表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の大好きな幼馴染  作者: 愉香
50/50

 それから 秀と美織の話

廣澤秀 12歳


私立 S大学附属中学校に通う1年生。


彼は幼馴染で彼女の美織に久しぶりに会えるのを


楽しみにしていた。


家も隣同士だが、ここ数日はお互いに


学校生活が慣れなくて、


タイミングが合わずに会えないでいた。


幼稚園の時から片思いしてきた彼女は


何事にも一生懸命に取り組む頑張り屋さん。


負けず嫌いを出すところはたまにキズだけど、


泣いて笑って嘘がつけない、


純粋で、笑うとこっちまで幸せな気分になる


かわいい彼女。


彼女は隣の市にある私立の女子中学校に通っている。


上品で有名な学校で制服もかわいい。


そんな制服を大好きな彼女が身に纏っていると


思うと心が弾まない訳が無い。


会った瞬間に抱きしめてしまいそう。


人目を気にせずにキスしたら


さすがに怒られちゃうかな?


そんな事を考えながら彼女が帰ってくるのを


最寄り駅の改札で待っていた。



榊美織 12歳


私立KM女子中学に通う1年生。


彼女はこれから久しぶりに会う彼に緊張していた。


彼は器用にスポーツも勉強も何でも出来てしまう。


華があって愛嬌があって、男女共に人気がある。


たまに嫉妬深い所は困るけど、


私の気持ちを大事にしてくれる優しい人。


だけどー


美織は最近になり、


自分の体の成長に戸惑いを感じていた。


最近…胸が膨らんできた。


お尻も肉付きが良くなってきた気がする。


生理も始まった。


やっぱり…気づいてるよね?


彼の目が気になっていた。


その… そういう目で見てるのかな…


男の子…だし…


それに、最近秀くんも背が伸びて


手も大きい。


男の人になり始めてる気がする。


嫌いじゃない、怖くもない。


ただ、戸惑っている。


複雑な気持ちを抱えながら、美織は地元の駅で


電車から降りた。


階段を降り始めると、改札の向こう側から


大好きな彼が手を振ってくれる。


彼の笑顔に少し安心して美織も駆け寄る。


改札を抜けた瞬間に


「お帰りなさい!」と言って抱きしめられた。


…っ! きゃああああ!!!!!


美織は心の中で叫んだ。


今までと変わらないハグな筈なのに意識しすぎて


顔が赤くなる。


「秀くん!駅だから!!」


そう言って早々に秀から離れた。


「あ、嫌だったよね、ゴメンね?」


秀は予想通りの彼女の反応に苦笑しながら


手を繋ごうとする。


秀の温かな体温と大きな手に驚いた美織は


思わず手を引っ込めた。


「えっ?」


秀はその反応に驚く。


「どうかした?」


「う…ううん。何でもないんだけど…その…


帰ろうか…。」


そう言って手を繋がずに2人で並んで歩く。


そこからはお互いの学校の話で盛り上がって、


秀と美織の間に一瞬出来た微妙な空気は


解消されていった。


お互いの家に着き


「じゃあね!」と言って


笑顔で離れる美織の手首を、秀は掴んで引き留めた。


秀が美織にキスをしようと顔を近づけた瞬間


「…っ きゃー!!!!! ///」


美織が声をあげた。


秀は驚いて動きを止める。


美織は走って自分の家へ入った。


「みおちゃん?!」


秀は訳がわからずに取り敢えず美織を追いかける。


美織はそのまま階段を駆け上がって自室に籠もって


しまった。


秀は美織の家の玄関で呆然とする。


玄関の騒がしさに気がついた美織の母、奏と


隣の家から遊びに来ていた秀の母、千景が顔を出す。


奏は取り敢えず秀をリビングに招き入れて


紅茶を差し出す。


それから「秀くん、ゴメンね~」と言って


奏が美織の態度を詫びた。


奏は美織の戸惑いを事前に聞かされていたので、


娘の代わりに秀に説明した。


話を聞いた千景がコラ!と秀を軽く叱る。


「美織ちゃんの気持ちを確かめなかったでしょう!


気持ちを無視したら美織ちゃんの気持ちが


離れちゃうわよ!」と言った。


秀はとってもショックを受けていた。


やっと手に入れた大好きな幼馴染。


確かに最近はあまり気持ちを確認しないで


気軽に抱きついたりキスしたりしていたかも…。


それは秀にとっては挨拶の様な愛情表情で、


小学校から続く自然な事だった。


確認なんて今更面倒… とも思うが、


「怖がらせたら嫌われちゃうわよ!


1回でもそんな思いをさせたら


そのまま離れちゃうかもね!」


容赦無い千景の追撃発言は


秀の心に沢山の矢を刺した。


「まぁ、秀くんなら大丈夫だと思うけど…。」


奏が秀をフォローする。


「一応女の子だからさ。異性はドキドキするものよ。


応援してるから まぁ、頑張ってよ。」


奏が秀の肩を叩いて励ました。



秀は美織の部屋のドアを叩く


「みおちゃん…」


返事がない。


「開けるよ?」


返事がないので恐る恐るドアを開く。


美織はベッドで寝ていた。


すやすやと制服のまま


布団も掛けずに仰向け。


秀は小さく溜息をついてベッド脇に座り込んだ。


オレの大好きな幼馴染。


寝顔は小さい頃のままなのに


体…  


///


規則正しく上下する胸の膨らみに気がついて


目線を逸らす。


秀はそれ以上先を考えない様にした。


コホン 咳払いをする。


気軽に触れ過ぎてたかな?


幼稚園の時を取り戻すかの様に抱きついてたからな…


ふと柔らかそうな頬と唇に触れたい衝動にかられる。


コレを耐えるのか…


深い深い溜息を吐いた。


自信ねぇ…


でも… 嫌われたくないしな…


秀の葛藤は続く…


「う…んー…」


美織が目を覚ました。


寝起き眼で秀を見つけると勢いよく飛び起きる。


「…っ、きゃー!!!!!」


本日2回目(3回目) …


布団を手繰り寄せて 胸と膝を隠す。


「秀くん!! /// 入って来ないでよ〜!!」


美織の慌てぶりに秀は傷付きまくる。


何か、気持ちをわかってあげたいけど悲しくなる…


「みおちゃんの複雑な気持ちは奏さんから聞いた。」


秀が話すと美織は動きが止まった。


「わかったら、そんなに嫌がらないで…。


さすがに傷付く。 続くと…キツイ…」


秀が俯く。


「ごめんなさい…」


美織が小さく謝る。 


「うん。オレも気をつけるから…」


自信ないけど… と秀は心の中で続きを呟いた。


「嫌な事は嫌ってはっきり言って。


理由もわからずに嫌われる方が辛い…


ちゃんとみおちゃんの気持ちを守る様にするから。」


秀は美織とのこれまでの事を思い出していた。


嫌われていた幼稚園時代。


小学校に入学してからは少しずつ心を開いてくれて、


5年生でやっと振り向いてくれた。


それからも色々あったけど…


オレの心は幼稚園の時からずっとみおちゃんが


中心。


こんなに縛られるなんて思ってなかったんだけど…


可愛くて、危なっかしくて、一生懸命で


愛しい…


彼女は負けず嫌いでオレに勝ちたがるけど、


オレは彼女に勝てたことがない。


いつだって負けっ放し…


だから…今回も待つよ。


みおちゃんの気持ちが育つまで



「秀くん… 嫌いじゃないんだよ…?


だけど…そのっ、何か…ドキドキするの…」


涙目で一生懸命に伝えてくる。


かわいい 触りたい 嫌われたくない



オレ…待てるかな…?




オレは大好きな幼馴染に


この先一生、振り回されるんだな…


机に飾られたツヨスギマンの消しゴムを見ながら


秀はため息をついた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れ様でした! ドキドキハラハラ微笑ましく、最後まで読ませていただきました。 最終話は、成長して少し大人になった2人の姿。この後どうなっていくのだろう? いろんなすれ違いやライバルやら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ