごい才能なんだよ?」
「?」
「人1人の能力はたかが知れてる。
誰かと協力して力を合わせられる事、
協力してあげたいって思わせる力がある
みおちゃんは十分、すごいんだよ?」
「…初めて聞いた。
ねぇ、秀くんはいつもどこで
そういう知識を入れてるの?
何か難しい本でも読んでいるの?」
4年生の発想じゃないだろう…
「はっ! もしや4年生というのは仮の姿で、
実はおじさんだったりして!(笑)
リラック○みたいに?!」
「何それ。(笑) 父親の入れ知恵だよ(笑)」
「…お父さん…? アメリカにいる?」
「…うん。そうだよ。」少し寂しそうに笑った。
「お父さんに…会いたいよね?」
「そうだね…」そう言いながら立ち上がると
秀くんが私に抱きついてきた。
「…??? 秀くん? 寂しいの?」
「うん。」
私はいつも秀くんがしてくれるみたいに
頭を撫でてみる。
それから背中をトントンと軽く叩いて
「大丈夫だよ。」と言ってみる。
秀くんの手に力が入って私にしがみつく。
「大丈夫じゃない。
折角みおちゃんに抱きつけていたのに…
寂し過ぎる。
そんな女子の言った事なんて
気にしなきゃいいのに!」
スネた様な口調になった。
「あれ? そっち?
秀くんも結構甘えん坊さんなんだね?」
私はちょっとだけ優位に立てた気持ちになる。
「ねぇ… みおちゃんのお願い、
学校では話しかけないってやつ。聞くからさ、
サッカーの試合、応援に来てよ。」
顔を埋めたまま秀くんがお願いしてくる。
「ごめん 秀くん。 そのお願いはまだ聞けない。」
「えー… まだ羨ましいとか言うの?」
ちらりと視線だけこっちに向けて
秀くんが聞いてくる。
「ううん。秀くんのサッカープレー見てさ、
すごいとかかっこいいとか思っちゃったら
完敗した気分になりそうじゃん。」
リフティング、うまかったもん…
例え今から私が頑張って
出来るようになったとしても、
回数が勝てる気しない。
ずーーーっとやってたから…
「…本当に負けず嫌い。もう、頑固過ぎ!」
ぷいっと視線を外された。
「あーっ! そんな事言うんだったら、
甘えさせてあげない! もう!離れてよ〜!」
ぐいっと秀くんを引き剥がそうとしたが
力が足りない! グイグイ秀くんを押していると
「…ごめんなさい。」弱々しい声が返ってきた。
みんなのアイドルの秀くんは
甘えん坊でブラックなおじさん だったんだな。